Act.149 凍気吹き荒ぶ孤島
孤島群の合間を抜ける様に別ルートを進む、
次いでその後方より、数隻に渡る艦が荒波を越えて進軍する。
その旗艦と思しき艦には高々と、
それを眼下に収める翼の一団が高空……500
そこからさらに上空1000
「目標地点の観測結果が出ました。殿下の読みを大幅に超える部隊集結を確認……我らが出ておいて幸いでしたね。」
「やはりか……。ガレオン船に偽装した揚陸艦との推論が、嫌な方にクリーンヒットと。だが——」
高空での滞空を可能とするは魔導機械帝国が誇る技術の翼。
艦に搭乗する策謀の皇子は配下の兵の言葉で思案し、導かれる状況を糧に一切の漏れなく流れを組み上げる。
戦地に到着する
「ジェシカ。奴らがこちらに気付いているとは思いたくはないが、それを踏まえた作戦遂行が求められる。言うに及ばずこの戦いの主役は、ミシャリア率いる
「間違っても、我々がその舞台を邪魔立てする無粋を働く訳にはいかない。親衛隊として腕を披露したいだろうが……皆へその旨は伝達よろしく頼む。」
『言わずもがなです、殿下。私とて、ミシャリア様はもちろんの事……ウチのとんだ精鋭の晴れ舞台を楽しみにしていると言うのが本音です。あの子はもう騎士隊の厄介者なんかじゃない――』
『これより世界へ名を轟かさんとする未来の大賢者――その護衛を努め続けた誇り高き宮廷騎士なんですから! 』
策謀の皇子の注釈へ、皇子も折込みずみの想いが
言うに及ばず
そのツインテ騎士は紛れもなく、世界でも最強クラスの騎士職と称される
騎士隊で先天性の怪力と言う力を活かせず、いつしか隊の腫れ物扱いとなったツインテ騎士。
その能力を悪名のレッテルから天性のギフトへと昇華させたのは、他でもない赤き騎士その人。
怪力で殺される剣術から脱却させ、その怪力を活かせる
赤き騎士でさえ捌き切れぬ必殺の一撃を手にした騎士として。
そんな師弟関係を見続けた策謀の皇子も、赤き騎士が弟子の活躍が楽しみで仕方ない事を知り得ている。
当然であった。
赤き騎士へ、ツインテ騎士の先見性をいち早く伝えた者こそ……策謀の皇子だったのだから。
「ではこちらは改めて、ラブレスの部隊侵攻状況と総数の把握に努める。そして
赤き騎士の心情を汲み、今真価を轟かさんと雌伏を過ごす配下兵を鼓舞する様に宣言された参陣の言葉。
遂に、かつてより泣き虫弱虫と
∫∫∫∫∫∫
日の陰り具合はまだ充分な余裕がある所。
しかし未開の地ゆえ、充分な下調べも必要。
そんな押し寄せる難事で思考をフル回転させる私は、すでに視界の先へ捉える孤島沿岸を睨め付けていました。
そう――空間に穴が飽くほど睨み付けていたのです。
「ミーシャはん。確かにここまでは上手く運んどった――運んどったんやけどな? 今目に映る状況が全て言うこっちゃ。」
「皆まで言わなくてもいいよ、しーちゃん。あのデレ黒さんの元身内め……冗談も大概にして貰いたい所だよ。オリアナも何とか言ってやってくれないか? 」
「そこで何で私に振ったの!? 私はもうあんなのの身内じゃないって言ってるでしょっ!? 」
オリアナの突っ込みも嘆息で流す私は、再び現状把握と努めます。
現在私と精霊種含めた
「確かにこりゃ冗談じゃねぇな。戦列艦なんざ問題じゃねぇ。問題なのは周辺に複数あるガレオン船を装う偽装艦……それもあの数を死霊使い一人が傘下に収めてる点だ。」
「巧妙じゃの。じゃがあれは近付けば近付くほど疑いの余地なく、国家が陸上歩兵部隊を渡海させる揚陸艦であるのは明白じゃ。おまけにあの数――もはや正気の沙汰ではない。」
「いや、あの……二人して語られても、私全然理解の外なんだけど?? 」
テンパロットにリドジィさんと、その手の情報に聡いメンツが語るや険しい顔で状況を推察します。
置いてけぼりなオリアナはそのままに。
「あのガレオン船が揚陸艦? ってことは、つまり……マジでヤバくない? 」
「なの……。あのクラスの揚陸艦が移送出来る兵力は、アグネスの戦列艦の比では……ないの。」
「だーかーらーっ! 私にも分かる様に説明し――ピュオゥ!? 」
「オリリンお姉様はちとお静かに。今からミーシャはんが説明しますよって。」
「あら~~(汗)。もうどっちがお姉様か分からない感じね、ティティ卿とオリアナさんは……。」
続くフレード君にヒュレイカの考察へ、またしても絡むオリアナを何とかティティ卿が押さえ込み――って……またほっぺをしこたま圧殺されてますが。
ペネも呆れるそのやり取りで私に解を振って来たならばと言葉にします。
何ゆえ戦列艦ほどの戦力を差し置く程に、そのガレオン船に偽装した船がヤバイかと言う事の真相を。
「いいかい?オリアナ。少なくとも君以外は皆、そこから考え出される危機的事態を察しているから君向けに回答する。早い話が、すでにあの孤島には千に上る兵力が上陸している――」
「詰まる所君の元身内さんはあろう事か、この一介の冒険者と相対するために千の兵をぶつけて来た可能性があると言う事だよ。理解したかい? 」
「……え? 千の……って、冗談でしょ? 」
「君はあのリュードが、中身の無い冗談をチラつかせて愉悦に浸る半端者と思っているかい? 」
「……ないわね。」
そして語った私の回答へ、さほど驚愕を覚えなかったオリアナ。
しかし嘆息は盛大に吐き出され、ようやく真意を得たりな表情へと移り変わります。
いろいろ無知さを振り撒いているこの子も、それはただ知らない情報を補完してるだけの事。
驚きで騒ぎ立てるまでに至らない所で理解します。
もうオリアナ・レーベンハイトと言う少女は、私達
そこまでを静観していた精霊種からも言葉が飛びます。
これより望む戦いで、存分に力を借りねばならないお方達から――
「なんとも国家が擁する部隊とかち合うハメになるとは……。つくづくお嬢らとの旅は、奇想天外も甚だしいな。」
「でもあーし達はしょーりして、街に帰るサリ? 」
「そうだぜ、サリュアナ。俺達が力を貸す賢者ミーシャとその家族が負けるなんてありえねぇぜ。ファッキン。」
「ああ……アタイは、とんでもないのとつるんでしまったさね。けど、くくっ――世界に名を轟かす……心が躍るねぇ! 」
「ディ……ディネお嬢さんは、非難してるのか称賛してるのか判別しにくいアル(汗)。」
長く共にあったジーンさん。
オリアナに心酔し、力を貸してくれるグラサンにサーリャ。
使命を科せられたとは言え……力添えをくれる輩ネエさんに、己の存在を懸けて尽くしてくれるノマさん。
そして――
「キキッ、キキ。キキー」
「リィィン。リィィン――」
「うわ……ここでウチがダブル通訳かいな(汗)。てかあんさんら、面白がってるやろ? まあええ――」
「ミーシャはん、シェンはんにウィスパはんの心は一つや。「どんな戦いであろうと、我らは共にあります。」やて。」
私に希望を見言い出してくれるシェン。
一番目と二番目に古い素敵なお友達……ウィスパとしーちゃん。
羨望込めた眼差しが今、冷え切った風が頬を叩く甲板で私を熱く燃え
「皆ありがとう、感謝する。では……これより正念場――私達自身の戦いの幕開けだ! 」
千を越える兵を前にしながらも恐るる事なきこの心で、決意の言葉を宣言した私は――
サイザー皇子殿下が組織せし、
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