必勝!カクヨムコン<初級編>

 編集部様からカクヨムコン特別賞受賞のお知らせをいただいた美しい春の日から、1年が過ぎました。

 やっと自分の人生の主人公になれたような巨大な嬉しさ、揺るぎない多幸感を覚えると同時に、「書籍化検討」の「検討」という言葉の頼りなさに半年ほども不安を抱える日々の始まりでもありました。


 今こうして小説家の端くれとして世界を見ることができていることが、いまだにどこか信じられないような気分です。

 そういう意味では、やっぱり文句なしの大賞をどーんと獲ってみたかったなあ。100万円も大好物だし。

 もちろん、何度でも挑戦するつもりですけどね! Catch the wave!


 発売からしばらく経っていくらか身辺が落ち着き、ひとりの読み手としての自分もだいぶ戻ってきました。

 猛プッシュしたいカクヨム作品にも出会い、これはぜひともカクヨムコンで結果を出して書籍化するところまで見届けないと死ねない! とまで熱い思いをたぎらせております。


 そんな素晴らしい作品を手元で温め、育てている真っ最中の方々へ少しでもお役に立てれば幸いと、特別賞しか受賞経験のないわたしではありますが、今年冬にまた開催されることがほぼ確実と思われるカクヨムコン7参加の基本ポイント&書籍化も見据えた上での必勝法を綴ってみることにしました。

 まだ先なんて言わせない。10万字の道のりは長いです。


 今回は、主に初参加する方々向けの初級編です。ベテランの方々はどうぞスルーしてくださいませ。


 ※以下、あくまで砂村個人としての私的な考察になります。

 すべての書き手さんや作品たちに当てはまるセオリーではありません。ご承知おきください。



①10万字以上書こう、ただし書きすぎに注意


 カクヨムWeb小説コンテスト(以下「カクヨムコン」)の参加条件のひとつ、文字数は、例年10万字以上と規定されています。

 なので、まずは10万字以上のボリュームで仕上げることを前提に書いてゆくことが大大大前提となります。

 ただ、程度というものがあってな……という話です。


 わたしのカクヨムコン初参加は『炭酸水と犬』で挑戦したカクヨムコン4でした。20万字オーバーの長編です。

 たくさんの★のおかげで読者投票ランキング最高ジャンル4位に到達することができましたが、カクヨムのトップ画面に表示される上位3位に入ることはとうとうできませんでした。

 中間選考は突破しましたが、受賞はならず終わりました。


 これがもし10万字ちょっとの作品であれば、初めての読み手への敷居はもっと低かったかもしれないなあと思うのです。

 よく知らない他人の10万字もの長編作品を通読するのは、なかなかに大変なものです。その2倍の分量があれば、ハードルの高さはなおさらです。


 翌年のカクヨムコン5にて、恋愛ジャンル1位を11日間も達成できた『アパートたまゆら』の人気に引っ張られるようにして、再挑戦の『炭酸水と犬』もより多くの方々にお読みいただけるようになり(それ以前にもたびたびTwitter等で話題にしていただいてはいたのですが)、同時受賞に至ることができました。


『炭酸水と犬』は20万字を費やして完成する物語でしたが、もしそこまで大長編にする理由が特段ないようであれば、10万字を大幅に超過することのない範囲で仕上がるようプロットを組むことをお勧めします。

 まずは読まれなければどうにもならないからです。


 ちなみに、文字数が多すぎたことの弊害がもうひとつ。

 書籍化にあたり、規定のページにおさめるため、分量を減らさざるを得ませんでした。本筋に影響のない範囲で、いくつかのエピソードを泣く泣く削ぎ落としております。

 それでも本当にぎりぎりでした。書籍版『炭酸水と犬』に目次さえないのは、そのためです。

 13万字の『アパートたまゆら』ではそのような改稿は必要なく、書き下ろし番外編まで付けるゆとりがありました。


②読者選考期間中に完結ボタンを押そう


『炭酸水と犬』がカクヨムコン4で結果を出せなかった要因のひとつに、応募時点で完結から半年も経っていたことが挙げられると思います。

 2018年6月に完結ボタンを押し、12月に参加するまでには、既にたくさんの★をいただいておりました。


 しかし残念ながら、カクヨムコン読者ランキングに反映されるのは選考期間中に投じられた★の数のみです。

 多くのユーザーが参加したくさんの作品で賑わうカクヨムコンの開催期間中に★をいただくためには、その時点で作品がホットな存在感を放っている必要があります。


 また、完結ブーストと呼ばれるものとうまく組み合わせるのが効果的になってきます。

 完結済み作品でないと読まないという方々は一定層いらっしゃいます。

 それならば、選考期間中、あるいはランキング設置の前夜に完結するのが最適と考えます。


 前回の反省を生かし、『アパートたまゆら』では連載がうまく年末年始に終わるよう更新ペースを調整しました。

 年明けにうっかり人生初のインフルエンザに罹り、家族と隔離してもらって布団にくるまり、がくがく震える指で番外編の「開く」を執筆したことは忘れられません。


 完結ボタンを押したあと、リアルタイムで応援してくださっていた読者様や、「最近完結した作品」から来てくださった方々から、本当にたくさんの★をいただき心が震えました。

 さらに、インフルエンサーでいらっしゃる真乃宮さん(勝手に登場させちゃった…)が最高のタイミングでバズりツイートにぶら下げてご宣伝くださったおかげで、カクヨムの存在さえ初めて知ったというような新規の方々からもびっくりするほど多くのご感想と一緒に★をいただくという僥倖を得ました。

 アカウント作成や★評価システムについてまでセットで詳しく宣伝してくださったのです。なんという神でしょう。最敬礼。


 経験したことのないような通知の勢いに、こ、これは……1位にならなきゃおかしいんじゃないか……? と震えながら夫とともに0時のランキング更新を待っていたところ、本当に1位になっていたのでした。


 作品そのもののクオリティを引き上げるのが大切なのはもちろんのこと、完結のタイミングは本当に重要! 基本中の基本! 早すぎるのはもったいないよ! というお話でした。


③見直しに時間をかけよう


 これはカクヨムコンに限らない話ですが、「推敲には執筆の3倍の時間をかけよ」というプロ作家の言葉を聞いたことがあります。

 3倍はさすがに大変かもしれませんが、でも見直しは本当に本当に大切です。

 誤字脱字や理由なき表記ゆれ、整合性のつかない部分は本当にないでしょうか。


 基本的に紙書籍ばかりを読むわたしも、好みのweb作品を探しにカクヨムという大海にあてもなく乗り出すことがありますが、せっかくあらすじがおもしろそうでも、誤字脱字や語法文法の誤りがあまりに多いとやはり、回れ右してしまいます。

 そんな理由で新規読者を逃すのは本当にもったいない。言葉に対するこだわりがそこまでない人なのかな、仕上がりも雑なのかな、と思わせてしまったらやっぱり損です。機会損失にもほどがあります。


 ちなみに書籍化作業中、ゲラになった『炭酸水と犬』を読み返していたら、誤入力の予想外の多さに気が遠くなりました。

 こ、こんな雑な文章に★★★や特別賞をいただいてしまったのか……と心から反省しつつ、カクヨム版もしれっと修正しました。

 ゲラだけでも3回以上読み返し、校正さんさえ気づかなかった間違いにも気づいて冷や汗をかいたりもしました。

 どんなに自信があっても、絶対に絶対に、セルフ校正を3回はかけてほしいです。

 応援してくれる家族や友人がいれば、第三者目線で読んでもらうのも手です。



 ここまでお読みくださりありがとうございます。言わずもがなの事柄ばかりだったかもしれませんが、少しでもお役に立てますように。

 次回は中〜上級編をお送りしたいと思います。需要があるといいな。

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