四話 恐怖の共同作業
次の日から、学芸会の練習が始まった。緊張していた。どんな感じなんだろう。内容とかどうでもいい。変なことさえなければ。そう思っていた。
前でも言ったように僕の場面は3場面だ。自分たちの出番を待つためだけの場所がある。そこから、2つのスポットライトの場所はよく見える。学芸会の練習当日の1場面が終わった。次の2場面の時、僕は恐る恐る1つ目のスポットライトの場所を見てみた。仲の良い女子二人がただ普通にスポットライトを動かしていた。
「肝心(かんじん)なのはこっちじゃない。もう一つの方だ。」
すっともう一つのスポットライトを見てみた。すると誰もいない。なんでいないんだろう。そう思いスポットライトらへんのあたりを見回してみた。すると、スポットライトのすぐそばに椅子が置いてあり、そこに美香と和樹が座って仲良く話していた。
「何仲良く、くっついてしゃべってんだよ、まじかよ。てか何でスポットライト やってねえんだよ。これ終わったんじゃね。」
そう思っていた。近くにいた人に聞いてみた。
「あー。あっちのスポットライト故障してるらしいから。」
「故障してんのかよ。なんでよりによって美香たちの方なんだよ、仲良くなって ちゃうじゃんか!」
心の中で叫んだ。
すると、自分の出番が来た。出番なんてどうでもいい。みんなは、セリフを間違えないように緊張してカクカクしていた。でも僕だけ舞台に立っても、スポットライトの方ばっかりを見ていた。
「おい!しっかりしろ」
何度も先生に言われた。
「あ すいません。」
こっちの状況分かっていってんのかよ。そう感じてた。まぁしょうがないんだけどね。
あっという間に自分の出番は終わった。そしてまた僕の演技が終わっても4場面、5場面と続いていくので、ずーっとスポットライトの方を向いて。あ、笑った。あ、近づいた。あ、話が終わった。とか、ずっと思ってた。今思うとすごく気持ちが悪い。何度か、広海から声をかけられたらしいけど、まったく僕は気づかなかった。昔の僕はあたりまえか?おかしいのか?気づかないよね
こんな日が何度も何度も続いて行った。地獄だ。こんな目に合うなら、両想いじゃなくていい。片思いのままでよかった。いや、もう今も片思いなのかもしれない。どんどん僕の頭はこんがらがっていく。
数日後・・・やっとスポットライトが治った。
「よしよし。これで話すこともなくなるな。」
そうほっとした。でもそんなことはなかった。
スポットライトを二人で動かすということは、それなりに近づかなければいけない。たとえば、美香が
「あれ スポットライトうごかない 助けて―」
「しょうがないな 待ってろ」
「和樹君・・・。」
とか言って、和樹にとって最高の展開になったらどうしようと思っていた。
5場面のクライマックスの時。スポットライトを大きく動かし、盛り上げていくシーンがある。その時に僕にとって一番苦痛な場面であった。
ただでさえ重たいスポットライト。途中まではちょっと手を放したりしても、頑張れば何とか動かせる。でも、大きく動かすとなると、二人で息を合わせて、「せーのっ」って感じで動かさないと動かせない。スポットライトの大きさは長細くて、長い鉄火巻きみたいな形だった(マグロの部分から光が出る感じ)。だから左右に分かれて動かそうとしても動かない。
~再現~(スポットライト)☐☐☐☐☐←スポットライト
上 人↑
に 光← ☐☐☐☐☐☐ こう人が立って動かしても動かない
動 人↑
か
す ↑↑
光← ☐☐☐☐☐☐☐人人 重なって動かさないと動かせない
説明は難しいけど、とにかく、上にある感じで重ならないと動かせないわけです。なのでその瞬間だけバックハグみたいな形になってしまう。その状態が苦痛で苦痛で仕方がなかった。
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