第5話 愛しい人への遺言
【やあ、たかくん、元気そうだね】
画面の中の咲さんは、優しく語りかけてくる。
【たかくん、すっかりおじさんだね】
(咲さんは、変わらないね)
【私は、もうこの世の住人じゃ、ないからね】
(僕の言ってることがわかるの?】
【わかるよ、たかくんの思っている通りに話しているから、だいたい当たってるよね?】
(ああ、ビンゴだよ)
【ようやく、これを見つけたね。時間かかりすぎ】
(普通は、わからないよ)
【かもね・・・】
(ああ)
【では、早速本題ね】
咲さんは、真面目な表情となった。
【まず、私が自殺した理由・・・】
(知りたくないと言えば、ウソになるね)
【うん、これだけは、教えておくね】
(うん)
【そんな、悲しい顔しないの】
見えてるのか?
【私ね、もう長くない命だったんだ】
(初耳だよ)
【でもね、死に対する恐怖はなかった。神様も、恨まなかった】
(強いんだね)
【そんなことはないよ。私はとっても弱い。本当に強ければ、自ら命を絶たないよ)
(なら、なぜ?)
【私の、死因は聞いてるよね?】
(うん、服毒だったよね)
【うん、お使者さんのいいつけを守らず、必要以上に飲んだみたい】
(でも、どうして?)
【君の夢を見届けたかったでは、だめかな?】
(えっ】
【私は、君の事が好きだった。でもそれは、恋でも友達としてでもない】
(なら、どういう意味?)
【ファンでは、だめかな・・・】
(ファン?)
【うん、君は私と違い、自分と言う物を持っていたから・・・】
(僕には、そんなもの・・・)
【君は、自分で自覚がないだけで、とても素晴らしいんだよ】
(素晴らしい人が、母や祖母を憎むと思う?」
【それは、お父さんをひとりにしたくなかったから・・・違う?】
(ビンゴだよ)
【私も、探偵の才能があるのかな・・・】
(でも、これを撮影している時は、まだ生きているんだよね?)
【そうだよ】
(まるで、自分が死ぬのがわかっているみたいだね)
【これは、確かな物じゃないの?もし私が生きていたら、これは君は見なかったね】
(なら、どうして?)
【たかくんんは、鈍感だね】
(悪かったな)
【怒らない、怒らない】
悪戯っぽく笑う。
この時は、どっきりのつもりだったのかもしれない。
【たかくん、遅くなったけど、君に伝えます】
(なにを?)
<私、君の子供として、生まれ変わりたい>
ここで、ビデオが終わっていた。
知らない間に寝ていたようで、おばさんに起こされた。
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