(10)12月08日11時43分
街に出た。
信号待ちで車が前を通り過ぎる度に、もしもこれが突っ込んできたら、なんて気が気じゃなく、何度も彼女から「どうしたの、大丈夫?」と声を掛けられた。隠しているつもりなのだが、些細な態度の変化を彼女は見逃さず、それが嬉しい反面、占いなんかで右往左往する男だなんて知られたくなくて、結局は今までそうしてきたように、正直に話す事なく曖昧にはぐらかしてしまう。
その度に、遠くの方にチラリと覗く、あの猫の被り物。
…少しずつ近付いてきていないか?
いや、気のせいだ。
幻覚を見てしまうほどに、自分の心は弱かったのか。なら、なおさら言えない。みっともない姿を晒す訳にはいかない。誰だって好きな相手には良く思われたい。優しくて、頼りになって、しっかり者で、…あれ? 周りからそういうイメージを押し付けられたから、その通りにしていたんじゃなかったんだっけ? 違う? いや、違わない。本当の自分を見せても文句を言われるだけだった、だから、今の自分になった。だから? それが嫌で嫌で、やっと素でいられるんじゃなかったのか? 何故今また隠そうとしているんだろう? つまるところ、繰り返しているだけなのか?
結局、最初から、
自分の蒔いた種だった?
「悠一くん!」
声に、耳をつんざくブレーキ音が重なる。
体は、ちゃんと思った通りに、動いた。
大丈夫、
彼女だけは、助けられる。
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