第43話

「やっと出て来たか。」          吉永は凄い眼つきでリナを見た。     「良いか。お前に教えてやろう。お前など、本気で相手にすると思うか?お前など、只 可哀想だから相手にしてやっただけだ。  分かったか?!」            リナは驚愕した。           「な、何言ってるの、吉永さん?」    物凄くショックだ。そして、皆が聞いている。恥ずかしい。            「だからお前など、可哀想だから優しくしてやっただけだと言っているんだ。だから相手にしてやっただけだ。自惚れるんじゃない!誰がお前など本気で相手にすると思うか? ふざけるんじゃあ無い!分かったか。そう言う事だ。」                そう言うと吉永はリナから目を離し、出て 行こうとした。直ぐ側の、二人でくっついている女の子達を見た。物凄く嬉しそうに  自分を見ている。見下して、ざまあみろ、と言う表情だ。彼女達はいつも千帆と親しく 話したり、自分達より少し器量がマシな  千帆を持ち上げている連中だ。だからリナは 直ぐに目を移して見ない様にした。    吉永がドアへとゆっくりと数歩進んだ。リナは悲しみの感情と共に、ムラムラと怒りが湧いた。                  「何言ってるんだよーっ!!子供を産んで くれって頼んだクセに!」        周りが驚いている様だ。吉永が振り返り、 リナを凝視した。怒りながらも、恥ずかし そうな表情が垣間見える。        「私はそんな事は言っていない。」     リナは又腹が立った。今度は嘘?!   「言ったじゃん!自分の子供を産んで   くれって!」              吉永の返事が直ぐに返って来ないから丁度 良い。そのまま続けた。         「自分は子供がいないから、産んでくれって。自分と私の子供なら良い子供が産まれるって。背が高い、カッコ良い男が産まれて、それでその子を将来、警察に入れるって!警察のトップにするって!女だって良い。女でも入れる、じゃなきゃ、良い仕事に着かせるって。」                 リナはまくしたてた。          「何を馬鹿な事を言っている!頭が可笑しいのか?!」               「どっちが可笑しいんだよっ!だから私も 最初は凄いびっくりしたよ。だけど、じゃあもし子供が私みたいで、外人みたいに見えたらどうする?嫌でしょうって聞いたら、そんなの気にしない、関係無いって。東京のアメリカンスクールに行かすから良いよって。 それでアメリカの大学に行かせて、向こうに住む風にすれば良いんだって。それで、たまに会いにいけば良いんだって、そう言った じゃん!!」              リナは興奮していた。大沼の顔をチラッと 見た。凄く驚いた顔だ。小杉を見た。やはり同じ様な表情だ。ママは自分の斜め後ろだから分からない。             だが、自分と吉永を抜かした他の8人は、皆とても驚いている様子だ。        

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