第25話
リナは吉永を、そこからすぐ近くにある お店、バーへと連れて行った。階段を降りる。中へ入る。余り混んでおらず、お客は チラホラしかいない。カウンターがあり、 中には若いバーテンの男の子がいる。そしてビリヤードの台が二台あり、どちらも若い男の子達がビリヤードを楽しんでいた。壁にはテレビがあり、そこで映画、バックトゥザフューチャーを流していた。 「どう、ここなら落ち着くでしょ?さっき より全然静かだもの。」 「そうだね。」 「ここは何度か来た事あるけど、いつもそんなに混んでないんだ。ねー、吉永さん、何 飲む?」 「僕は何でも良いよ。」 「そう?じゃ、なんか買って来るね!私が 払うから!」 リナはそう言うと、ジントニックのダブルを二つ買って戻った。 「ハイ、これジントニック。」 「ありがとう。」 「どう?」 「うん、悪くないよ。だけど、強いね。」 「えへへ、ダブルにしたから。私、いつも こういうの、ダブルなんだ。だから吉永さんも、一応同じのにしたの。駄目だった?」 「駄目じゃないけど、僕は普通で良いよ。」 「そう?分かった。」 そうしてアッと言う間に飲み干した。吉永も飲み終わりそうだ。 「待ってて。又なんか買って来るから。」 リナは立ち上がって、又買いに行く。今度はマルガリータだ。 「吉永さんのは普通だから。私はダブルだけどね。」 吉永はリナが美味しそうに飲み、グラスの周りに付いている塩を舐めながら、「これが美味しいんだよね、マルガリータは。」と言っている顔をしげしげと見て、聞いた。 「リナちゃんはお酒があんまり飲めないって言ってたけど、違うんだね?」 「エッ?あぁ。」 「だってお店でもいつも全然飲んで無いものね?」
「あぁ、あれは…店では仕事だから。だから毎日お酒なんて飲んでられないから。私、本当は結構飲むから、そんな事毎日やってたら身体がおかしくなっちゃうもの。だから お店ではみんなに飲めないって言ってるの。でないと、飲めるの分かっちゃうとしつこく飲ます人もいるから。」 「ふーん、そうなんだ。」 「うん、そう。さっ、吉永さん、もっと飲んで!さっきのお詫びにもうここは私が奢るから!」 「いいよ、リナちゃん。」 「ううん、奢らせて。私だって今日はそれ位持ってるから。」 リナはそういうと、又立って買いに行き、直ぐに戻って来た。 「さぁ、今度はグラスホッパーだよ!これ、前に飲んだんだけどどんなだったか忘れちゃったー!だから又飲みたくて。だけど、不味くなかった筈だから。」 そう言うと、吉永の分を彼の前に置いて、 自分は嬉しそうにグラスを口へ運んだ。吉永も飲む。 「どう、不味くないでしょ?」 「うん、不味くないよ。」 「良かった〜!」 そんなこんなでリナはかなり酔って来た。「なんか酔って来ちゃった。最近殆ど飲んでないからね。久々だもん!だけど、まだ大丈夫だけどね。」 確かに具合は悪くなさそうだ。だけどもういい加減で止めさせた方が良いな、吉永はそう思った。幾ら強くても、悪酔いしたら大変だから。そして、又買いに行こうとするリナを止めて、しばらく普通に話した。ビリヤードはできるのかと聞いてみた。 「うん、一応できる。」 「そう?やってみる?」 台が一つ空いていた。 「ううん、いいよー。だって上手くないもの。」 「でも、僕はリナちゃんがやるのを見てみたいな。」 「じゃ、吉永さんもやる?」 「僕はいい。」 「何で?」 「したことが殆どないからね。さっ、リナちゃん、早くやって見せて!」 そう言ってリナをビリヤードの台へ連れて行き、お金を払うと、リナは玉をセットした。「なんか恥ずかしいなぁ。」 そう言いながらも、狙いを付けると、ポーンと白い玉を突いた。玉は勢いよく転がり、他の玉に力強く当たる。一斉に玉が色々な方向へと転がり、一つが穴に落ちる。 「アッ、入った!」 嬉しそうにリナがはしゃぎ、又玉を付く。今度はたて続きに玉が二つ、違う穴へそれぞれ落ちる。 「うわぁ、やった〜!やっばりお酒飲んでるから調子良いや!」 吉永が観察している。それに気付き、やるかと聞いた。吉永は首を振る。リナは又玉を 打つが、今度はどれも落ちない。 「あ〜ん、失敗!」 そう言うと、吉永の方へ駆け寄った。 「吉永さん、ズルいよ〜。吉永さんもやって見せてよー!」 大分酔ってるな。吉永が言った。 「僕はいい。さぁ、そろそろ出ようか。」 時間も遅くなってきていた。 「もう?」 「うん、そう。」 吉永はリナを促して外へ出た。リナはフラフラしながら歩いた。そして二人は山下公園へ行った。ベンチに座る。 「やっぱり外の空気は気持良い!」 「リナちゃん、大丈夫?」 「うん、平気。」 「前の、おでん屋の時よりは全然大丈夫みたいだね。」 そう言われると何だか恥ずかしくなりながらもおかしく感じて、リナは笑い出した。
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