3-17「女剣士、スペード」♤

 ここは死後の世界か? 本当にあったとは驚きだけれど思いっきりやられたはずが意識はあるってことはそういうことだよな? さしずめここは天国か地獄の分かれ道ってところか。なら自己紹介が必要だな神様。


 オレはスペード、冒険者志望の女剣士だった。


 親父は鍛冶場を継がせようとしながらも剣の参考になるとかいって冒険者を目指すための学校に通わせてくれた。


 学校ではルイーダには勝てなかったけど何と2位の成績まで収めることができた。先生もオレと模擬で対戦した奴も声をそろえて「スペードの突進は魔王ですら逃げ出すだろう」って言うんだぜ! すげえだろ?


 そんなこんなで冒険者の学校を卒業したオレだけど残念ながら親父はオレが冒険者になるのに猛反対、鍛冶屋を継げってそりゃねえだろ! オレは学校2位の剣士だぞ?


 仕方がねえからこっそり冒険者の試練を受けに行ってバッジを貰って抜け出すことにしたんだけどよ、いざ抜け出そうって日になって心が強くてトラウマなんてなけりゃ間違いなく魔法使い志望だったダイヤって勿体ない変な同期と再会したと思ったらそのダイヤの連れがこれまた変な喋るゴブリンで、俺は変な魔法使いが連れていた変なゴブリンにやられちまった。


 あのゴブリン、「魔王すら逃げ出す」というオレの突進をみて逃げ出そうとするどころか踏み込んできやがった。ゴブリンとは何度も戦ったことがあるがこんなことは初めてだった。そんで見事に一撃食らってそのあとはボコボコにされてトドメの一撃を喰らって終わり! ! !


 笑える話だろ? これで終わっちまったんだぜ…………はは……笑えねえ。


 本当のことを言うとさ、最期はこんな笑える気分じゃなかったんだ。とにかく涙が出ていた、泣き出していた。死にたくないって思ってた。


「モンスターと戦って死ぬのは怖くない」みたいなことをよく言って尊敬されてたけどそりゃ皆オレを褒めるよな、尊敬のまなざしを向けるよな………………こんなに怖えんだから。


 ゴウゴウと風の音が聞こえる、何だもう審判は終わりか? ここは天国か? それとも地獄か?


 どちらか見極めようと生前やっていたように目を開けてみる。すると同じように目が開いた。視界には大きな岩と横になっている地獄の使者らしきゴブリンと後ろを向いている女性が目に入る、天使だろうか?


 ここは天国? それとも地獄? いや、ここは……


 目の前の光景に目を見開く。


 ここは…………ドンカセの村から少し離れた荒野じゃねーか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る