(8)12月07日21時02分

 平日は学校で、放課後に近くの図書館で一緒に勉強をして、休日はデートで、日が暮れるまでが本当に短く感じる。彼女は文句も言わずに連れ回されてくれている。毎回、『迷惑でなければ』とか『他に用事がなければ』とお伺いを立ててはいるが、彼女はいつも『大丈夫』と答えるのだ。それが本心か、知る術はない。誘うのはいつもこちらからで、会い過ぎだろうかという自覚はあっても、断られたら我慢すれば良いかと、次の日も、そのまた次の日も、彼女が断らないのを良い事に。

 もしかして、自分もこんな感じだったのだろうか。もしそうだとしたら、…分かる訳がない。こんな風に、自分に跳ね返ってくるとは、思ってもみなかった。しかし、本心を知るには、直接聞く他なく、そこで何も言われなければ、一生分からないままだ。

 そうして、もしかしたら、きっと、

 スマホがぶぶっと震えた。

『明日は悠一くんのお家でデートにする?』

 彼女からの初めての提案に、ごろごろしていたベッドから跳ね起きた。すぐさま返信を、と親指が画面に触れたところでまたしてもスマホが震える。

『悠くん。明日、もう1度だけ話がしたい』

 …。

 苦虫を噛み潰すように、きつく瞼を閉じた。忘れて久しかった溜息が、唇の隙間から漏れる。

 ぶぶっ、スマホがまた震えた。

 メールの通知ではなく、しばらく閲覧するのを忘れていた、例のオススメ動画の紹介通知だった。問題を先延ばしにする悪い癖が、つい、3番目の通知をタップした。

 それはすがるような気持ちだったのかも知れない。解決策が、そこにある訳でもないのに。

 読み込みが終わると、ぱっとあの猫の被り物で顔を隠した男性が、画面の中をぱたぱたと駆け回る光景が映し出された。

『絶対に当たる! 明日の星占いも何と最終回!』

 中央で立ち止まり、泣き真似でもするように、大きな猫の瞳の部分に手を当ててみせる。が、すぐに両手を大きく広げて、

『だから最後の占いはドド~ン! と! よ~っく聞いてね!』

 最後の最後まで、無音なのにパフォーマンスと字幕だけでわちゃわちゃと騒がしい。憎めない動画だったのに最終回か、なんて思っていると、猫の被り物がずいと画面に寄った。

 間近で見たそれは、思いもよらず不気味だった。

 そして、

『ああ、何という事でしょう!』

 それから、

『君の大事なヒトが』

 続けて、

『明日』

 最後に、

『死んじゃいま~す!』

 …。

 …は?

『でもでも大丈夫! 君が助けてあげようね! 君はヒーロー、君のイノチで、君の大事なヒトのイノチを、救ってあげよう!』

「ーーっ……!?」

 動画はぶつりと途切れるように終わった。

 スマホが、また震える。

『会ってくれないなら、家まで行くから』

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