第254話、守った約束

 ケートスを討伐し、真っ二つになった半身をウルスス・アークトゥルスに担いでもらい、海底王国ネプチューンを目指していた。

 というか、ウルスス・アークトゥルスがやばい。全長二百メートルはありそうなケートスの半身を軽々と担ぎ、先行する小型艇に付いていくんだもんな。

 ケートスの半身には肉食の魚が群がり、内蔵も半分以上が海中に落ちていく。今や肉と骨だけしか残っていない。

 俺は小型艇を運転しながら、後ろを振り返る。


「……わかっちゃいるけど、すげぇなぁ」

「ふん、あんなの肉の塊だろう」

「そうだけど、デカい……」


 ケートスの半身。

 シグルドリーヴァが真っ二つにしたんだが、当の本人は全く興味なさそうだ。ハイネヨハイネの隣に座り、目を閉じている。

 ハイネヨハイネというと、こいつも全く喋らずに置物となっていた。

 そして、レギンレイブはというと……。


「ひゃっほーっ!」

『きゅいぃぃぃっ!』


 リグくんの背に乗り、小型艇と並走していた。

 いや、リグくんだけじゃない。他にも数頭のシャチと、シャチ魚人たちが一緒にいる。ケートス討伐の報告のため、一緒にネプチューンに向かっているのだ。

 シャチ魚人たちのリーダーは、オルカさんだ。


「スクアーロ王への説明はオレに任せろ。というか、この残骸を見れば説明など必要なさそうだが……」

「ですね。でも、一緒はありがたいです。レギンレイブも楽しそうだし」

「そうかい、ははは!」


 リグくんは、レギンレイブを乗せて泳いでいるが、俺から見ても楽しそうに見える。すると、オルカさんが言う。


「おい、この鉄の乗り物もいいが、シャチの背に乗ってみるか?」

「え、いいんですか?」

「ああ。オレらの背でもいいが、あのお嬢ちゃんみたいに乗ってみるのも面白ぇかもな」

「おぉ……じゃあ、せっかくですし」

「…………っ」


 あれ、シグルドリーヴァが反応した。

 ああそっか、こいつ、リグくんの背に乗れなかったんだっけ。


「……不快な視線を感じるな」

「な、なんのことだ? それより、シグルドリーヴァ、乗りたいんなら乗ってこいよ」

「……海中での機動力として使えるかテストの必要があるな」


 そう言って、シグルドリーヴァは外へ。念願のシャチに跨がると、レギンレイブと競争が始まった……なにやってんだ、あいつら。


「お前はいいのか?」

「はい」


 ハイネヨハイネは座ったまま言う。こいつ、戦闘中も置物みたいだったし、本当に何もしない。まぁわかってたけどな。

 

 ネプチューンまでもう間もなく。ロキ博士の指定した日数まで残り

一週間……なんとか間に合いそうだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 予想通り、海底王国ネプチューンは大騒ぎだった。

 そりゃそうだ。この海で大暴れしていた天災のケートスが、真っ二つになって現れたんだからな。しかも倒したのがシグルドリーヴァじゃなくて俺になってるし。

 オルカさんたちがいなかったらヤバかった。

 やっぱり、俺の言葉より同じ魚人のが説得力ある。


 ケートスが半分だけってのも効いたな。どう見ても死んでるし。

 ネプチューンに到着して最初に来たのがタコ魚人のオクトーさんってのもよかった。事情を知ってるし、めっちゃ仰天してたけどね。


 さて、俺は約束を守った。戦って倒したのはシグルドリーヴァだけど。

 オクトーとオルカさん、ついでにリグくんと一緒にスクアーロ王の元へ。

 胸を張る度胸はないが、ちょっとだけ自慢げにしながら行った。


「シャァルルルルルッァァァ!!」

「ひぃぃぃぃぃっ!?」


 スクアーロ王は、巨大な顎をガチガチさせながら迫ってきた!!

 冗談抜きで、王座から猛ダッシュで俺の元へ。シグルドリーヴァがすかさず前に出るが、スクアーロ王はそのままシグルドリーヴァごと俺を抱きしめた!


「なっ……」

「シャァァッッハハハハハハ!! 舐めていた!! オレは人間を舐めていた!! まさかケートスを葬るばかりか、半身をここまで運んでくるとはな!! 負けだ、オレの負けだ!! シャァァッハッハッハッハ!!」

「あ、あの」


 スクアーロ王は俺とシグルドリーヴァを解放する。


「くっそ、久しぶりにいい気分だ。これからケートスの半身を肴に宴会を開く!! まぁお前の武勇伝に勝る肴はないだろうがな!!」

「あの、約束……」

「ンん? ああ遺跡の扉か、いいだろう、約束は約束だ。だが、まずは宴会だ!! 住人たちも興奮してやがる、ほれ行くぞ!!」

「え」


 どうやら、拒否権はないようだ……こりゃ、遺産は明日になるな。



*********************************

お父さん、異世界でバイクに乗る〜妻を訪ねて娘と一緒に〜

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890372073


新作です!

こちらもよろしくお願いします!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る