(2)11月16日AM08:59

 結局、ろくにテスト勉強もしていない。憂鬱な面持ちで目の前に裏返しにして置かれたテスト用紙に、またひとつ大きな溜息を落とした。理系全般苦手だが、数学は特に苦手だ…。

「はい、では始めて」

 一斉に紙をめくる音が教室に響く。この緊張感も苦手だ。しかし今は現実逃避するスマホもなければ、授業中のようにぼんやりとただ無為に時間を消費する訳にもいかない。赤点でも取った日には、母親がどんなに怒る事か。怒られるのは嫌だ。かといってがむしゃらに勉強するのも嫌だ。あーあ、本当にあのおまじないで簡単に100点取れたら良いのに。なんて。

 1問目を解く。2問目、3問目、よどみなくシャーペンが動いていく。不意にその動きが止まったのは、答えに詰まったからではない。…逆だ。どれも、すらすらと答えが分かる。どれも「たまたま」覚えていた公式ばかりが当て嵌まるのだ。唇の端がひくりと動いた。まさかーー

(……まさか、だよね)

 小さく鼻で笑い飛ばす。そんな事、ある訳がない。それに、書いた答えがすべて正しいとも限らないし、覚え間違いや書き間違いもきっとある。そう思考しながらも、シャーペンを握った手はわずかに震えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る