7-15「砂漠のモンスター襲来」
「そうだ、脱衣所にそのままだったから服持ってきたんだけれどあれ、ダイヤその服……」
服の話題からかついローブからちらりと見える彼女のものにふと目が行ってしまう。
「きゃああ、み、みないでください! 」
俺の視線が彼女の身体に向いているのを悟った彼女は慌てて手でローブを抑える。
「流石トオハ、見るところみてるな」
スペードが笑いながらも彼女に倣ってローブを抑える。
「しかし、トオハ鬼刀を投げるなんて物騒なことよくしたなあ」
「それは仕方なかったんだ。鬼刀に認められていない俺が剣を抜いたら何が起きるか分からないからさ」
「それもそっか」
「でも投げるのも結構鬼刀さんからすれば恨めしいことなんじゃ……」
ダイヤがポツリと呟く。
「ぐっ……」
あの時は夢中でそこまで考えてもいなかった、確かに考えてみると抜いたのと大差ないどころかまずいかもしれない。
「まあ、その辺はこの刀も分かってくれるだろ、頼むぜ! な? 」
スペードが鬼刀に語り掛けるように言う。とその時だった。
【おいお前ら、俺を無視しやがっていい度胸じゃねえか! 】
スペードに蹴り飛ばされた後このように俺達の話題にも上がらなかったゴブリンが憤慨したように言う。
正直、彼にはこのまま逃げてもらっても構わなかった。目的地はこれまでの道中から推測はできるし彼は武器を持っておらず何より俺の側にはダイヤとスペードがいるのだ。もはや何が来ようと負ける気がしない。
恐らく彼も逃げようとしたのだろう。しかしそれよりも無視されていることへの憤りが勝ったようだ。
【もう手加減しねえぞ、お前らはあのお方によって殺されるんだ覚悟しろよ! 】
「あのお方? 」
あのお方とは、この砂漠に生息しているらしい何人もの冒険者を葬った凶暴なモンスターのことだろうか?
「トーハさん、あのゴブリンは何を仰っているのでしょうか」
ダイヤが不思議そうに尋ねるので2人に説明をした。
「つまり、あいつはわざわざオレ達が探していたモンスターのところに案内してくれるってことかよ」
スペードが素早く拾ってきた鬼刀で肩をトントンと叩く。その様子を見るや否やゴブリンは駆けだした。俺達も見失わないように後を追おうとする────もどうやら俺の到着は本当にギリギリだったようだ。10メートルほど走ったゴブリンはふと立ち止まると深く息を吸い込み口を開く。
【今回の食料を連れて参りました、どうぞお食事を! 】
ゴブリンはそう叫ぶ。
「何だ、あいつは何に声をかけているんだ? 」
スペードが目を細める、それもそのはずでゴブリンが叫んだ場所にはよくみると木の棒が1本目印のように刺してあったがそれ以外は何もないただの砂漠なのだ。
「もしかして、透明になっているのでしょうか」
恐る恐る口にしたダイヤが杖を構える。
【ガハハ、これでお前たちもお終いだ】
嬉々としてゴブリンが飛び跳ねる。それから間もなくして恐ろしいことが起こった。突如ゴブリンの立っていた足場から盛り上がったと感じた次の瞬間、突如巨大な芋虫の様な身体が姿を現しゴブリンを加える。
【ま、待ってください! 餌は俺じゃなくてあいつ……ぎゃあああああああああああああ】
ザシュッザシュッザシュッ!
ゴブリンは必死の訴えも空しく彼は謎のモンスターに飲み込まれた。
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