Act.142 策謀の皇子、動く
正しく火急と
『——と……以上の件は、ミシャリア様にもこちらからお伝えすると提示しております。そこに問題などはありませんか?サイザー皇子殿下。』
「問題ありません。よくぞその旨を伝えてくれました。こちらも判断に迷う事はないでしょう。感謝致します、フェザリナ卿。」
すでに帝国首都が要する広大な敷地にて、離陸を待ちわびるは
それが魔導回路エンジンを暖め待機する中――艦内で皇子は事のあらかたを整理していた。
現在その存在はここ
双方に存在するだけでも数機を数えるばかりの、まさに軍事機密の集合体であるそれ。
基本設計を同じくするそれらには、帝国とかの
「殿下、離陸準備は完了しました。精霊術式による承認をお願いします。」
「ああ……それでは——」
全長は100
しかし先端が鋭利となった流線型のフォルムは、策謀の皇子が提唱する魔導航空力学に基づいた形状であり——
何よりその際たる物が、その魔導機械の産物には搭載されていた。
コックピットとなるそこで、帝国の士官クラスとも言える部下が座して承認を待つ。
策謀の皇子もそこへ顔を出すや求められた儀のため術式展開に入る。
あの
『
皇子の術式展開後浮かぶ小型の
「ジェシカ、そちらの指揮は任せる。この
『了解です、殿下! 聞いたな――各員、
すでに離陸寸前である艦から飛ぶ通信に、魔導式通信で応答するは
しかし親衛隊たる彼女は艦の外で策謀の皇子へと返答した。
その彼女がいた場所――それは
乗騎に合わせ備えられた鞍と、巨鳥用甲冑を纏う勇ましき出で立ちに
さらにそれを囲む様に鼻息を荒くするは七匹の
中でも軍用に育てられた雄々しき翼上に配下である騎士達の姿があった。
魔導機械の結晶たる
二種類の生命種は、何れも帝国の属国が飼い慣らす制空乗騎。
それを駆る事の叶う志願者……策謀の皇子を
程なく、忠義ある配下を従えた皇子は咆哮を上げる。
これより後、彼が未来を託さんとする部隊への最高の支援を送るために。
「よし……では、
今
すでに事を悟った
だからこそ策謀の皇子は、帝国でも極秘中の極秘となる部隊出撃を決断したのだ。
∫∫∫∫∫∫
そこは術師会が擁するアグネスでも一級のお宿。
すでに裏取り組みが数夜を過ごした場所。
経緯としては、昼の一連の大事に
早朝の食事会に合わせ、私達
そこでお師様の計らいで、
「はぁ……ようやくまともなお宿で休めるわね。ティティ卿もその方が良いですよね? 」
「……もうティーにゃんはおしまいおすか?……はぁ。ウチは〈アカツキロウ〉でも、質素と倹約を重んじる民の暮らしを知るため——ようお家の者を引き連れて古民家へ遠征しとったさかい……先の廃屋生活も特に不自由は感じまへんおしたえ? 」
「ティーにゃんがそんなに気に入ってたのか(汗)。まあティティ卿……ご覧の通りこの子は、お上りさんのくせして箱入り娘だからね。贅沢が身に染み付いているのさ。」
「どぅわれがお上りさんじゃいっ!? て言うか、そのネタいつまで引っ張るのよっ!? 」
「しーちゃんの脱げネタぐらい? 」
「その例えはおかしいからな!? ミーシャはん! ウチは脱がへんちゅーねん! 」
「おお……ダブルツッコミが炸裂したじゃん。単発から連続技に強化された感じ? 」
「ふふ……そんな感じ。」
ティティ卿の
確かに皆疲れは相当量であるも、どこか満足げで余裕すら漂うのは——当の私がまさかまさかの術師会 本局代表後継に選ばれると言う誉れを賜った事が関係しています。
まあオリアナやしーちゃんを先んじて弄るのは、その事を弄られる前に打った先手であるのは内緒の方向で。
「ラブレス帝国の部隊から挑戦状を受けた身だってのに、呑気だなお前ら(汗)。」
「全くじゃ。よもやテンパロットとその点を共有できようとは思わなんだが。」
「おいジィさん……そりゃおれが、メスゴリラと同列とか言ってんじゃねえだろな。」
「切り裂きストーカー! どさくさで、メスゴリラ扱いしてんじゃないわよ!? 」
「この痴れ者が! 忘れた頃にそのジジィ扱いを口にするとは……そこになおれぃ! 」
テンパロットもジィさん弄りは絶好調。
ヒュレイカまで同時に弄っていく妙義は正しく私の護衛たる証だね。
「あの……この人達いつもこんな風アルか? 」
「すまぬの、大地の精よ。残念ながら、その通りである。」
「なの……。ノームさんもご愁傷様。」
「って、おい(汗)。精霊種までその
「あんまり変わんねぇじゃないのさ。」
「変わらないサリー! 」
「キキ、キキ~~(汗)。」
ペネに始まりフレード君にジーンさんと、グラサンに輩姐さん……そしてサーリャにシェンも含めて居並ぶ大所帯。
そんな私達を大地の精霊たるノーム氏へ、簡単な自己紹介をすぐにでも送らねばと思考していました。
そんな私へ思い出した様にしーちゃんが言葉を投げてきます。
新たな仲間の来訪。
いえ……それは私さえ知らなかった、一番古くから共にあったであろう者との再会と言う因果が――
最愛の友人たるしーちゃんから届けられたのです。
「ああ、すんまへんな。ミーシャはん! どさくさで危うく流してしまうとこやったけど……ミーシャはんに紹介したい精霊がおんねん。」
「精霊? それははたまた、この様なご時世に私への面会と……興味深いね。」
「それなんやけどな……彼女はどうやら、ウチとミーシャはんが会うた時よりさらに
「……は? いや、私はしーちゃん以前に精霊と面とかって会話した記憶なんて——」
しーちゃんの言葉で疑問符がフラダンスを踊り出した私の視界、それは顕現します。
浮遊するランタンにも似た淡い光を放つ衣に、柔らかくその身を包まれたしーちゃんより少し小さな
それを見た刹那。
私の記憶に蘇ったのは……術師会への入会をと意気込んでいたあの頃。
木漏れ日の様な——澄み渡る大気を包む暖かい感覚が、なんとなしに思い出されたのです。
「リィィィン……。」
響く音は精霊からのもの。
しかし言葉と等しき意識が思考へと流れ込み——
『私……名はウィル・オ・ウィスプ。光の精霊。あなた……賢者ミシャリアは、私の最初のお友達。』
『あなたは気付かなかったけど、私は幸せだった。あの導師の……強制契約に個の意識を奪われるまでは——』
そう——
彼女はあのモンテスタが精霊へ向けて行った、卑劣極まりないチート術式の餌食となっていた精霊だったのです。
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