7-2「ゴブリン、鎧を購入する」

 2人を見送ったあと、ディールに案内されて馬車の中に入る。車内は整頓されていて引き出しが幾つも存在し奥の椅子で店長が番人の様に腕組をしながら眠っていた。


「ゴブリンさん、狭いとこで悪いっすけどくつろいでください」


「いきなり押しかけてごめん、本当に助かるよ」


 俺がそういうとディールが手を振る。


「いやいやそんな、構わないっすよ! どのみち店長が起きるまでは街には入らない予定でしたし、そもそもここは首都なだけあって商売敵が多いというか皆品揃えがいいんすよね」


 ため息交じりに彼女が言う。


「だからここでは観光がてら来ただけなんで問題ないっすよ! 」


「そっか……それなら俺が依頼していいかな」


「え? 」


 予想外だったのかディールが目をぱちくりさせる。


「実はさ、そろそろ身体が大きくなってきたからスペードに背負ってもらうわけにもいかず船に乗って次の国にいくのが難しそうなんだ。そこで鎧が欲しいんだけど寸法とか測った方がいいかなって思ったんだけど俺ゴブリンだからさ」


 俺はディールに事情を伝えた。正直なところ、ここに彼女がいて助かったというのが本音だ。


「なるほど、そういうことだったんすか! なんだかんだ後をつけてきてお役に立てるみたいっすね」


 すべてを聞き終わった後、ディールはそう呟くと室内の数ある引き出しの1つを開けて何かを取り出した。


「このバールで測るのでちょっとくすぐったいかもしれないっすけど我慢してほしいっす」


『バール』と聞いて身構えたけれどみてみると彼女の手にあるものはメジャーのようなものだった。異世界ということでこの前のダイヤの言う『キャロ』が『人参』だったことといい身近にあるものでも俺がいた世界と違う言葉で話されているのはなかなか慣れないものだ。

 というより今回の様に別のものを指していると紛らわしく感じる。


「それじゃあ始めるっすよ! 」


 ディールが俺の悩みをよそに手や足、お腹にバールを巻き付けてそのあと身長とテキパキと作業を進めては紙に羽ペンで書き込み十数分程で測定は終了した。


「お疲れさまっす、それじゃあ今日中に知り合いの店にあたるとして渡せるのは数日後……ああっ! 」


 そこまで言いかけてディールは突如大声を上げた。


「どうしたの? 」


 俺は首をかしげながら尋ねると彼女は声を震わせて答える。


「ゴブリンさん、前より遥かに大きくなったのをみるに今成長期っすよね? 」


「あ……」


 それを聞いて俺も彼女が何を言いたいのかが分かった。今の俺の成長速度を見るとピッタリの鎧を用意しても1か月ほどで装着できなくなっているかもしれないのだ!


「ならとにかく今は姿が隠れる位の安いのにする方がいいな」


 突如野太い声がしたのでそちらを見ると店長だった。いつの間にか目覚めていたようだ。「おはようございます」と軽く会釈をする。


「店長の言う通りっすね! とりあえず今回は船に乗れるだけの安いやつを用意するっす」


「それで頼むよ」


 こうして、ディール達のお陰で北の国へ行く船に乗ることへの心配はなくなった。後はオーブの手がかりだけれどダイヤとスペードは上手くやってくれているだろうか?






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