4-1「豪華な船で次の国へ! 」

 俺たちはスペードを加えて3人組の冒険者として他の国へ向かうため馬車に乗り港町ドーサを目指していた。


「スペードさんは卒業してから誰かに出会いましたか? 」


「ああ、剣3位のユーゴにあったよ。あいつ僕が魔王を倒すんだって張り切ってたぜ」


「それは頼もしいですね」


 馬車の中では御者が聞き耳を立てているかもわからないので俺は基本喋らないで黙って彼女たちのガールズトーク? を聞いていた。基本人の話を聞いていたいタイプなのでこの状況は有難い。


「でさ、うちの親父が昨日新しく来た商人に売っててよ。喜んでたぜ、新しいとくいさきができたって」


「まあ、そうなのですか」


 気がつけば話題は跳びに跳びスペードの家族の話になっていた。どうやら父親と2人で暮らしていたらしい。


「もうすぐドーサだよ」


 御者はなかなか終わらない会話にいつ声をかけるべきか悩んでいたらしく小さな声で伝える。


 早くももうドーサの町か、港町ということで船に乗るために俺はこのままバッグの中にいなくてはならないがはたしてバレないのだろうか?


 心臓がバクバクとなる。もしばれたら、港町というからには海があるだろうし一目散に海に飛び込んで透明になったダイヤと合流しスペードともどこかで落ち合おうと作戦を考えているうちに馬車はドーサに到着したらしい、馬車が止まる。


「はい、ドーサに到着」


「ありがとな」


「ありがとうございました」


 支払いを済ませると馬車は次の客を求めて去って行ったらしい。町に入ったということは俺は一層人目につくことのない様に努力しなければならない。俺は身体を丸めバッグから出ないように努めた。


「ん? 何だあの行列」


「気になりますね、行ってみましょう! 」


 どうやら何かの行列ができているようだ。一瞬ならば大丈夫だろう、バッグの見えるか見えないかの範囲までひょっこりと外を覗く。みるとそこには10数人の行列ができていた。大きな家の陰になっていてひんやりと涼しいのが心地良く「冒険者限定! アンケートに回答いただくと豪華船で東の国トーイスへ向かえるチャンスが! ! ! 」と仰々しくも冒険者にとっては夢のような看板がみえた。列には剣士や槍使い、格闘家など様々な姿がある。


「豪華船でトーイスか、良いねえ! 何処の国に行くかはもう決めていたのか? 」


「いえ、東か北のどちらかにしようかとまでは決めたのですがその先は……」


「なら、やってみようぜ! 」


 スペードがダイヤを引っ張り列の最後尾に並ぼうとしているようだ。確かにこれで見事手に入れたら儲けものだが………………とそのとき


「おめでとうございまあああああああああああす! ククッ! 」


「いやったあああああああああああああああああ! ! ! ! ! 」


 けたたましい大声が鳴り響く。聞くにどうやら当選者が出たようだ。こういうの当たったことがないために自分ではないとはいえこういう場面を見ることができたことに心が躍る。


「申し訳ございませんがあと1組となってしまいました、ククッ」


 腰を曲げた白髭の係員らしき老人が並んでいる人全員に聞こえるように大声で告げる。「ククッ」と笑うのは口癖だろうか? 口癖のせいか謝罪の言葉を述べていても煽っているようにも聞こえてしまう。


「外れたか~」


「まあ仕方ねえよ! 」


 次々と参加者の列が捌かれて行ってダイヤ達の番になったようだ。


「はい、どうぞ! 」


 老人に手渡されたアンケート用紙に彼女たちが記入していくやがて書き終わったのか提出する音が聞こえる。


「ほう、ガーネット? ククッ! 得意な呪文は盾の呪文ですか………………これは珍しい。クククッ! 」


「だろ? 爺さん、だから頼むぜ! 」


 何故かスペードが反応し便宜を図ってもらえるよう頼む。


「ハッハッハッ! それはこのルーレット次第だ」


 見事にあしらわれてしまうがどうやらルーレットで当たり外れを決めているらしい。


 ルーレットかあ………………モノによっては細工をして当たりを出ないようにできるなんてことは聞いたことがあるけど当たりが先ほど出たのをみるとそういうやらせでもないのだろう。


 考えているうちにルーレットが回りだしたようだ。スペードは思いっきり声に出して「来い! 来い! 」と叫んでいるに対してダイヤは祈るような仕草をしているようだ。やがてカタカタと音を立ててルーレットが止まる。


「残念! ! ! ククッ」


「ああクソっ! 」


 スペードが地団太を踏む。彼女は恐らく絶対にギャンブルとかをやらせてはいけないタイプだな。


「残念でしたね、行きましょう」


 そんなスペードを連れて去ろうとするダイヤを老人が引き留めた。


「まあ待ちなさい! まだお嬢さんの分1回残っておる! ククッ! 」


「「え? 」」


 2人が声をそろえる。どうやら1人1回引けるのを1組につき1回と勘違いしていたようだ。


「そ、そうでしたかすみません! 」


 ダイヤが謝罪して今度はスペードを連れて慌てて老人の元へ戻った。


 再びルーレットが勢いよく開店する。意外なことにスペードは今回は静かだった。祈っているのだろうか? ルーレットは勢いをなくしカタカタと今にも泊まりそうな音をしている。やがて止まったのか止まってないのか判断ができないうちにワッと歓声が上がった。


「大当たりいいいいいいいいいいいい! ! ! ククッ! 」


「いよっしゃあああああああああああああああ! ! ! 」


 スペードが老人に負けじと甲高い声を上げる。


「やったなダイヤ! 」


「は、はい! まさか本当に当たるなんて……」


 ダイヤってツイているんだなあ…………


 俺も飛び出して2人に混ざりたい気分だったがそんなことをすると大惨事なので心の中で「おめでとう! 」と彼女に勝算の言葉を送った。

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