(8)11月26日PM05:07

 用事があると言ってひとり、急ぎ足で家に帰った。またあの怖い取り巻き達に問い詰めらるのも嫌だったし、彼とまともに顔を合わせる事も出来ない。だって、向けられる笑顔も言葉も、受け取るべき相手は自分ではないのかも知れないのだ。…あのおまじないを、していなければ。

 ぶぶっとスマホが震えた。

『何か悩み事でもある? 俺には相談出来ない?』

 …いや、どうだろうか。分からない。聞いてみようか。いつから好意を抱いてくれていたのか。前に付き合っていた彼女とは、どうして別れる事になったのか。聞けば、安心出来るかも知れない。おまじないのせいではないと分かれば、誰にも後ろめたい思いをせずに堂々としていられるのだから。

『今から会える? いつもの公園で』

 それだけ返信して、部屋を出る。

 玄関で靴を履いているところで、後ろから苛立たしげな母親の声がした。

「あんた、ここ最近ずっと遊び回ってるけど、勉強は? 高校は義務教育じゃないのよ」

 聞こえない振りをして玄関を飛び出た。

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