第14話 決勝戦、前

 ここは代々木の体育館。渋谷区剣道大会女子団体戦が行われている。

「絶対に優勝して、スクランブル交差点で剣道着を着て、記念写真を撮るぞ!」

「おお!」

 剣道の高校の部ワールドカップなんかもいいな。

「渋谷高校は必ず1番になるぞ!」

「ワン!」

「ワン!」

「ワン!」

「ドキ!」

「ワン!」

「我々には渋谷の守護霊ハチ公がついているぞ!」

「おお!」

 全国、ご当地円陣なんかもおもしろいな。ラグビーのオールブラックスのカカ的なヤツ。

「やあ、渋谷高校剣道部の諸君。」

「寿先生。」

 寿先生は恵比寿高校剣道部の顧問である。

「アンディ先生はどうしたんだい?」

「実は教え子の女子生徒に手を出したのがバレて、懲戒解雇になりました。」

 チクる人間がいなければ、変態教師は複数の女子高生と3年間イチャイチャできるのだ。

「アンディ!? アンディ!? 私のアンディ!? うるうる。」

「彼女はなぜ泣いているの?」

「犯罪者アンディの被害者です。」

「そう、可哀そうに。」

「私だけって言ったのに!? うるうる。」

 一人の女子高生に手を出すということは、他の女子高生にも手を出しているということである。

「軽く遊んで捨てるつもりでした。だって俺は妻子持ちだもん。それに本命の浮気相手は女子大生のA子さんです。キャハハハハ!」

 アンディみたいな変態教師はたくさんいる。恥ずかしいから警察にいけないで、泣き寝入りしている女子高生は多い。親にも心配をかけてくないから、3年間、誰にも言えずに卒業するまでセクハラされ続ける。可哀そうな現実。

「なんだか話が脱線してしまったね。」

「いえ、いいんです。これでも恋愛モノですから。」

「あ、そう。じゃあ、決勝戦を楽しみにしているよ。この前の様にはいかないよ。うちには秘密兵器が加入したからね。」

「秘密兵器?」

 言うだけ言って、寿先生は去って行った。

「恵比寿高校のオーダー表をもらってきたわ。」

 剣道にオーダー表の交換があるのかないのか知らない。

「こ、これは!?」

 渋谷高校剣道部の面々は驚いた。

「いつもと違う!?」

 いつものお約束だと先鋒、次鋒は恵比寿高校剣道部員A、Bのはずだが、恵比寿高校は違った。

「先鋒がラブリー、次鋒がメアリー、中堅がユウリー、副将が渋井狸子、大賞が恵比寿高校剣道部員E。」

「まずい!? まずいぞ!? うちは普段通りだから楽子とドキ子は負けるとして、中堅から3連勝しないといけないのに、恵比寿高校は中堅と副将もキャラクターだ!?」

「副将の渋井狸子ってなによ!? 勝手に渋井を名乗らないで欲しいものね!?」

「待てよ!? 泪と結の名字は考えるのが面倒くさいから、魔法使少女の名字は渋井にしたけど、まさか!? 恵比寿高校にもいるのか!? 魔法少女が!?」

 渋谷高校剣道部員たちは恵比寿高校剣道部サイドを見つめる。そして決勝戦が今までの戦いとは比べ物にならないくらい過酷なものになると予想する。

「大丈夫。私が戦う時には私たちの勝ちが決まっているから。」

「ゆっくり紅茶を飲んでるな!?」

「ごめんなさい。今回は玉露なんですけど。おほほ。」

「お茶かよ!?」

 きっと結がコーヒーを飲む日もやってくる。

「問題は、どこで2勝して、結に繋げるかよ。」

「楽子とドキ子は負けるとして、やはり私と泪で勝つしかない。」

 渋谷高校剣道部に動揺が広がっていた。

「見ろ、渋谷高校剣道部の様子を。あいつらはアタフタしている。なぜだか分かるか? いままでCPUのなんたら高校剣道部員ABCDEとばかり戦ってきて、油断しているからだ。」

 寿先生は、恵比寿高校剣道部員たちに語る。

「あいつらは親切の剣道部。王者の我々は常に他行からマークされて分析されてきた。だから我々はマークの仕方も知っている。王者の恐ろしさを教えてやれ!」

「はい!」

 次回、渋谷高校と恵比寿高校の決勝戦が始まる。


つづく。

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