6-13「檻の中のゴブリン」

【脱走なんてするからこうなるんだよな】


【しかし、どうやったんだこいつは】


【てか、こんなやついたか? 】


「ん、んん……」


 様々な声がして目を覚ます。そこは薄暗くかび臭い匂いが鼻を刺激する。目を開けるとそこには数体のゴブリンが横たわる俺のことを覗き込んでいた。


「わあっ! 」


 余りの光景に上体を跳ね上げて起き上がる。見渡すと周りは石の壁に鉄格子が存在する牢の中のようだった。どうやら作戦は成功みたいだ。


【気が付いたみたいだな】


 側にいたゴブリンが俺に声をかける。


【何とか】


 俺は身振り手振りで目が覚めたことと命に別状がないことを証明する。


【それで、お前どうやってここから出たんだ? 】


 突然の核心をついた質問にドキリとする、も彼らからしてみればこれは一番に尋ねたいことだっただろう。


【前の試合の後、たまたま開いているのに気が付いたんですよ】


 咄嗟に思いついた出まかせを述べるとゴブリンたちは顎に手を当てる。


【たまたま開いていた……それは確かめもしなかったな。千載一遇のチャンスを逃してしまったか】


 流石にバレるかと不安になったがどうやら杞憂だったようでゴブリンは悔しそうに言う。


【それならどうして教えてくれなかったんだよ! 】


 別のゴブリンから罵倒される。確かに開いていたということになると1人で逃げようとしたというのは心象悪いことだろう。


【それはですね、集団で飛び出して見つかるとマズイので先に1人で様子を見ようかと……】


【様子をねえ……】


 呟きながらゴブリンは鋭い目で俺を見つめる。


【確かにそれもそうだな】


 そう言って踵を返して奥へと歩いて行った。周りに誰もいなくなったのを見て手すりに手をかけると何もないはずの外の空間に声をかける。


「ダイヤ、いる? 」


「はい。トーハさん、ご無事で何よりです」


 すると誰もいないはずの通りから声が聞こえる。無論見えずに匂いがしないだけで誰もいないというわけではない。そこにはダイヤがいるのだ。俺としては見えない相手に語り掛ける方法しかなかったのだ、彼女が無事潜入できたようで一安心だ。


「それじゃあ、俺がここから出て会場に連れてかれたらスペードに」


「はい、お伝えします」


「でもそれだと脱出は俺1人か」


 ここまでの道のりは眠らされていたため分からず不安になりポツリと呟くとダイヤが優しく言う。


「心配には及びません、もうここまでの道は覚えたのでパンルさんの鍵を使って迎えに行きます」


「ありがとう、助かるよ」


 持つべきものは仲間というか流石ダイヤだ。優しい。


【さて、それでは次の試合に出るゴブリンを決める】


 ふと、他のゴブリンより一回り大きなゴブリンが言う。彼は成人男性よりも大きく周りの俺を含めて少年から成人男性位のバラバラの集団の中では群を抜いて大きかった。彼の一言により周囲がざわつく。


【死なないけどボコボコにされるのはなあ】


【お前行けよ】


【いや、まだだ。まだこちらから2体で連携できる可能性も……ボス次の試合に出るゴブリンは何体ですか? 】


 ゴブリンの問いにボスが答える。


【分からん、1体かも知れないし2体かもしれない、もしかしたらゴブリン同士かも知れないがそれは俺にもわからない】


 その答えを聞いたゴブリンたちは震えあがる。どうやらここのゴブリンたちは進んで試合に出るという気はないようだ。これは俺にとっても都合がいい!


【俺がやります! 】


 俺は手を挙げてそう言った。


 すると周囲が一斉に命知らずだとでも言うように俺を見る。


【よし、ならば次の試合はお前に任せる! 】


 ボスの声が響きそういうことに決まった。丁度その話し合いが終わるのを見計らったように一人の魔法使いが檻をカートで引きずり鍵を手で回しながらやってくる。その音を聞いた俺以外のゴブリンは皆後ろへと退いた。


「お、今回はやけに素直なのがいるな、じゃあお前だ『スリープ』」


 男が魔法を唱えたことにより、再び意識が朦朧とし俺は眠りへと誘われた。


 俺は周囲が



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