13-7「4文字の暗号」
スペードがオークを切り裂いた直後、洞窟内にドシン! という音とともにオークが倒れた。
「お兄ちゃん! 」
ダイヤがすぐさま俺が抱えているトパーズさんに駆け寄る。俺もオークに気を取られていたのでトパーズさんの状態を確認し血まみれの彼に手遅れかとギョッとするも、先ほどまでのコウモリとの戦闘で血を浴びただけで幸運なことにオークのアッパーが直撃したであろう鎧は砕けているものの身体から血は流れていなかった。しかし安心は禁物でこうなると心配なのは脳震とうといった内部への以上だ。
「『ヒール』! 」
ダイヤが『回復の魔法』を唱えるとともにトパーズさんが緑色の光に包まれる。間に合ってくれ、心の中で祈る。誰しもがそうしたであろう、俺達は一言も交わさずにトパーズさんが目を覚ますことを信じて彼を固唾を飲んで見つめていた。
「う、う~ん……ここは? 」
数分経っただろうか、俺達には何時間にも感じられる数分だったがふとトパーズさんが目を開き何が起きたのか分からないというように辺りをキョロキョロと見回す。その様子を見守っていたダイヤの目に涙が溢れた。
「良かった、お兄ちゃん」
そう言うとともに彼女はトパーズさんの上半身に抱き着いた。トパーズさんが彼女の金色の髪を優しくなでる。
「心配させてすまなかった」
「でも奇跡だよな、正直オレもヒヤヒヤしたぜ」
するとトパーズさんがどういうわけかギョッと目を見開いたかと思うと無言になり沈黙が訪れた。
「悪い、不謹慎だったか」
「いや、どうしてそうなったのかを考えてた、恐らくこの鎧が守ってくれたんだろう」
トパーズさんはスペードをみてにっこりと笑う。
「あの雷を纏った剣を振るおうとした時、何かあったのですか? 」
気になっていたことを尋ねるとトパーズさんは俺に視線を向ける。
「恥ずかしい話、あの吸血鬼達にやられた古傷が痛んだんだ。格好つけようとして出しゃばったのに申し訳ない」
「いえ、そんなことはありませんよ。あの剣を見た時は目を疑いましたし」
「だよなあ、あそこまで魔法を纏わせて剣を強化できるなんて知らなかったぜ」とスペード、クローバーも頷いて同意を示した。
「ありがとう、そう言ってもらえると救われる」
トパーズさんはニッコリと微笑んだ。
♥♢♤♧
数十分後、トパーズさんはすっかり回復したようですっと立ち上がった。
「待たせてしまって申し訳ない、おかげでこの通り、動けるようになったよ」
「良かった、お兄ちゃん」
「それじゃあ、トパーズさんが元気になったことだし先を目指そう」
そう言って再びクローバーを先頭に歩き出す。すると彼女がふと立ち止まった。
「どうしたの? 」
「あそこ、どうやら伝説の剣の存在を諦めるのは早いかもしれない」
クローバーが指を指した方向を目を凝らして見つめる。そこにはここの洞窟の鼠色のような色ではなく茶色の岩の塊が転がっていた。
「あれは、もしかして」
「ゴーレムですか? 」
ダイヤが半信半疑な様子で口にするとクローバーが頷いた。
「もし、魔王とかの手下が倒したんだとしたらこれまでを考えると神話のモンスターを配置するよなあ」
「そうだね、ということは……伝説の剣の噂は本当だったということになる」
「でも、剣があるかどうかは分からないね。ひょっとするとこのゴーレムを倒した人が持って帰ったのかもしれない」
トパーズさんが顔色を変えずに口にする。すると途端にスペードが走り出した。
「なら急ごうぜ! 」
「スペード、気持ちは分かるけれど罠があるかもしれないから走るのは危険だ」
「……一応、この広場だけならオークが暮らしていたことを考えると罠がある可能性は低いけど、取り返しのつかない事態になる前に追いかけよう」
クローバーの言葉を合図に俺達はスペードを追って走り出した。
♥♢♤♧
間一髪、オークやゴーレムが入れないであろう人1人が入れるくらいの通路の寸前でスペードを止めた俺達はそこから通路を数十メートルほど進むと今度は6畳ほどの広い場所に出る。右側には何十枚といったタイルが積んである穴が存在しその中心には大きな門がありその門には四角い4つの窪みが存在した。
「みるからにここにありそうだね」
「はい、ですがあの窪みは何でしょうか」
「……みんな待って」
クローバーが声を張り上げる。思わず彼女を見ると彼女は突然大声を出したことを申し訳なさそうにしながら説明を続ける。
「……ごめん、ただここの地面、開く仕掛けになっている」
「マジかよ、あぶねえところだったぜ」
スペードが思わず1歩下がるのと同時にクローバーは手頃な石を拾うと地面目掛けて投げた。カーンという音を立てて石が地面に落ちる。しかし、それ以外には何も起こらなかった。
「……どういうこと、重さが足りない? 」
顎に手を当てて考えるクローバーだが彼女の見立てが間違っているとは思えない。それなので恐らく考えられる可能性は今彼女が口にした重さだろう。それならば……
「ダイヤ、その縄を貸してほしい」
「縄ですか、どうぞ……ってトーハさんまさか」
「そのまさかだよ」
ダイヤから受け取った縄を身体に固く結びつける。重さが基準ならこうして俺が
「……気を付けて」
「任せろ、絶対に落とさねえからな」
皆が縄を持つ、これであとはなにかあったら引っ張ってもらえばいいのだ。深呼吸をした後に1歩広場に足を踏み入れる。
……しかし、何も起こらなかった。恐る恐る2歩目を踏み出す……何も起きない。3歩、4歩目と次々と踏み出す。
「いて! 」
やがてガン! という音とともに俺は何かにぶつかった。見るといつの間にか俺は大きな門の前に立っていたのだ。
「何もないのか」
「待った、このタイル、文字が書いてある」
右方向にあるタイルを手に取り確認するとそこには「ア」という文字が書いてあった。辺りを見回すと濁点半濁点が付いたタイルも存在していてどうやら「ア」から「ン」までのタイルが各2まいずつ存在した。
「文字が書いてあるタイルですか、それでしたら何かそれを使って回答するのでしょうか」
「そうか、そうなると」
ダイヤの言葉をヒントに門に開いた4つの窪みを見るとそこには俺達の世界で言う太鼓であるドンドコの絵が三つ1つ目の窪みに存在した。その横を見ると2つ目には剣の絵が2つ、3つ目にはチョコ、俺達の世界のビスケットの絵が1つ、4つ目の窪みにはにんじん、こちらの世界で言うキャロの絵が1つ存在した。そしてどういうわけか刃物で掘ったのであろう真新しく「7」という数字が刻まれている。
その状況をそのまま後方の4人に伝える。
「そうなると、どうやらそこに正解のタイルを入れたら扉が開き不正解なら地面が開く仕組みのようだね」
トパーズさんが感心したように言う。
「それなら楽勝だな、安心しろトオハ、間違えたら即引っ張るから気楽に考えようぜ」
スペードが言う。俺は首を縦に振ると問題をじっくりと考えるべく再び絵に向き直った。
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