11 それぞれのイクサをせよ
××××××××××××
初撃は捌いた。
ナガレはノックバックした勢いを借り、すぐさま遁走開始した。
『この場に及んで逃げるかッ!』
『大人しく
罵声が飛んでくるが意に介さない。ナガレは騎体を走らせた。
あちこちに火の手は上がっているが、まだ破壊されていない倉庫も多い。引きずり込んで分断する。二対一より一対一の方が分が遥かにいいのは自明の理である。
曲がり角で曲がり、グランドエイジアは加速する。すぐ袋小路。まず接近してくるのはノダチを持ったザフロ騎。追い詰めたと思ったか、やはり猛然と斬り込んできた。
『逃さぬ!
アイアン・カッターは瞬発的な出力に秀でている。スラスターを吹かしての斬撃だ。
グランドエイジアの恐らくは並の騎体よりずっと優れた電脳がそのタイミングを演算し、動きを読み切っていた。
――
勢い余って宙を泳いだようになるザフロ騎の背にナガレは斬撃を送る。
『させるかよ!
刃を阻んだのはウジマ騎が投げた槍だ。――
「チィーッ!」
ナガレは激しく舌打ち。やはり思うようには行かぬ。
『
体勢を立て直したザフロが大振りの一撃を見舞う。
『
そのタイミングに合わせてウジマが刺突を繰り出す。
グランドエイジアは二騎の直線上にあった。挟撃である! しかもナガレはそれを恐れていたにも関わらずまんまと追い込まれてしまった。いや、恐るべきはナカタニー二人のイクサ勘か!
ナガレのイクサ勘もこの時冴え渡った。グランドエイジアの腰部が唸りを上げて百八十度旋回する。
――
ナガレはそのまま回転の勢いを殺すことなく、グランドエイジアを独楽めいて旋回させた。スラスターが焚かれ、その炎を剣呑なものと見た敵騎が警戒を露わにした。攻撃の手が緩んだことで生じた間隙を縫って挟撃から逃れた。
「
独楽の勢いのままにグランドエイジアはカタナと鞘を以てウジマへ斬りかかった。――
PPPP...グランドエイジアが背後からの危機をアラートする。果たせるかな、ザフロ騎だ! ウジマへの深追いはやめ、ノダチを左に躱しざま、ナガレは回転の余勢も借りて斜めにカタナを揮う。刃はザフロ騎の左手指部を掠め、薬指と小指を奪った。
そのままグランドエイジアと二騎は睨み合う。
「フゥーッ……」
ナガレは息を吐く。危ういところだった。あと一歩というところまで追い詰めたが、同時に追い詰められたのは自分であったかも知れぬ。
挟撃を防ぎ得たことで全身の汗腺から冷たい汗が吹き出てきた。心臓の鼓動が耳にうるさい。
ともかくこれで仕切り直し。あれをまた繰り返さなければならないのか。
後部をちらと盗み見る。少女は何やら険しい顔をして端末を睨みつけていた。それに気付いた少女はナガレを叱りつける。
「こちらなぞ向くでない。わたしはわたしのイクサをしておるのだ、オヌシはオヌシのイクサをせい!」
ナガレはバツ悪く前を向く。
全く彼女の言うことは正論だった。彼女が何をやっているか薄々気付いている。電子戦。ナガレが介入出来ない領域だ。同様に、彼女もナガレのイクサ・フレーム戦に介入できない。第一、同じグランドエイジアに乗っているということは彼女の命を預かっているのと同義ではないか。そんな単純な事実すら忘れていた。
しかし、敵の戦法概要は引き出した。ナカタニーズ個人としてのドライバーの
こういった相手との対戦経験はナガレにはない。あるドライバーの方が少数に違いない。また、ナカタニーズはそのコンビネーションで多くの敵を葬ってきたことだろう。
この敵を倒すには、敵の想像を超えるしかないと思った。それが出来たのは〈ツムジ・ザッパー〉の
ふと思いつくことがあって、ナガレは少女に尋ねた。
「なぁ……ミズ・アゲハ、でいいのか? こいつの兵装一覧を出してくれるか?」
かっきり一秒後、サブモニタにグランドエイジアの兵装が詳細データ付きで並べられる。
ナガレは予想通りのものがあったことにニヤリとした――これで、奴らの想像を超えてやる。
「
今度はグランドエイジアが先手を頂戴する番だ!
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