明かされた真実
「あの邪教徒としてのセレスは嘘だったのか?」
真剣な俺の声が暗闇に響き、無数のセレスたちの横を通り過ぎて行ったようだった。
そして魔王セレスは。
「アナタ……あれ本気だと思うの?」
と呆れた表情で……あれ?
何で俺、そんな可哀そうな目で見られているの?
「あのね少年、ごく一般的な話をするわよ……。 他の教団を邪教徒と言って破壊活動したり、リア充だからってボコボコにしようとする連中、ホントにいると思っているの、アナタ?」
「……いないと思う……」
「でしょ? ダメよ、現実と空想を一緒にしたら……」
何だろう、納得は出来るけど、とっても腑に落ちないんだが……。
「そ、れ、と!」
そう言って、魔王セレスは俺にまたがると。
「アナタの事が好きなのはホントよ。 だってアナタみたいにバカでどこかお人よしで、好きな子に一直線な子、なかなかいないもの……。 だから気に入っちゃったわ~。 はい、あーん!」
そうニコニコとした顔を浮かべ、胸を押し付け、粒上のチョコレートを俺の口に頬り込んで……って。
「お願い止めて! マジでドキドキするから!」
「ふふ、面白いわ~! 楽しいわ~!」
と俺をからかうセレスさ……魔王セレス。
そんな様子に。
「バカチン! ノブユキのバカチン! 何で私に赤面しないで、そんな変態女を好きになるの!? バカ、ノブユキのバカ!」
「うるさいユキ! だってフェロモンがヤバいんだぞ! もう意識を鷲掴みにされるような感じなんだぞ!」
「つまり匂いで興奮するって事!? も、もしや私の服を洗う時も……」
「ば、バカ! そんな訳ないだろう! お前は一体何を言っているんだ!?」
このバカ、何ていう事を言ってるんだ。
その、うちに泊まりに来た時、たまに服の匂いを嗅いでしまうのはあ……いやいやいや、何て失礼な奴め!
そんな様子が面白かったのか、魔王セレスは。
「おやおや~ユキ様~。 この魔王セレスの魅力に負け、少年は私の恋人になってしまったらしいの~。 そんな熱い思いにもう、私も食べちゃいたいくらい好きになっちゃったかも~」
「ま、待て! ふ、ふざけた事を言うなよセレス!?」
「あら~、嬉しいわ~少年、愛する恋人を下の名前で呼び捨てしてくれるなんて~、もうセレスのコ、コ、ロ、奪われちゃったかも~!? うふふ、両想いを見せつけらえれて、可愛そうな賢者もどきのユ、キ、さ、ま……。 キャハ!」
と全力でユキを煽り、同時に俺をからかう……。
コイツ、邪教徒の時よりタチが悪くなった気がするな……。
そんなタチの悪い魔王セレスに対し、ユキは。
「ノブユキ! 後で浮気したお仕置きはするけど、その前にそこの裏切り者をぶっ倒す!」
「ちょっとまてユキ! 俺は浮気した訳じゃないぞ!」
「あら~、少年ったら照れちゃって……、カ、ワ、イ、イ、わ! 魅力も知性もないユ、キ、さ、ま、とは大違いね!」
「ムッキー! 待ってなさいよ、セレス! すぐにぶっ飛ばしてあげるんだから!」
セレスさ……魔王セレスの煽りによってカンカンに怒っている、ロケットランチャーをバンバン空にぶっ放す程……。
そんなユキをリリアちゃんとグロリアさんが。
「お、落ち着いてください! 落ち着いてくださいユキさん!」
「そうです、グロリアさんの言う通りです! だから落ち着いてください!」
と言って必死に止めようとし、その後ろから。
「ふふ、必死なリリアもたまらなく良いな……」
と鼻血をだしながら嬉しそうにリリアちゃんを見るクルシナさん、ホントこの人はぶれないな……。
そして、そんな様子を見ながら魔王セレスは。
「ふふ、ならば西の洞窟の地底城で待ってるわよ~」
そう言い終わるとスマホを手に取り、電源ボタンを押し、ユキ達の姿を消した。
と言うか、コイツ何で平然と使えるんだよ……。
「あ~、久々に面白かったわ~」
「俺は面白くねぇよ……」
「え~、つれないわね~、私の心を盗んだ愛しの、ダ、ー、リ、ン!」
「ダーリンって言うなよ! ユキに殺されかねんぞ、俺が!」
「それはそれで面白いわ~。 私、他人の苦しむ姿、大好きだもの~!」
俺、前のセレスより嫌い!
なんか悪魔と言う感じで……まぁ魔王だけどさ、コイツ……ってあれ? 何でつまんなそうな顔をしているんだ?
「何で赤面してないの……?」
「あ!」
そう言えば、なんかドタバタした空気でドキドキしなくなったと言うか、慣れたと言うか……。
と言うか、ホントにつまんなそうだな、コイツ……。
「すまん、何か慣れたっぽい……」
「つまり、賢者タイムに~……」
「違う! そんなんじゃないって!」
コイツ、的確に嫌なところを付いてくるな……、また生き生きした顔になってやがる……。
だが、ここでふと疑問に思うところもある。
それは《一体何のために俺を誘拐したのか?》
という事だ。
……考えても分からないし、聞いてみるか。
答えてくれるか、期待は持てないが……。
「お前、一体何の目的で俺を誘拐したんだ? と言うか、イマイチお前がどう考えているのかが分からないぞ……」
「へぇ~~~~~、女の子の気持ちを察せないと、一生童貞よ~」
「お前がすっごく楽しいのは良く分かる……」
ええい、コイツが煽り魔であること以外、良く分からなくなってきた……。
そんな考え込む俺を更に煽る様に魔王セレスは。
「仕方ないわ~じゃあ少年が『セレスお姉様、お姉さまのおっぱいが飲みたいです! おっぱいおっぱい!』って言ったら教えてあげるわ~……」
「…………」
……待て、罠なのは分かる……。
だが、コイツの考えが分からない以上、俺は素直に言うべきなのではないか?
いや、だがその引き換えに受ける精神的ダメージが大きすぎる様な気がする。
それに嘘の可能性も……。
どうする、どうする?
…………。
……くそ、ユキの為だ、プライドなんか知るか!
「……セレスお姉様、お姉さまのおっぱいが飲みたいです。 おっぱいおっぱい……」
「え? 恥ずかしさがあってダメですね~、もっと甘える気持ちで!」
この野郎……、わざとやってやがるな、コイツ……。
ええい、恥ずかしさなど知るか!
「セレスお姉様、お姉さまのおっぱいが飲みたいです! おっぱいおっぱい!」
「あ~ん、セレス興奮しちゃう~。 もう、ユキ様の怒り狂った顔がたまんなーい……」
「…………」
コイツ、いつの間にスマホを!?
ってユキが無言でロケットランチャーをバンバン売ってるんだけど!
リリアちゃんが「落ち着いてください! 落ち着いてください!」って叫びながら押さえているんだけど!
と言うか、ユキのバカ、簡単に挑発魔の挑発に乗るなよ……。
こうなれば、冷静で知的なグロリアさんのお力に頼るしか……。
「あ、グロリア……アナタは手を貸しちゃダメよ。 だってアナタ、無駄に頭も回るし近接戦闘なら最強クラスなのだから……」
「えぇ!? でも、でも、セレス先輩! その、ノブユキさんもユキさんも今は私の大切なお友達ですから……。 その、えーっと……」
「アナタが合コンで何をしたのか、1から10まで話すわよ……」
「う……! そ、それでも大切なお友達の為に……」
ん? グロリアさんの顔が青ざめたぞ?
合コンで何があったんだろう?
「ふふ、そういえば大切な妹さん達をこっちの世界に来るとき、拉致してきているんだけど~。 ついでに魔王なのに天界側についているって会社にバラしてクビにしちゃおうかしら~」
「ご、ごめんなさい皆さん! 私、コレ以上進めません!」
この野郎、グロリアさんを封じやがった!
くそ、どうする!
「あぁ、グロリアが動く可能性を考え忘れていたわ……」
ん? 今何か聞こえたような……。
何て言ったんだ、セレスの奴?
「まぁしかし、結構楽しんだし~。 それじゃあまた会いましょう~賢者もどきのユ、キさ、ま!」
そして魔王セレスはそう言ってアプリを閉じると、スマホを胸にしまい。
「おかげで楽しめたから、特別に目的を教えてあげようかしら?」
「え!?」
俺は予想もしなかった言葉に、驚きを一言にして口から漏らしてしまい、そんな俺を見ながらニヤニヤする魔王セレスは、自身の目的を放し始めた。
「さて、私の目的は、クリスティアを始末する事よ」
「あの邪神を?」
「ええ、あの邪神を……」
「ん? 何であの邪神を始末するんだ? ……おい、その呆れ顔は止めろ、何か俺がバカなのか? って思いそうになる」
「だって少年ってやっぱりバカじゃないかしら? って思っちゃって~」
コイツ、ストレートに失礼な事を言いやがって。
それも全く笑わず呆れているから余計に腹が立つ……。
「はぁ……。 ごく一般的な話をまたするけど、その時の感情だけで悪魔脅して天界側に立ったり魔界側に立ったりと立場を行き来したり、天界や魔界を脅して自分の幸福を追求している相手に、やられている側は不満が溜まると思わない?」
「そりゃそうか……」
「そう言う事!」
「…………」
結局あの邪神が全部悪い訳だな……。
と言うか、魔界にここまでの行動させるって……ん?
落ち着いて考えてみれば、今回の件って天界から、この世界に魔王が出て何とか~って話が来たから、始まったんだよな。
まさか……。
「なぁ、今回の件って、天界も関わってるんじゃないか? 考えてみたら、魔界の考えだけでここまで出来るとも思えないし……」
「あら、おバカと思っていたけど、たまには頭が切れるのね少年は。 そうよ、今回の計画、天界と魔界の共同作戦ね」
「出来れば、その全貌が知りたいのだけど?」
「良いわよ、どうせ外と連絡も取れないでしょうし」
意外にあっさりとした返事だった。
そして魔王セレスの口から淡々と計画の全貌が語られだす。
「まず、元々の計画だと、この世界に邪神を呼び込んで、袋叩きにしようって計画だったの。 だけど、この世界に来たのは邪神の娘のユキ、上は予想外だったらしいわ」
「上は予想外だった? どういう事だ?」
「そのまんまの意味よ。 上は所詮、計算の甘いダメダメの集まりって感じかしら? まぁそのおかげで、私はアイツらの弱みを知っているし、その弱みで脅して、今回の計画の総司令につくことができたのだけど。 楽しかったわ~脅すときに苦悩の表情を浮かべた無能達の姿……。 あぁゾクゾクしちゃう……」
「お前、やっぱり魔王だよ……」
コイツ天性のサディストだな……。
「後は……、最初の計画もご破綻したし、後は私の独断の計画でやっているのだけどね。 グロリアを表向きの魔王にしたのは私だし、その動きを把握するため、ミーティアって名前の土人形を作って動きを誘導したり……。 あぁそうそう、
「なるほど……」
色々言いながらも、コイツは誰かを思いやる気持ちはあるのな。
「それと……そうね、後は運よくアナタが来たし、餌として捕まえて、ユキを釣って、あのユキの苦悩の表情を浮かべさせたくなっちゃって……。 あぁ、そう言えば上のバカの連中は、ユキはともかく男は殺せって言ってたけど、私はそんな気さらさら無いし……。 安心なさい少年、私は殺しを好む程、落ちてはいないわ」
そう優しい笑みを浮かべ、頭にポンと手を置いたセレスさ……魔王セレスを見て『やっぱりセレスの根の部分は変わらないな』と感じた。
腹が立つ部分があるが、でもどこかこちらを思いやる良い点も持つ、そう考えれば、やっぱりセレスらしいと言うか……。
そんな様子に俺は無意識に。
「ふふ……」
と笑みを零す。
そんな俺の様子に呆れた顔を浮かべた魔王セレスは。
「はぁ……笑みを零すなんて、まったく頭がおかしくなったみたいね……。 ロープは解いてあげるから、人質部屋に入ってなさい」
作り出したセレスの人形に、俺の座る椅子ごと抱えさせると、その人質部屋なる場所に運ばれていった。
…………。
俺は階段を下りて一番奥にあった人質部屋に入れられると、人形にロープを外された。
そして人形は、入口のドアをガチャガチャと音を立ててカギを占めると、どこかに去っていったようだ。
さて、人質部屋ある部屋の入口の扉は鉄の大きな扉だが、部屋の中は豪華な洋室みたいだ。
大きな綺麗なベットもあり、そして綺麗な地下水の川が岩の道を通って流れていっている。
一瞬ここから脱出できるかと思ったが、水の出入り口に設置された鉄格子のせいで通り抜けられなくなっていた。
「誰? お兄さん?」
どこからともなく女の子の声が聞こえるが、その姿は見えない。
「誰だ? 俺はノブユキって名前の……」
ん? この場合、異世界人と言ったほうが良いのか?
それとも特にそんな事を言わなくていいのだろうか?
そう思っていると?
「ノブユキ! もしかしてクルシナお姉ちゃんの友達の!? あのノブノブ!?」
「ん? クルシナさん? もしかして妹さんか?」
「うん!」
そう言って一人の少女、それに続くように小さな少年がベットの下から飛び出してきた。
少女は12歳くらいでリリアちゃんと同い年位の印象。
長めで片目が隠れるボサボサ髪、それに何度も刺繍した様子のワンピースを着ている。
そして、少年は6歳くらいで両目が隠れる程のやや長めのボサボサ髪。
こちらも刺繍したYシャツにズボンを履いている。
(なんか、大変な生活をしているのだなぁ……)
俺はそんな様子を見て、そう思……。
グルルルルルルルル……。
……うん、俺はそう思う前に重要な事が出来てしまった。
それは。
「ねぇお兄さん、すっごくトイレに行きたいんだけど、どこにトイレあるかな?」
「トイレなら外よ、ノブノブ」
「嘘だろ!?」
ええい、こうなれば急いでトイレに……。
と言うか、何でお腹が急に痛くなったんだ!?
俺最近変な物を食べた記憶は……。
『だから気に入っちゃったわ~。 はい、あーん!』
あれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
くそ、あの野郎、チョコに下剤か何か入れやがったな!
いつか仕返ししてやるからな……、ってあれ? 何で扉が空かないの?
「おい、空けろ! お願いだから!」
「ノブノブ、そこの扉は決まった時間しか空けてもらえないよ」
「つ、次は何時に開けてもらえるの……?」
「今日はもう終わりだから、明日だと思うよ」
「開けろセレス! ホントトイレに……。 お願いします、セレス様! 愚鈍な私に救いの手を差し伸べてください! もうあなたの部下にでもなんにでもなりますから!? だから開けて、お願い!」
そして俺は、扉をドンドンと叩き続けた。
腹痛の痛みに耐えながら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます