(9)11月26日PM08:01
ほら! やっぱりおまじないのせいなんかじゃなかったんだ!
同じクラスになった時から気にはなっていたと、彼は少し気恥ずかしそうに答えてくれた。おまじないのタイミングが偶然重なっただけなのだ。誰も悪くない。何も後ろめたい事なんて、ないのだ。
「じゃ、また明日学校で」
「うん。……ごめんね、こんな時間まで外出させちゃって。やっぱり俺の方から家の人に一言……」
「い、いいから! じゃあねっ」
彼をその厚意ごと門扉の外へと押しやり、自分はさっさと玄関へ入る。
「勉強そっちのけで色ぼけ? 養われてる分際でいいご身分ね」
待ち構えていたといわんばかりに、そんな言葉が出迎えた。
幸せだった気分が、一気に
「遊び呆けるんなら、来月から小遣いなしね」
ムカムカとした気分が一気に膨らむ。
無視したまま階段を登る。
「勉強しないんなら、スマホも取り上げるからね!」
部屋に入る背中に、そんな金切り声が飛ばされた。
苛立ち任せに、扉を閉める。
口を開けば「勉強」「勉強」「勉強」! 自分だって学生の頃はろくに勉強なんてしてなかった癖に! ろくな大学も出てない癖に!
鞄からノートと筆箱を取り出す。ヒラリと1枚の紙が落ちた。拾うと、殴り書きのような乱れた文字で、
『ドロボー猫』
とだけ書かれてあった。
違う!
違う違う違う!
シャーペンを取り出し、ノートを開く。
どいつもこいつも、理不尽な事ばかりを言う! ノートを乱暴に2回突っつく。どいつもこいつも大っ嫌い! シャーペンをクルリと回す。そんな奴ら『全員消えちゃえ』!
書き殴ると、少し気分も落ち着いた。もう寝てしまおう。学校へ行けば、彼に会える。ネチネチ言う奴らにも、堂々としてみせれば良い。彼も守ってくれる。きっと。
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