第28話 旭vs自称イケメン
俺と自称イケメン君はコロシアムの中央で対峙する。
イケメン君の表情が若干強張っているが……自業自得だから弁解はしない。
「さて、俺のレーナとリーアを仲間にするっていうふざけた意見を取り消すなら、まだ許してやるが……?」
俺の言葉にイケメンが吠える。
「何をバカなことを言っている!さっきの戦闘で俺の女達を守ってくれた防御壁を展開できたのも、ゼウスのおかげなんだろう!?そんなのはお前の力とは言えない!!」
……いや、ゼウスの結界はあったが、あれは俺の魔法なんだけどなぁ……。
とことん人の話を聞かないイケメンである。
こんなんでよく女性を落とすことができたな。
あれか?あの女性達が面食いなだけだっただけか?
「ミナト様……また暴走してらっしゃいますわ……。あの人は自分がこうだと思ったら、なかなか意見を変えませんの」
「えぇ……。それってご都合主義思想ってこと……?お姉さん達よくそんな人を好きになったね……。うん、パパがどれだけ素敵な人だったか改めて理解したよ」
「レーナの言う通りね……やっぱり男は顔より中身よねぇ……。私だったらあのイケメンの近くにいるだけで寒気がするわ……」
ステージ外ではレーナとリーア、イケメン君の女性陣が会話をしている。
……やっぱり自分が正しいと思い込んで暴走するタイプか。
そう言うタイプってかなり面倒なんだよなぁ……。
レーナとリーアが面食いじゃなくてよかった。
そんなことを考えていたら、女性陣の会話がヒートアップしていた。
「そちらの殿方の中身が良かったとしても、見た目がおじさんではないですか!そんなんじゃ夜は淡白なのでしょうねぇ。ミナト様は平均男性よりも大きい12cmですのよ!顔もよくて大きいとかいい男の象徴でしょう?」
「え……?たったの12cm?確かにこの世界では大きい方なんだろうけど……パパのを知った私達からしたらそんな粗末なもので満足できるの?っていう感じなんだけど……」
「レーナ、それを言っちゃだめよ。このお姉さん達は井の中の蛙……。狭い世界しか知らないんだから」
「な……!?で、ではあなた方の大切な人のサイズを教えてみなさいな!…………ふむふむ……っ!?まさか……ありえませんわ!!」
「ね?それを聞くとどれだけ粗末かわかるでしょ……?」
「い、いえ!男は耐久力が大事ですわ!ミナト様は20人を相手にできるほどのお方!それを30歳に近い男ができるわけありませんわ!」
「ねぇ……さっきからパパのことおじさんおじさんって……。今ここで人生終わりにしたいの?」
「ひっ……!?でも事実でしょう!?それともなんですか!持久力もチートだというのですか!」
「当たり前でしょう?あまりお兄ちゃんをバカにしないでくれないかしら?お兄ちゃんは私とレーナの二人掛かりでも2日は連続でできるわ!」
……ちょいとレーナさん?何について暴露してるんですかねぇ?
それでもってリーアもドヤ顔で見下さないの。
サイズを知られるのってかなり恥ずかしいんだぞ?
……まぁ、この世界の平均が12cm以下っていうのにも驚きなんだが。
というか、女性の方が下ネタで盛り上がるのってどうなの……。
規制は怖い。
俺のサイズや持久力を聞いたイケメン君の女性達は熱っぽい視線を俺に送ろうとするが、レーナとリーアの【狂愛】のオーラに包まれ、うずくまってしまった。
あー……これイケメン君の株が下がっていくやつだな。
イケメン君の顔に涙が浮かんでいるようにも見える。
……ドンマイ。
「クッ……!あの子達は君に騙されているに違いない!やはり、俺の仲間になった方が幸せになれるに決まっている!!」
……イケメン君が意味不明なことをわめき出した。
俺の恥ずかしいところを暴露してドヤ顔しているレーナとリーアのどこをみてそう思ったのだろうか?
「……うわぁ……あのイケメンさんの言葉……気持ち悪ぅ……。見てよ、レーナ。私の肌鳥肌立ってる……」
「リーアもそうなの……?よくもまぁあんなに気持ち悪い言葉を言えるよね……」
レーナとリーアはお互いに腕をさすさすしている。
イケメン君の言葉がよっぽど気持ち悪かったらしい。
そんな2人を視界の隅に置きつつ、イケメン君を睨みつける。
「……おい、誰の仲間になった方が幸せになれるんだ……?いい加減、ふざけたこと抜かしているんじゃねぇぞ?」
「ふ、ふん!事実だろう!君みたいなおっさんといるよりは俺の方がいいに決まっているだろう!」
……ぷっちーんときた。
相手のことを考えず、自分勝手な解釈をして相手に迷惑をかける……。
俺が1番嫌いとしているタイプだ。
体の内側からどす黒い感情が溢れてくる。
『……主?お、落ち着いてくだされ……?殺気がこちらまで溢れてきておりますぞ……』
「…………(ガクガクブルブル)」
……ん?ゼウスとハイエンジェルが震え上がっているな。
だが……落ち着くのは無理だわ。
あの自称イケメンを叩き潰したいんだ。それが叶うまでは落ち着けるわけもない。
「……ねぇ、リーア。パパが怒っているのって私達を失うと思ったからだよね?」
「それしか考えられないよねぇ……」
「「やっぱり
レーナとリーアがキャーキャー騒いでいる。
やはり天使だな。こんな俺の天使を奪おうとするとは……絶対に許さん。
「黙りこくってどうした!?来ないならこちらからいくぞ!【身体能力強化】!そして……魔剣グライム!俺と一緒にあいつを倒すぞ!」
俺が怒りに震えていると、イケメン君がスキルを使用して魔剣を召喚して切り掛かってくる。
というか、Cランクなのに魔剣を持っているのか。
「魔剣には驚いたが……遅い。もっと本気で攻撃してこい。じゃないと傷すら与えられないぞ?」
まぁ、攻撃は当たらないんですけどね。
俺の敏捷値は5000あるのだ。
相手の攻撃など時間が止まったように見えるので、避けることに労力を使うこともない。
「……ハァッ!クソッ、なんで攻撃が当たらないんだ!こっちはスキルで能力を底上げしているんだぞ!?」
「能力の底上げねぇ……?俺から見たら止まったようにしか見えないんだけどなぁ」
イケメン君の攻撃を躱し続けていると、女性陣の方から会話が聞こえてきた。
いや、集中していないわけじゃないぞ?
攻撃があまりにも遅すぎるから、周りの声とか聞いているのだ。
「……ねぇ、貴女達の大切な人は勇者か何かですの……?」
「んぅ……?パパは勇者なんかじゃないよ。敏捷値は5000あるらしいけど、他のステータスの中で最も低いし」
「レーナの言う通りね。お兄ちゃんの本当の強さは魔法攻撃だし」
「……5000で最も低いってどんな化け物なのですか……」
イケメン君の女性達が残念な視線を自分の男に向けている。
まぁ、リーアの言う通り俺の本領は魔法攻撃だ。
そろそろ攻撃を避けるのも飽きてきたから、攻撃に転じるかなぁ。
「じゃあ、今度は俺から攻撃を仕掛けるとするかな?お前は俺を本気で怒らせた。その罪を自らの身をもって償うがいい。さぁ、俺はこれから避けることをしないぞ?精々頑張って攻撃してくれ……【聖域】」
俺は【聖域】を展開し、イケメン君を葬り去る方法を考え始める。
「……くそっ!ここまでバカにされて後に引けるか!!……って、これはさっきの防御壁!?全然攻撃が通らないじゃないか!魔剣グライムの力を持ってしても傷つけられないなんて……!!」
イケメン君は攻撃が全く通らないことに慌てている。
いや、レーナとリーアの【終焉の極光】すら耐えるのだから、そんな魔剣で傷つくわけがないだろうに。
さて……、叡智さんや。この勘違い野郎を黙らせる魔法はないかなぁ?
あ、ゼウスが蘇生してくれるからそう言う魔法でお願いします。
ーーーー[疑問を確認。旭がそこまで言うとは珍しいですね。まぁ、あの男の言動には私も苛ついていたので最も酷い方法を考えましょう。……【魔法威力向上】を使って【永遠の
ふむ……神霊魔法ね……。
もしかして【終焉の極光】も神霊魔法なんじゃ……?
それなら【聖域】が壊されかけたのも納得できる。
じゃあ、その魔法を使うとしますか。
イケメン君が必死こいて攻撃してきている中、俺はゼウスとハイエンジェルにテレパシーを送る。
(今から魔法を行使する。神霊魔法らしいからゼウスは蘇生魔法を瞬時にかけられるようにしておけよ?周囲には被害がないようにしておく)
(主……主はどこまで行かれるのですか……。神霊魔法を使えるなんて普通じゃありえませんぞ……)
ゼウスが呆れているが……まぁ、それは俺に言われても困る。
さて、呪文を行使しますか。
「待たせたなぁ、自称イケメン君。お前に与える罰が決まった。……安心してくれ。死んだとしてもゼウスが復活させてくれるから」
「それを聞いて安心できるやつがどこにいるって言うんだ!!くそっ、ここは逃げるしか……!」
イケメン君が逃げようとする。
……させるわけがないだろうよ。
「じゃあ、自分の犯した罪を償ってくれや。ーーーー【魔法威力向上】を使用。神霊魔法【永遠の氷獄】!!」
俺は逃げようとするイケメン君に向かって魔法を唱える。
次の瞬間、イケメン君の体は突如現れた氷に覆われた。
さすがは神霊魔法。威力は絶大だな。
周囲の空気さえも凍りつかせんとする絶対零度がコロシアムの中に吹き荒れる。
これで対象以外には害がないのだから、改めて神霊魔法のヤバさがわかる。
「い……嫌ァァァァ!!ミナト様ぁぁぁぁ!!」
イケメン君の女性陣から悲鳴が上がる。
氷に覆われた瞬間に彼の命が消滅したのは見ただけでもわかるからなぁ。
ゼウスが急いで蘇生魔法を使用する。
「……グッ!?お……俺は一体……?」
おぉ、生き返った。
さすがはゼウスだ。神霊魔法ごと解除してイケメン君を蘇生させた。
『……あ、主。次からは神霊魔法は控えてくだされ……。我の全力でもなんとかって言うレベルでしたぞ……』
……なんかごめん。
そんなに強力な魔法だったのね……。
神霊魔法を使った相手を蘇生することはもうないと思うから許しておくれ。
「よかったなぁ。ゼウスが蘇生してくれたおかげで無事に生き返ることができて。……で?この勝負は俺の勝ちでいいんだよな?流石にもうあんなふざけたことは言わないよな……?」
俺はイケメン君に笑いかける。
笑顔ではなく黒笑だ。
脅しの意味も兼ねているが……はたしてあの鈍感なイケメンは気付くだろうか。
「あ……あぁ。失礼なことを言ってすまなかった……。実力差を見極められていなかったのは俺の方だった……。だ、だから命だけは……!」
イケメン君は泣きながら俺に謝罪をしてくる。
死を経験しただけあってか、素直に自分の非を認めた。
うんうん、最初から認めていればよかったのだよ。
そうすれば死を経験することもなかっただろうに……。
「パパっ!」「お兄ちゃんっ!」
レーナとリーアが俺のところに駆け寄ってきた。
2人とも興奮したかのように頬を赤く染めている。
「パパッ!あの魔法何!?こっちまで冷気が伝わってきたよ!?」
「お兄ちゃん……あんな魔法も使えたんだねぇ。お兄ちゃんに勝てる人なんて魔王くらいじゃない?」
「どうだろうなぁ……?俺より強いやつなんてたくさんいるんじゃないか?」
「「それはない」」
そんなきっぱり断言しなくても……でも可愛いから許しちゃう。
「な……なんなんだこの現状は!?」
レーナとリーアに癒されていたら、不意にコロシアムの外から叫び声が聞こえた。
はて、誰か来たのだろうか?
俺が視線をコロシアムの外に向けると、そこにはルミアと見知らぬ男性が立っていた。
……誰?
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