第56話
「アッ、私はね、鈴木萌子。」 話し掛けてきた娘が言った。此処では萌と 呼ばれている。 「私は和代。板倉和代って言うの。」 もう一人が急いで言った。此処では明美だ。 「ね~、マリンちゃんは何?」 「うん…。良いじゃん、そんなの!」 「でも知りたいな。」 「私達も教えたし、ねー教えてくれる?」 しつこいな。どうしたの?!そんなの、関係ないじゃん。普段は絶対に口をきかないクセに、何で急に本名なんて聞いてくるの?そんなの、大きなお世話だよ! リナはそう言ってやろうかとも思ったが、 陰険な奴等だ。そんな事を言って怒らせるのも良くないな、そう思った。 「田村。」 「エッ、田村?田村なに?」 二人が身を乗り出す様に聞いてきた。 「田村…ゆり。」 「田村ゆり?!」 二人は顔を見合わせた。 「なら、違うの〜?」 小声で萌が明美に言った。 「本当に、田村ゆり?」 「うん、そうだよ。どうして?」 リナはわざと、強く言った。 「ううん、何でもない。」 又二人で話す。 「おかしいね?」 「うん、高木リナじゃないね?」 「!!」 リナに、自分の名前が聞こえた。今、確かに自分の名前を言った筈だ。 「ねっ?高木リナって何?誰の事?」 止めようかと思ったが、それでも聞いてしまった。返事は無い。 「何でそんな事言ってるの?」 二人が驚いている。自分の顔をジーっと見ている。怪しんでいるのだ。 リナも二人を見ながら何か言うのを待ったが、もう石の様に黙っている。返事をしない。自分がそうだと確信している様だ。仕方無いからリナも諦めて、横を向いた。二人は顔を見合わせながら黙っている。後で、千帆に報告するんだろう。
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