第291話、MID BOSS・『バシレウスルーム/KING or QUEEN』①/ブリュンヒルデの意志

 ブリュンヒルデは、考えていた。

 自分は、センセイを助けた『ブリュンヒルデ』だ。初期化されたcode00のヴァルキリーハーツを搭載され、躯体の名称をセンセイに名乗った。その時から、センセイとってこの躯体は……『意志』は、ブリュンヒルデなのだ。


『私は、ブリュンヒルデ』


 ブリュンヒルデは、身体中に絡みついたコードをブチブチと千切る。

 センセイが必要としているのは『私』であり、ブリュンヒルデではない。ブリュンヒルデと名乗るこの『意志』こそブリュンヒルデであり、ヴァルキリーハーツだとか、躯体とかは関係ない。


『センセイが来る……』


 センセイは、ここに来る。

 それだけで、力が沸く。意志の力がヴァルキリーハーツに伝わる。

 全てのコードを引き千切り、ブリュンヒルデは解放されたが、Type-KINGの腹の中と言っても過言ではないオストローデ王城の至る所からコードが伸び、ブリュンヒルデを拘束しようとする。

 だが、ブリュンヒルデはその全てを切り払った。


『Type-KING、及びType-QUEENを敵機と認識。破壊します』


 エクスカリヴァーンを手に、ブリュンヒルデは城を進む。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 やることは、実にシンプルだった。

 エクスカリヴァーンを振り回しながら進む。それだけでいい。

 城の中がType-KINGとType-QUEENの腹の中なら、メッチャメチャのギッタギタに破壊すれば、それだけで倒せる……そう考えたが。


『…………これは、自己修復』


 破壊した壁、砕けた扉、割れた壺やシャンデリア……ブリュンヒルデが破壊した物は、いつの間にか修復されていた。

 そう、城の中にある物全てに、修復用ナノマシンが通っている。

 分析すると、これらのナノマシンは改良が加えられ、ジークルーネ以上の性能を持つナノマシンだった。


『…………やはり、本体を』


 Type-KINGとType-QUEENを破壊するしかない。

 ブリュンヒルデは、エクスカリヴァーンを振り回しながら、謁見の間を目指した。

 最上階か謁見の間。まずは謁見の間を目指す。


『……!!』


 ここで、城の内部が変化した。

 コードが絡まり、まるで人間のような姿になったのだ。しかも手には鉄製の剣を持っている。

 ブリュンヒルデは、構わずエクスカリヴァーンで両断したが……。


『…………やはり、効かないですね』


 コード人間は、切られた部分からコードが伸び、あっさりと修復される。

 同様のコード人間が何体も現れ、ブリュンヒルデに襲い掛かってきた。

 

『…………』


 だが、この程度……ブリュンヒルデの敵ではない。

 謁見の間に向かって、コード人間を斬りながら進む。


 そして、謁見の間に到着した。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 謁見の間には、誰もいなかった。

 さすがに、堂々と姿を晒しているとは考えていない。周囲を徹底的にスキャンし、何か痕跡がないかと確認すると……。


『……これは』


 シュルシュル、シュルシュルと、謁見の間がコードで囲まれていく。

 脱出しようと振り返るが、扉はすでに無数のコードで覆われていた。試しにエクスカリヴァーンで斬るが効果はない。修復され、出ることができない。

 そして、コードが無数に絡みつき、床からコードの巨人が生えてきた。


『…………』


 コードの巨人は、巨大な手を振り下ろし、ブリュンヒルデを叩き潰そうとしてくる。だが、その程度の攻撃は当たらない……が。


『ッ!!』


 壁や天井から伸びるコードがブリュンヒルデに絡みつき、動きを鈍らせる。

 この程度のコードを千切るのは容易いが、目の前のコードの巨人が拘束された一瞬を狙って張り手をしてくる。

 結果、反応が送れたブリュンヒルデは壁に叩き付けられ、さらにコードにより拘束されてしまった。

 

『面倒な……』


 思わず愚痴ってしまう。

 攻撃力云々より、四方から伸びるコードがうっとうしくてたまらなかった。

 本体を倒さない限り、この攻撃は続く。そして、謁見の間にType-KINGとType-QUEENの反応は無い。


『…………最上層』


 ブリュンヒルデは、コードを引き千切り、エクスカリヴァーンを構えた。


『【乙女神剣エクスカリヴァーン・アクセプト】着装形態へ移行。【乙女剣エクスカリバー】・【女神剣カリヴァーン】展開……』


 着装形態へ移行。双剣を手にし、鎧を強化。襲い掛かるコードを、背中に装備した中距離光弾【ペンドラゴン】で迎撃、残りを双剣で叩き斬り、コードの巨人目掛けてブースターを噴射、一瞬で細切れにした。


『排除完了……これより、最上階に向かいます』


 ブリュンヒルデは、天井を見た。

 お行儀よくドアを開けるつもりはない。天井をぶち破り、Type-KINGとType-QUEENを破壊する。

 センセイが来る前に、さっさとここを掃除しなくては。


『排除します』


 ブースターを噴射、ブリュンヒルデは天井を突き破って飛んで行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る