12‐11「ドラゴンとの激闘」

 翌朝、うっすらと太陽が照らす中俺達は洞窟の入り口に立つ。ここがドラゴンの住処だ。元々洞窟だったのをドラゴンが上から破壊して住処としたため上はスタジアムのように開け放たれているということだったが、それが間違いではないことは上空にぼんやりと見える岩の砕かれた後のようなもので見て取れる。幸い、人が通れる入り口のようなものはあるということから俺達はここから進入することになった。


「いよいよだ」


「腕が鳴るぜ」


 スペードがパン! と右手で拳を作ると左掌にぶつけ音を立てる。


「……ダイヤ、緊張しすぎは良くない」


「はい」


 クローバーは緊張した様子のダイヤに声をかけていた。クローバーの言うように相手がドラゴンだからかダイヤはいつもよりも力を込めて杖を握っていて明らかに緊張しすぎている様子だ。これはまずいと彼女の肩に手を置く。


「クローバーの言う通りだ。大丈夫、皆で考えた作戦なんだから上手くいく」


 歩きながら考え事をすると名案が浮かぶというのにもあやかりながら、ここに来るまでの間に俺達は対ドラゴンの戦略を話し合っていた。


「そうですね」


 彼女が元気を取り戻した様子で頷く。それを確認すると俺達は洞窟の中に入っていった。


 洞窟を岩肌に沿ってあわよくば眠っている所を討ち取れたらと音を立てずに進むこと数十分。朝日が差し込んでいる広間に出る。先程はスタジアムに例えたけれど日の光のない洞窟内から太陽が差し込む空を見上げるというこの状況だとここは屋久島のウィルソン株のように神秘的な場所に感じる。

 その場所の中央部に今まで見たどのモンスターよりも巨大なドラゴンが陣取っている。


 グオオオオオオオオオオとけたたましい音を立てて威嚇しているように思われたけれど目を閉じている所を見るとどうやら眠っているようだった。


「よし! このまま総攻撃しちまえば勝ちだ」


「流石に拍子抜けだぞ」


 スペードがため息をつく。


「ですが、被害が出ずに倒せるのなら倒しておくに越したことはありませんよ」


「……安全が第一」


「まあ、それもそうか」


 スペードも納得したようなので未だ熟睡しているドラゴンを見ながら剣を抜く。ドラゴン、寝込みを襲われて敗れる! 確かにスペードの言うようにパッとしないけれど命懸けの今そうはいっていられないのだ。

 覚悟を決め喉元に剣を突き刺そうと一歩踏み出したその時だった。結界が張ってあった、とでもいうようにドラゴンの眼がパッと開かれ巨大な眼でギロリと睨みつけられる。

 もはや襲うのは不可能だ。

 そう判断した俺は力を込めて地面を蹴り後ろへ下がる。するとその判断は正解だったようで次の瞬間にはドラゴンは口を開き炎を発射した。


「『シルド』! 」


 黄色のオーブを杖に着けたダイヤが『盾の魔法』を展開すると炎の球体は俺達を包み込もうと直撃した瞬間広がるもそれも空しくはじけ散った。


「今だ! 」


「はい!


 俺の言葉を合図にクローバーが矢を構えダイヤが『盾の魔法』を解除する。


「……貰った」


 クローバーがそう言うと同時に矢を放つ。放たれた矢は風を切って進み一瞬のうちにドラゴンの右目に突き刺さる。


 ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 ドラゴンの悲痛な叫び声が響き渡る。これで右目は封じた。それと同時に片目だけで見ると対象の位置を正確にとらえることができないという現象が人間だけでなくドラゴンにも当てはまるとしたらこのアドバンテージはかなりのものだ。


 グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 ドラゴンが叫びながら再び炎の球体を放つ。


「『シルド』! 」


 再びダイヤが呪文を唱える。俺の推測は当たっていたようでその攻撃は俺達の頭上を越え俺達が入ってきた入り口と呼ぶべき場所に命中した。


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 ドラゴンも自らの身体の異変に気が付いたのであろう。雄たけびを上げるとともにバサバサと両翼を広げ上空へ飛び立ち逃げようとする。


「させるかよ、『エンハンス』! 」


「ダイヤ! 」


「はい、『エンハンス』! 」


 俺とスペードは追いかけるべく『強化の魔法』で身体を強化する。赤いオーラを纏いながら俺達は左右から洞窟内の凹凸を利用して壁を駆けあがる。そしてドラゴンの高さまで追いつくとスペードが剣と刀を抜き壁を蹴り上げドラゴン目掛けて突進する。


「喰らえ、『秘剣迅雷斬』! 」


 スペードは二本の武器を駆使してドラゴンの片方の翼を切り刻む。


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 片翼を失ったドラゴンは空しく先ほどまでいた洞窟を目指して落下していく。


「見たか、これが剣と刀で完成させた『秘剣迅雷斬』だ。よし、後は頼んだぞトオハ! 」


 一足先に地に着いたスペードが叫ぶ。そうだ、彼女の言う通りこれが最後だ。ドラゴンはもう空中では身動きが取れない。

 俺は剣を構えて勢いよく壁を蹴りドラゴン目掛けて落下する。そして目標のドラゴンの前で思いきり振りかぶった。

 この一撃で決める。


「ダイヤ! 」


「はい、『マキシマァム』! 」


 彼女の魔法により俺の剣はどんどん巨大化してドラゴンを両断するための強靭な剣となる。


「……いって、タアハ」


「トオハ! 」


「トーハさあああああああああああああん! 」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 『蒼嵐剛砕』! 」


 俺は巨大な剣を振り下ろす。


 ズバン!


 ドラゴンは悲鳴を上げる間もなく真っ二つになった。

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