エピローグ

やっぱり彼女は賢者に向かない

 あれから日が経ち、もうすぐ夏休みが終わろうとしている。


 俺たちは童貞石との間に、3つの契約を結んだ。


 1・今後一切、俺たちとその家族を攻撃しない事。

 2・グロリアさんに退職金とセクハラの迷惑料を払う事。

 3・こちらでセレスさんを預かる事(なお、生活費は魔界が出す)。


 と言うもの。

 3つ目は、向こうから『2つは守るから、お願いします!』と土下座までされて、お願いされた事だ。


 そのおかげで、セレスさんは二人そろって我が家の居候と化している。

 と言っても、先生とセレスさん(悪)は馬が合うらしく、よく一緒にゲームをしている為か、意外と悪影響は無いし、それどころかセレスさん(善)が料理を作ってくれるから、非常にありがたいと思っている程だ。


 グロリアさんは今、こちらの世界で社会人として働いている。

 何でも、仕事をテキパキこなしてくれるとの事で異例のスピード出世をしたと喜んでいた。

 その関係で、最近泊りがけの仕事になる時は、妹さん達を家で預かる機会も多い。


 そして何と、リリアちゃんとクルシナさんもこっちに来ている。

 リリアちゃん曰く『これから大人になっていずれ銀狼族の長となる為に、色々な勉強をしておきたい』との事だ、クルシナさんは言うまでもない。


 ただ勿論、リリアちゃん達には住民表等の書類の問題があるので、ユキと一緒に邪神に相談したところ。


 「天界の方から今回の件について、『一生お金を払います』と申し出てきて気分がとても良いので、すぐやってあげましょう!」


 と言ってくれたので、住民票等の問題は割と簡単に解決した。

 ……天界、脅されたのではないだろうか?


 そうそう、最近ユキも我が家に居ついている。

 何でも『ノブユキが浮気しない様に……』だぞうだ、俺は浮気してないってのに……。


 だけど、そのおかげで毎日が楽しく感じられる。

 確かに両親はいないけど、家族が出来たと思っている。

 だから俺は今、この青空のどこかにいる両親に伝えたい。


 「俺に家族と思える仲間が出来たよ……う!」

 「ぎゃっほーノブユキ〜! セレスさんがご飯できたってよ~!」

 「ユキ、そんな事口で言えば分かる事だろう? わざわざ背中に抱き着くな!」

 「え~だって冒険も終わって退屈なんだもん……」

 「分かった分かった……、そのうちどこか探検に行こうな!」


 やっぱりこいつは賢者に向かない。

 特に考えることもなく、ただ思いのままに生きる……。

 でも、コイツは俺の大切な彼女だ。

 だから、俺はコイツが賢者であろうがなかろうが、ユキの笑顔の為に人生を冒険する生活を続けるのだろう。


 しまった、報酬を貰うのを忘れてた!

 後で邪神にもらいに行くかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女は絶対賢者に向かない。 ~スマホ画面の向こうの冒険録~ 赤城クロ @yoruno_saraku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ