05

「アメリア! アメリア! 起きろ!」

 激しく揺さぶられて、アメリアは目を覚ました。

 かずむ視界に、金色の月が二つ浮かんでいる。

「え……?」

 だんだん視界がはっきりしてきた。そこにはクロノスの顔があり、ハッとして身を起こした。

「ど、どうしたの?」

「いいから出ろ、少しまずいことになった」

 クロノスに言われてテントから出る。そこには仰々しいよろいを着た男たちがずらっと並んでおり、その中心に金髪の少年が立っていた。アメリアは思わずクロノスの背に隠れると、金髪の少年は苦笑して言った。

「怖がらせてすまない。私は決して怪しい者ではありません」

 少年の言葉を聞いて、アメリアは不安げにクロノスを見上げた。

 クロノスは黙って頷き、トーマスが言った。

「アメリアさん、フローディア様を起こしてもらえませんか? 私たちはテントには入れませんので」

「わ、わかりました」

 アメリアは言われた通りに、フローディアを起こして身支度を手伝った。

 テントから出ると、彼女は目を丸くして口を開いた。

「ウィリアム殿下でんか⁉」

「久しぶりだね、リヴィル男爵令嬢だんしゃくれいじょう。こんなところで出会えるなんて思いもしなかったよ」

 驚くフローディアに少年は淡く笑みを零した。

 ウィリアムという少年と彼女は知り合いのようで、アメリアはクロノスの服を引っ張った。

「誰?」

「この国の第二王子だ。第一王子の腹違いの弟、ウィリアム殿下」

「王子様…………」

 アメリアはウィリアムをまじまじと見つめた。

 王子様を見たのは初めてだ。金髪の髪は月に照らされて輝いており、とても優しい眼差しをフローディアに向けていた。

「ど、どうして殿下がここへ?」

 フローディアが聞くと、ウィリアムは静かに首を振り彼女の腰に手をまわした。

 それにトーマスは眉間にしわをよせていたが、クロノスが小突いた。

「少し二人きりで話をしよう……警護は任せたよ?」

「は!」

 二人がその場を離れて姿が見えなくなると、警戒した目がアメリアたちに注がれた。

 突き刺さるような視線にアメリアは萎縮してクロノスと背中で小さくなった。

「第一王子直属の近衛、トーマスだな?」

 前に出てきたのは坊主頭の大柄な男だった。顔にはいくつもの傷があり、眼光がんこうも鋭い。いくつもの修羅場しゅらばを潜り抜けてきた猛者もさとは、彼のような男を言うのだろう。

「此度のリヴィル男爵令嬢の護衛ご苦労であった。これからは我らが令嬢を護衛するにんう」

「それはどういうことですか?」

 トーマスが声を固くして言うと、男は続ける。

「アルフレッド殿下の捜索は打ち切りとなった。よって、リヴィル男爵令嬢との婚約は取り消しになる」

(捜索の……打ち切り……?!)

 アメリアは二人を見上げると、二人とも表情を崩さずにいた。

 張り詰めた空気の中で、トーマスが静かに口を開いた。 

「…………それで、なぜ第二王子の近衛である貴方たちが彼女を護衛するのです? 彼女はまだ第一王子の婚約者です。わざわざ第二王子が出向いて、ましてや彼女を護衛し、城に連れ戻す理由がどこにあるのです?」

 トーマスが怒りを抑えるようにいうが、言葉尻が強くなる。そして、さらに男を睨みつけた。

「それに、こんな早く王子の捜索が打ち切られるなんてどう考えても……!」

「ここらでドラゴンが飛んでいるらしいな、トーマス」

「!」

 それを聞いて、その場にいたクロノスもアメリアも驚いた。

「それも、隻眼せきがんで、金のうろこをした見事なドラゴンだとな」

「…………なぜ、貴方がそれを知っているのですか?」

 動揺を隠しきれないトーマスの問いに、重々しく男が口を開いた。

「アルフレッド殿下はその御身おんみをドラゴンに変え、姿をくらませた」





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