5-9「剣VS刀」♤
「分かった、ここは任せた! 」
奇怪な忍者はトオハとダイヤに任せて隠し階段を駆け上がる。段差がきついけどここで体力を惜しんだら追いつかれる危険もあるので全速力だ!
階段を駆け上がると足音と匂いからこれまで同様、木材を使用した一室のようだが部屋には灯りのための蝋燭もなく真っ暗で辺りはシンと静まり返っている。
明かりがないから炎で城を燃やしてでも強引に明かりをつくる……てのはさすがのオレでも勘弁だ。
こういう暗闇での戦い方は習った、『光の魔法』が使えないのならば目を慣らすことが重要とのことだが慣れるまでの猶予を与えてくれるとは思えないので気配で探るしかねえか……
感覚を研ぎ澄まして気配を探るも敵の気配はどこにも見当たらねえ。そうやって一歩も動かないでいるうちにありがてえことに敵を見つける前に目が慣れてきやがった。
天守閣最上階よりもさらに小さく窓もない殺風景な部屋だ。殺風景なだけに向かい側の壁にポツンと設置されている鎧が奇妙だった。鎧の真下には最上階に飾ってあった刀は模造品だったとでもいうように目の前に大事そうに刀が置いてあるのが見える。
ゴクリ、と喉を鳴らしてから鎧に近付く。丁度オレが部屋の半分まで歩いた時だった。待っていたとばかりにギロリ、と兜の下が光った奇妙な気分に陥り立ち止まる。
すると鎧はまるで身体があるかのように鞘から刀を抜くと立ち上がり構えた。それを見たオレもすぐさま剣を構える。
「なあ、1つ教えてくれねえか? 御館様のあんたが時が経ったとはいえなんで今でも城を綺麗にしてくれる民たちを殺してるんだ? 」
話を聞いた時からずっと疑問だった。何で殺して回ってるのか? 過去に裏切られたことでもあるのか? 本当のところこの亡霊が何を語っても納得はできそうにねえが聞いておきたかった。
オレの問いに対していつまで経っても亡霊は答えない。
「もしかして、話せないのか? 」
話せないということは意思がないのかもしれねえ、つまりこの亡霊はただ人を斬って回るだけの人の形をしたモンスターだってことだ! 真意はともかくとしてそうだとしたらこんなの御館様だって望んでないかもしれねえ、魔王はなんて残酷なことを!
「まあ、どっちでもいいか」
あんまり長くしゃべっても相手が意思があるのかもわからないとなっちゃただの独り言だ。だから簡潔に要点だけを言わせてもらう!
「オレは! ここにお前を! ぶっ倒しに来たんだからよお! ! 」
その言葉を開戦の合図としてオレは亡霊に近付き動きを小さく右から鎧目掛けて剣を振るう。
それを亡霊は刀で受けガキィン! と音が鳴る。あっさり防がれたように見えるがこれがオレの狙いだった。オレの作戦は至ってシンプル、【刀をへし折る】だ!
亡霊の刀というやつはオレの剣と比べるとみるからに細い。ならこうやってぶつけあうことでいつかは折れるはずだ! この勝負貰った!
「おら次行くぜ! 」
そう言って何度も奴の刀に剣をぶつけもう1発お見舞いしてやろうとその時だった。オレの右上から斜めに振り下ろした剣が刀に当たる寸前、亡霊が刀の角度を変えた。
しまった!
後悔するもすでに遅い、オレの剣は空を切ろうとしている隙に奴は刀でオレを突き刺そうと突き出す。このままではオレはこの一突きでおしまいだ。
「こんのおおおおおおおおおおおお! 」
オレは渾身の力でエルボーを放つように右ひじを動かし剣の軌道を変える。右ひじが刀で斬られたもののギリギリのところで剣と刀がぶつかり亡霊の刀は弾かれた。
しかし無理なエルボーで体制を崩し右脚1本で立っているオレよりも早く立て直した亡霊は今度はオレを右斜めに斬り伏せようと刀を振る。剣を振ろうにも左手は右手に握られている剣の正反対の位置にありこれを右だけで振ろうにも間に合わない。
「くっそおおおおおおおおお! 」
叫びながら一か八か右足で床を蹴り後ろへと跳ぶとほんの数秒前にオレがいたところは亡霊の刀で一閃された。
ドン! と床に投げ出されるも素早く床で受け身を取り起き上がる。起き上がる時に目に入ったものをみて驚愕する。
ウソだろ……オレは奴の刀をギリギリのところで避けたから当たっていても切っ先くらいのはずだ! なのに何でオレの服が切られてるんだよ!
オレの服は丁度腹の部分は斬られ鎖帷子が露わになっていた。
「どういうわけか何度も剣でぶつけても効果ねえし少し触れただけでこの切れ味、あの刀ってやつはひょろ長いながらも切れ味は洗練されていて絶大だ。喰らったらヤバイ! 相当厄介だぜ」
自分を鼓舞するために呟くように言いつつもオレはゆらりゆらりとこちらに迫ってくる亡霊を睨みつけながら剣を持つ両手に力を込めた。
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