異世界戦記・転魔撃滅ガッデムファイア ~ 地球から来た転生者どもはすべて倒す! 絶対神の魂を宿した最強の復讐者が、魔炎をまとって敵を討つ超必殺・撃滅譚!
第107話 夜を駆ける魔法少女と、闇を操る雨の魔女――マジカルガール VS ダークレイン その1
第26章 4月30日 [5] 魔戦――バトル・オブ・マギア
第107話 夜を駆ける魔法少女と、闇を操る雨の魔女――マジカルガール VS ダークレイン その1
「……ちょっとアンタ。どこ見てんのよ」
赤いドレス姿の魔女の前で足を止めた小柄な少女が、不愉快そうに顔をしかめた。金色の髪を頭の左右で短い房にしたフウナ
すると、声をかけられた長い赤毛の女は、はるか遠い北西の森を見つめながら淡々と口を開いた。
「口の利き方には気をつけなさい。わらわにはナキンカルナ・オルトリンという誇り高い名前がある。そして小娘よ。おまえも自分の名前を名乗っておきなさい。それがこの世で口にできる最後の自己紹介よ」
「はあ? なにそれ? 上から目線で強がったらこっちがビビるとでも思ってんの? ほんと、ダサイったらありゃしない。あんたの体がすでにボロボロなのはバレバレなんだから。――ステータス・オン」
フウナは小馬鹿にした笑みを浮かべて特殊スキルを発動した。そしてカルナの頭の横に浮かんだステータス画面を読みながらさらに言う。
「ほ~らね。たしかにアンタは金天位の最高位、
「やれやれ……。体が魔法でできているわけでもないのに、どこが魔法少女なのやら……」
「うるっさいわねぇっ! 魔法を使う女の子なんだから魔法少女でいいでしょうがっ!」
「ならば、この世の少女のほとんどすべてが魔法少女ね。そんな称号、堂々と胸を張って名乗るほどのものとはとても思えないけど、まあいいわ。今のわらわは、おまえのように勝ち負けを気にする低次元の存在ではないの。見なさい、この星空を――」
カルナはおもむろに両腕を天に掲げ、天上で
「……わらわは200年近い時をかけて力を蓄え、膨大な時間を
「はあ? アンタ、さっきからなにワケのわかんないこと言ってんの? というか、まさか薄汚い犬ってあたしのこと?」
「当然――」
フウナが思わず顔をしかめた瞬間、カルナは鋭く指を鳴らした。するとカルナの背後の大地から、黒い人影がゆっくりと浮かび上がってきた。
「――えっ!? うそっ! なんでっ!?」
その瞬間、フウナは愕然として目を見開いた。唐突に現れた黒い執事服の男には見覚えがあったからだ。
「まっ!? まさか!? ブリトラさん!?」
「……はい。お久しぶりです、フウナ
驚き慌てるフウナに、ブリトラはうやうやしく頭を下げた。それから瞳の中に冷たい光を宿しながら、フウナを見つめて言葉を続ける。
「
「我が
「ふふ。だから言ったでしょ? おまえたちは、
「そうっ! そういうことっ! つまりっ! いちばん悪いのはアンタだったわけねっっ!」
「……はい?」
唐突に非難の言葉を浴びせられたカルナは、思わずパチクリとまばたいた。フウナが何を言っているのか理解できなかったからだ。しかしフウナはさらに目じりをつり上げながらカルナに怒鳴った。
「とぼけんじゃないわよっ! アンタがあたしたちに暗殺を頼んできたせいでこんなことになったんじゃないっ! こんな国に来なければっ! 男子たちは死なずに済んだんだからっ! つまりっ! うちの男子たちを殺したのはっ! あたしの好きな宮本くんを殺したのはぁーっ! アンタってことじゃないっっ!」
「……ウワオ」
「ねぇ、ブリトラ。今の聞いた? この子、ちょっとものすごいわね」
「はい。暗殺の依頼を引き受けたのは彼女たちの判断です。それを棚に上げてカルナ様を責めるとは、まともな思考回路ではございません。見た目は普通の小娘ですが、頭の中身は異常な野獣でございます」
「はあっ!? だれが野獣よっ! アンタたちなんか陰でコソコソしている
「あら。今ごろ気づいたの? のんきな小娘ね」
フウナがさらに声を張り上げたとたん、カルナとブリトラは口元を押さえて苦笑した。そのとたん、フウナは殺気とともに腰の妖刀を抜き放ち、即座に特殊能力を発動した。
「笑ってんじゃないわよっ! このクソババァとイケメン悪魔がぁーっ! アンタたちはゼッタイに許さないっっ!
フウナは妖刀を青く光らせながら、すぐさま空に飛び立った。そしてはるかなる高みまで上昇し、星の下を高速で駆け巡る。すると、青い軌跡を夜空に描くフウナを見上げながら、カルナがクスリと微笑んだ。
「ねぇ、ブリトラ。あの子、魔女と悪魔を地獄に叩き落とすそうよ」
「はい。なかなか面白い冗談でございます。やはり生まれてから20年にも満たない未熟者は、
「まったく。子どもというのは
カルナは夜空を突っ走るフウナを見上げ、邪悪な笑みを浮かべながら呟いた。すると不意に、フウナがカルナ目がけて一気に急降下しながら魔法を唱えた。
「風よっ! 風よっ! 風よっ! 風よーっっ! 鋭い刃となってあたしの敵を切り刻めぇーっっ!
斬空乱撃――。
猛烈な速度で地上に突入してきたフウナが青く輝く妖刀を振り抜いた瞬間、夜の大気が牙を剥いた。そして瞬時に発生した無数の風の刃が、大地に立つカルナとブリトラ目がけて襲いかかる。
その目に見えない鋭い刃は夜と大地を切り刻み、すべての角度から魔女と悪魔に向かって突き進む。それはもはや
しかし次の瞬間、カルナはニヤリと顔を歪めて魔法を唱えた。
「ふふ。春の嵐は風流だけど、花を散らすには少しばかり弱いわね。第6階梯
「――えっ!?」
カルナに向かって急降下していたフウナは思わず両目を見開いた。視界の中に捉えていたカルナとブリトラの姿が一瞬にしてかき消えたからだ。
「どこっ!? どこに消えたのっ!?」
2人が消えた大地を無数の風の刃が切り刻んだとたん、フウナは大きな弧を描いて上昇した。そして必死に目を凝らしながら地上を見渡したが、魔女と悪魔の姿はどこにも見えない。――そう思った瞬間、頭の後ろから白い手が伸びてきた。
「死霊・第2階梯
「――ひぃっ!」
冷たい手にいきなり額を押さえられたフウナは鋭い悲鳴を上げた。そして慌てて白い手を振り払い、体をねじって振り返る。すると、カルナとブリトラが背後にいた。
「あら、どうしたの? そんなに驚いた顔をして。まさか、空を飛べるのは自分だけだと思っていたのかしら?」
背中に黒い翼を生やしたブリトラに抱きかかえられたカルナが、フウナを見つめながらニヤリと笑った。そしてフウナの額に刻んだ漆黒の魔法陣を指さしながらさらに言う。
「それは呪いの刻印よ。これでもう、わらわの魔法からは逃れられない」
「なっ! なにをしたのっ!?」
フウナは反射的に自分の額に手を当てた。
「ふふ。安心しなさい。呪いをかけるのはこれからよ」
「ふっ! ふざけんなぁーっ!」
フウナはとっさに青い妖刀を振り下ろし、風の刃をカルナに飛ばした。するとカルナを抱えていたブリトラが翼をたたみ、急降下してフウナの攻撃を瞬時に避けた。そして地上付近で再び翼を広げ、優雅な動きで着地した。
「――さあっ! どんな呪いをかけてほしいか言ってみなさいっ! 何十個でも好きなだけかけてあげるからっ!」
地上に立ったカルナは口元に両手を当てて、宙に浮かぶフウナに向かって声を張り上げた。
「性転換の呪いで男の子になってみる!? それとも老化の呪いでヨボヨボのおばあちゃんにしてあげましょうか!」
「うるさぁーいっ! ババァはアンタの方でしょうがぁーっ! この200歳オーバーの妖怪魔女がぁーっ!」
「あら、カッチーン」
怒鳴り返してきたフウナの言葉に、カルナはニコニコと微笑みながら激怒した。
「ブリトラ。今の聞いた? あの小娘は全力で『砂』にするわよ」
「かしこまりました。それでは
「――ちょっとそこぉーっ! ゴチャゴチャ言ってんじゃないわよっ!
カルナに向かってうやうやしく頭を下げたブリトラを見下ろしながら、フウナはいきなり
「呪いだかなんだか知んないけどっ! そんなモンっ! かける前に2人まとめてぶっ飛ばすっ! いくよ
全身に強烈な風をまとったフウナは、カルナ目がけて一気に突っ走った。その速度はまさに疾風――。風と化したフウナは目にも止まらぬ速さで魔女と悪魔に襲いかかる。さらにフウナを取り巻く風は猛烈な渦を巻き、大地を容赦なく砕きながらフウナとともに突き進む。
「……あら。これはちょっとまずいわね」
カルナは再び
「ブリトラ。ゲートよ」
「かしこまりました――」
ブリトラは瞬時にカルナの前に
「第5階梯
瞬間、ブリトラの全身から暗黒の
「えっ!? なにこれっ!?」
唐突に出現した黒い門を見たとたん、フウナは度肝を抜かれて目を見開いた。フウナが作った魔法の突風が、その門の中に渦を巻いて吸い込まれていくからだ。
「――くっ! なんかヤバいっ!」
フウナはとっさに進路を変えて斜め前に突っ走った。そして大きな弧を描きながらUターンして、再びカルナ目がけて襲いかかる。しかし――カルナはすでに待ち構えていた。
「……さあ、次はわらわの番よ。闇・死霊第4階梯
その瞬間、夜の闇がうねりを上げた。
カルナの周囲の大地から影が波のように盛り上がり、フウナに向かって一気になだれ込んでいく。その影の高さは人の背丈の倍以上もあり、まさに津波のごとく突き進む。しかしフウナは、逆に気合いを入れて加速した。
「こんなものぉぉぉーっ! 一気に突き破ってやるーっ!」
次の瞬間、荒れ狂う突風と影の大波が激突した――。
すると、青い妖刀を前に突き出したフウナが影の波に穴を開けて貫通した。さらに、フウナを取り巻く鋭い風の刃が影をすべて切り刻み、細切れにして吹き飛ばす。しかし、影の向こうにカルナとブリトラの姿はすでになかった。
「くっ! ヒキョウモノぉーっ! どこに隠れたっ!」
風の魔法を解除して足を止めたフウナは慌てて周囲を見渡した。しかし、2人の姿はどこにも見えない。フウナの周りには夜の闇と、切り刻まれた影の破片が無数に漂っているだけだ。しかし、そう思った次の瞬間、影の一部が1か所に寄り集まり、カルナとブリトラの姿になった。
「ふふ。どこを見ているのかしら。わらわはここよ?」
「……ちっ。さすがは魔女。怪しい魔法は得意ってわけね」
優雅に微笑むカルナを見て、フウナは憎々しげに顔をしかめて言い捨てた。しかしその直後、息を鋭くのみ込んだ。周囲に漂う影の破片が、ゆらゆらと揺れながらフウナに向かってきたからだ。
「なっ!? なにこれっ!? なんなのっ!?」
フウナは慌てて妖刀を振り回し、近づく影を片っ端から切り裂いた。しかし影は細かくなるだけで、動きを止めずにフウナをゆっくりと囲んでいく。
「いやぁーっ! こっちこないでぇーっ!」
フウナは思わず悲鳴を上げて、空に向かって飛び立った。すると影の破片も一斉に上昇を開始する。フウナはさらに驚き慌てて横に逃げた。しかし影たちはフウナを追わずに、そのまま上空へと昇っていく。そしてはるかなる天の高みに達した影の破片は、寄り集まって黒い雲を形成し、みるみるうちに夜空を覆い尽くしていく。
「な……なにあれ……? 雲……?」
「ええ、そうよ。あれはわらわの作った雨雲よ」
空中で動きを止めたフウナが分厚い黒雲を見上げて呆然と呟いたとたん、地上に立つカルナがニヤリと笑った。そしてさらに目を細めながら、優雅な仕草で暗黒の夜に片腕を伸ばし、最凶の魔法を発動した。
「さあ、小娘よ。愚かにもわらわに牙を剥いたその
その瞬間、天が黒い涙を流した――。
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