(4)11月21日20時44分

 あれから、ついつい例の動画を見るのが習慣になってしまっている。恐ろしい事に、ラッキープレイスとして提示される場所に、必ずあのがいるのだ。ただし、言葉を交わすまでには至らず、ただすれ違うだけ、ただ姿を見かけるだけ、なのだけれど。というか、それだけなら別段、教室でいつでも叶う事なのだけれど。

 それでも、教室以外で見かける姿は新鮮で、

 それは、うんざりする日々に少しだけ、でも確かに、活力を分けてくれるものだった。

 あのの周囲はいつ見ても静かだった。かといって孤独という訳でもないようで、そこそこ他のクラスメイトと交流している姿も見る。それでいて、耳障りな陰口やどろどろとした人間関係とは無縁そうで、

 ああ、あの傍でなら、心を押し隠したり、求められたイメージを演じたりせず、素でいる事を許されるんじゃないか。なんて。

 そして気付く。これも理想の押し付けなのではないかと。相手の事をよく知りもしないで、自分が得られないものを、勝手に求めたりなんかして。

 久し振りにまたあの深い溜息が漏れた。

 惰性で、スマホを手に取る。

 毎日見ているからか、最新の動画の1番上に、例の動画が更新されていた。

『明日の山羊座の運勢は! ワオ! ななななんと告白のチャ~ンス! お目当ての相手に甘~くささやきかけてみよう! ラッキープレイスは階段の踊り場だよぉ!』

「こ……!」

 思わずスマホを枕もとにぶん投げる。

 いや、いやいやいや! ない! ないから!

 でも、それなのに、何をこんなにドキドキしているのだろう。

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