【ラブコメ/高校生・桜花シリーズ】桜花は祝福の乱舞
あたし、ずっと見てたのよ。
ああ、そうなの。じゃあ、まだ知らなくて当然かしらね。
とにかく、オウちゃん――あたし、彼のことそう呼んでるの――はあたしでもぞっとするくらいインパクトのある容姿をしてるの。ちっちゃい頃からそうなのよ。年々あの子の顔は迫力を増しているわ。
でもねー。心はとっても優しいのよ。
あたしもさ、よく相談にのったもんよ。破壊神みたいな顔して、中身はハムスターみたいなんだもの、「ほらほら、笑いなさいよ」なーんて励ましてたけど――まあ、笑っても怖いけどさ――まともに友だちも出来ないの。かわいそうでしょう?
それでも十二才頃までだったかしら……そうね、ちょうど満開になってたから、あの子たちが小学校を卒業した春ね。それまでは、あの子にも好いてくれる幼馴染がいたの。名前はサキちゃんっていう女の子よ。
そうよぉ、とっても可愛い幼馴染の女の子がいたのよ、オウちゃんにもさ。
あ、オウちゃんは男の子よ、わかってたかしらね。すんごい顔が怖い男の子よ。もうねー、あたしたちも男女の幼馴染ってだけで、こう、なんつーの、はしゃいじゃうわけよー。
お年頃のときはさ、ギクシャクしちゃうとかさー。でも、なんだかんだでお互い意識し続けて結婚までしちゃったら、もーう、最高じゃなーい。あたしも張り切ってお祝いするわよー。散らしまくるわよ、ぶわあっと花吹雪しまくるわよー。
それがねえ、サキちゃんは引っ越しちゃったのよー。そうそう、小学校卒業と同時にねー、前はあそこの団地、ほら、見えるでしょ、あそこよ、あのボロけた団地よ。あそこにねー、ふたりとも住んでたんだけど、バイバイってわけよー。
でもね、四年後に再会する約束をねー、ふたりはしたわけよ。
え、なんで四年後かって? あんた、四年に一度満開になる桜があること知らないでここまで来たわけ。なーによ、ばっかねー。有名じゃないのー。もうっ、失礼しちゃうわ。
とーにかくね。ここで、桜の木の下で約束したの、「四年後に会いましょう」って。あたしはバッチリ見てたわよー。ロマンチックよねー、片方は顔が爬虫類みたいだったけどさー。まあ、ふたりの応援はしてたのよー。
それで、どーなったかって?
まあ、いろいろあったみたいよ。年頃ですものねー。
でもまあ、無事この間再会して、ふたりでデートに行く約束をしてたわ。途中で邪魔が入ったんだけど、結局は四人でデートですって。だーから、オウちゃんとサキちゃん、それに親友ふたりの四人よー。
えーとね、たしかハルキくんとヤヨイちゃんだったかしらね。ハルキくんは何度か会ったことあってね、まあ、かわいい顔した男の子よ。イケメンね、イケメン。ヤヨイちゃんのほうは、あのときが初めてだったんだけど、気が強そうな元気な子よ。
ヤヨイちゃんは桜花くんのことがキライみたいだったけど、そうそう、ここへ来たのも、オウちゃんとサキちゃんが再会するのを阻止したかったみたいなのね。でも、すぐあとを追って来たハルキくんが「ヤヨイーっ、好きだー!!」って叫んだことで、もうなんかどうでもよくなっちゃったみたいよ。
そうよそうよ、ヤヨイちゃんはハルキくんのことが好きだったみたいね。顔まっかにしてさ、「はああああ!?」って。なんかよくわかんないけど、あたしは告白しているところを、ばっちり目撃したわけよ。
こっちはオウちゃんとサキちゃんの告白シーンを待ってたのにさぁ、「そっちかーい」ってなもんよ。びっくりして盛大に花散らしちゃったわよ。まだ花ついてるからいいけどさあ。ほら、このへん、ちょっとスカスカしてるでしょう?
四年に一度満開になるじゃない、あたし。
ああそっか、あんた知らなかったわね。そうなのよー。普段はスレンダーなんだけど、四年に一度はグラマラスになんの、あたし。爆咲きよ、爆咲き。
で、ハルキ&ヤヨイよ。「桜花のことなんか、ほっとけー。おれにかまえーっ」って叫んでたわ。さみしがりみたいね、あの子。ヤヨイちゃんもまんざらでもないんでしょうよ、ぎゃいぎゃい怒鳴り返しながらイチャイチャしてたわよー。
こっちも幼馴染、あっちも幼馴染で、仲良くしてるみたいよ。まあ、オウ&サキはオトモダチのままみたいだったけどねー。四年ぶりに友情が復活して、あとはおいおい実っていくんじゃないのー?
オウちゃんもさあ、顔が怖いせいで勝手な噂が拡散しまくっててねー。苦労してたのよー。あたしの下にさ、死体埋めてるとか、やんなるわよ、あの子が生めたのは飼ってた金魚くらいよ、金魚。いい肥料になったけどさ。
それがいまじゃイケメンの親友とカワイイ彼女(候補)までいてさー。悪く言ってたヤヨイちゃんも根は良い子みたいでねー。なんだかんだでオウちゃんも仲間ができてよかったわよー。
見事どんでん返しってやつじゃない、ね、ちがう? ちがわないでしょ、どんでん返しよ、勝手な噂してバカにしてた奴ら、ざまーよ、ざまー。
でさぁ、四人ともあたしの下でデートの約束してたのねー。さくらフェスティバルがあるじゃない、そこそこ大きなイベントよー。ここらあたりで祭りといったら、春のさくらフェスか夏の七夕祭りくらいねー。秋と冬は何してんのかしら、あたしは知らないけど、盛り上がるのはこの二つねー。
それが、あーた。そう、あーたのせいよ。
中止っていうじゃないの、フェスティバル。
あんたもさー、タイミングってもんがあるじゃないの。今年、オリンピックもあんのよ、さくらジャパンとかいたはずよー。あたし応援してたのにー。どーすんのよー。花粉よりヤバいじゃないのー。
まーね、あの四人はここでお花見するみたいだけどね。いいのよー、四人だけのお花見なんだからー。お弁当食べるんじゃなーい? え、食べないのかしら、そうなの?? やだー、じゃあ何しにくんの、花見るだけ? だったら、盛大にふぶいちゃおうかしら、あたし、いっきに散ってやろうかしら。
あ。ほらほらほら、来たわよ、来ちゃった。
マスクしてるわ、マスク。あらー、オウちゃんはマスクしてても迫力あるわね。むしろ、魔王感が増してるわ、あれは遠出しないほうがいいわね、捕まるわよ、あの子。あたし見るだけで満足させてあげなくちゃね。はりきって散るわよー。
はあー、で。あんた、まだいんの? だめよー、居座っちゃ。ウイルスはあたし、お断りなのっ。さっ、行ったっ、行ったっ!!
よーし、あたし、素っ裸になるまで散るわよーーーっ!!!
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