7-5「オーブの在処」♤

 ダイヤとともに先ほど迎えに来た小太りの男に案内されて門を潜り扉を開け中に入る。男が扉を開いた途端、白い壁に金色の彫刻ばかりか床に天井まで金色でまぶしく見える内装が視界に飛び込む。


「はあ~すげえな」


 思わずそんな声を漏らしてしまう、ダイヤの様子を窺うと彼女も驚きのあまり言葉が出ないという様子だ。


「スウサの宮殿も豪華だったけど、ここは一段と眩しいな」


 ダイヤに囁く。


「そうですね、スウサは赤いレッドカーペットを基調にしたデザインといった感じでしたけどこちらは金色が基調となっているようですね」


「ほっほっほ、王様は金色が大好きですからなあ」


 会話が聞こえたようで案内役の男が振り返らずに笑う。


「そういえば、ディールさんがそのようなことを仰っていたような気がします」


 そんな話をしながら歩を進め玄関から窓から差し込む日差しによりきらきらと眩しい廊下を抜けて金色の階段を上ると大きな扉の前に立つ。


「それでは荷物をこちらに」


 男に促されるがまま荷物を横のテーブルに置く。どうやらこの先が王様のいる玉座の間のようだ。


 ギィィィィィィィィ


 男により音を立てて開かれる扉、徐々に見えてくる景色はこれまで同様金ぴかで眩しすぎる光景だった。


「よく来てくれた旅の者よ」


 髪の生えていない豪勢な金色の服を着た王様が煌びやかな玉座から立ち上がり両手を挙げる。面会の予定なしに突然訪れたにしては歓迎されている方だろう。


「突然の訪問、ご無礼をお許しください」


 片膝をつこうとするダイヤに対し掌を向け制止を促す。


「よい、それで要件は何だ? 」


「はい、先ほど衛兵の方にもお伝えしましたがオーブの件です。古代のオーブについて王様なら何かご存じかと」


「ああ、知っておる。しかしその前にどうしても聞きたいことがある。どうして其方はオーブの存在を知っているのだ? 」


「それは、昔冒険者をしていた父から聞きました。この世界にはオーブが4つ存在していると」


「父とな、もしかするとその父の名はオパールというのではないか? 」


「ご存じなのですか! ? 」


 目を丸くしたダイヤに対し王様は大きく頷く。


「ああ、オーブの名を知っているほどの冒険者というと彼しか知らぬのでな。そうか、オパールの娘か」


 懐かしそうに王が言う。


 こういうのはダイヤに任せようと黙っていたけれど何というかあれだ、置いてかれているみたいで寂しいな。


 そんなオレを他所に会話は本題へと入った。


「それで、オーブを求めてきたわけか。確かにオーブの在処なら知っておる。より正確にはオーブを所持しておる」


「ええっ! ? 」


 ダイヤが驚きの声を上げる。確かに、彼女の驚きようももっともだ。オレもまさか王様がオーブの情報ばかりかオーブ自体を所持しているなんて予想していなかった。


「だが、有名な冒険者の娘だからといってただで渡すというわけではいかない。むしろ、そんな其方達にこそ頼みたいのだが」


 やはり珍しいオーブをすぐ渡すというほどうまい話ではなかったようだ。まあ存在知っているから渡すというのも信用できないっつーか、仮にオレ達が魔王の手下だったとしてこんな簡単に渡されては絶望的な状況だからこの反応は当然といえば当然か。


「その条件とは……」


 オレがそんなことを考えているとダイヤが深刻な顔で尋ねる。数秒の沈黙の後王は口を開いた。


「ここから砂漠を西に行ったところに魔王の生み出した強力なモンスターがいる。そのモンスターを倒したらオーブを其方らに託すとしよう」


「モンスターですか? 一体どのような」


「それが分からないのだ」


 王様が顔を歪めながら答える。


「偵察に行ったものから雇った冒険者まで、あの砂漠に向かったものは誰一人として戻ってこなかったのだ」


「それは……」


 ダイヤが言葉に詰まる。


「全滅っていうのも嫌な話だな」


 気が付けばオレもそんなことを口にしていた。


「そうだ、正直に言うとこのオーブは誰にも手渡したくはない宝物なのだがこうなっては仕方がない。そのモンスターを討伐した暁にはオーブを授けるとしよう」


 悪くはない条件だ、魔王の手下であればそのモンスターを倒してわざわざ魔王の逆鱗に触れるような真似はしないであろうから倒せば純粋な冒険者であるという証明に加えオーブが手に入る。


「じゃあ、それで決まりd……ですね」


 再び思わず口に出た言葉を咄嗟に留め何とか体裁を整える。


「うむ。ラクダと水と食料を手配しよう! 頼んだぞ冒険者たちよ」


 王様は玉座から立ち上がるとそう口にした。




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