幕間「吸血鬼の自信」●

 夜の闇をガタゴトト後を出しながら疾走する馬車を一人の紳士が苦々しげに見下ろす。奇妙なことに彼は空を飛んでいるようだった。夜の闇で分かりにくいけれどどうやら黒い翼をバサバサと羽ばたかせているようだ。


「ダイヤ・ガーネット、ムラサイの町でゴブリンと旅をしているというのには驚きましたが、まさかそのゴブリンが依頼したプラチナランクの冒険者をも退ける実力を持っていたとは……とことんガーネットの血筋は私の計算を……」


 紳士は歯をギリりと鳴らす。しかし、それも一瞬のことですぐに冷笑を浮かべた。


「まあ、良いでしょう。どうせその番狂わせもここまで、トーイスにいる最後の魔王様のペットに手を出そうとしたらもはや彼女の命はないようなものですからねえ。キッキッキ」


 夜の闇に吸血鬼の笑い声が響き渡る。


「いえ、念のために私も向かうとしましょうか、キキッ」


 そう口にすると吸血鬼はダイヤ達が乗っている馬車とは違う方向へと飛び去って行った。

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