Act.75 奇跡の偉業の果て
かつて
おおよそその基準に相当する
――だがここに……その基本を大きく塗り替えた者達がいた。
それは計らずして火山帯へ訪れた一冒険者パーティー。
今彼らが止めを刺さんとしていたのは――進化したての種ではあるも、紛う事無き
それはまさに、
∫∫∫∫∫∫
すでに地へ両の脚で立つ事もままならぬ
だが――相手は〈
その獰猛なる害獣へ止めを刺すために居並ぶには……
「さて皆……正直この状態のバカ竜さんは、もはや無力とも言える。立つ事も私達を襲う事もままならない訳だからね。しかし――」
「私達は討伐任務の上で彼をこの様にした――が、だからと言ってこの多勢に無勢ですでに無力のバカ竜さんを痛めつける
その雰囲気を生んでいたのは
確かに彼女達は
言葉を口にした賢者少女へ首肯を返す
その視線が熱き精霊――
そして――
「サラディン……頼めるかい?」
「ああ……皆まで言うな、賢者ミーシャ。あんたのそういう心意気は、俺も買いたい所だぜ?ファッキン。」
言葉の意味を悟る
「せめて苦しみは忘れさせてやれ、サリュアナ。僅かでも知能が宿ったなら、相応の苦痛も感じているだろうからな。」
「分かったサリ。あーしの火の精霊術でゆっくり体温を下げるサリ。そうすればレックシアさんも活動が鈍るサリ。」
父親の言葉へ首肯した炎揺らす少女が無詠唱精霊術式を展開すると……淡い炎が
そこまでを双眸で見つめた桃色髪の賢者が、仲間である
一連の行動に於ける真意となる言葉を――
「私達はこの暴れ狂う
「ならばせめてこの
言い終わった賢者少女は、その手を胸前で優しく一つに合わせ祈りを捧げる。
荒ぶっていた巨体も静かな安らぎを覚えた頃――火蜥蜴親父がその体躯へ柔らかな弔いの炎を解き放つ。
長年の宿敵を……腐れ縁とも言えた傍若なる隣人を――
「てめぇは感謝するこったレックシア。害獣指定された物相手に、これ程まで
確かにこの
だが――
その
害獣指定された異獣相手でさえ弔うほどに偉大な、命を尊ぶ心持つ賢者の少女として――
本人の
∫∫∫∫∫∫
「……お、終わった。今回は流石に――疲れたよ。」
「おう、ホントに今回は気張ったなミーシャ。」
「ここまで強力かつ長時間の術式行使したのはお初じゃない?」
今私はあまりに疲労が蓄積し、満足に歩く事すらできないまま――今日の一番の主力であったヒュレイカの背におぶられる始末です。
「私が間に合って良かったわ。けどそもそもヒュレイカの付けた傷がなければ、あそこまでのダメージを与えられたかどうか――」
「いやぁ……あれは流石に目ん玉飛び出るか思たわ(汗)
「それはあーしも思ったサリ(汗)」
「あれ程の威力の共振装填――
最後の止めにもなった〈ガルダスレーヤ〉による
そしてヒュレイカが加えた
「こっちも時間稼ぎの間はひやひやもんだったが……あんたはとてつもなくクレイジーだぜ、賢者ミーシャ。」
「まさに、じゃな。
『キキーキキキッ!』
「あら?闇の精霊さんは節操が無い感じね。大きくなったり小さくなったり。けど何にせよこれでペネや村の人達の安全が保障された感じ――ミーシャさんには感謝しかない感じね!」
「民の安寧――至高神もお喜び、なの。」
テンパロットを初め、ヒュレイカにフレード君――オリアナにリド卿。
さらにペネに加えて精霊側であるしーちゃん、ジーンさん、シェン、サリュアナ――そしてサラディンとが並んで
上空ではリド卿を名残り惜しむ様なガラッサルバードの、ガラ?だったかが旋回して
そうして私を庇う様に立ち回ってくれた協力者達が、口々に今回の偉業を称えてくれます。
くれていたのですが――
「んあ?おい、ミーシャ――」
「しー。テンパロット、今は。……もうミーシャも疲れちゃったみたいだし。」
その言葉がほとんど子守唄の様に聞こえていた私――いつの間にか、ヒュレイカの背におぶられたまま寝息を深く称えていたのです。
素敵な護衛と……心強き協力者達に囲まれながら――
∫∫∫∫∫∫
一行が村に差し掛かる頃には、晴れた雲間から夕焼けも差し――しかし偉業を称えるが如く一行を照らし出していた。
それを視認した村人が一斉に駆け寄ると、瞬く間に人だかりとなり……その中央で此度の
「あんたら、よくぞあの
「ペネは子供ではないし!?そんな幼子を扱う様な態度だから、ペネはパパから離れた感じよ!?分かってる感じ!?」
「おお……ペンネロッタ~~そんな――」
今回飛び入り協力者でもあった
その仲睦まじい親子のやり取りを、冷たい汗を滴らせて一瞥する
「……全てが丸く収まったと思っていたら、思い出したくない肝心な事実を今目にしたよ。この村――」
「「「……あっ。」」」
一行が誰からでもなく一瞥し、視認したのは群がる村民ではない――その背後……暴竜の襲撃で無残に焼き払われた村の一部である。
その一行の視界の端に、見慣れた影が映った刹那――ハッ!と気付いた賢者少女が声を上げた。
「さ、サイザー皇子殿下!?こんな所までご足労、痛み入ります!」
「ははっ。みんな無事でなによりだ。今回はよくやったな、ミーシャ。まあそれはそれとして……だ――」
焼け
そして当然の様に着き従う
そんな
村人が分かつ様に作った道を、血統ある軍馬に跨って進み言葉を放つ。
それはもう一行にとって、上げて落とされた様な衝撃を伴う言葉であった。
「今回の一件……さしもの
「なのだが実は、我々帝国の所有権外となる種族柄の権利が関係する建物があってな――そこは権利を有する種族がその身をもって代金を捻出すると言って聞かないんだ。なぁ、店主ケンゴロウ。」
「おうよ!ウチのソバ屋は代々ドワーフ族が身銭をはたいて建てた伝統ある店舗でい!そいつを事情がどうあれ帝国の補償なんざに頼っちゃ、家名に傷が付くってもんだ!!」
「んでもって立て直しなんて代金が出た日にゃ、その代の家族が次いで行く伝統――お前も分かってんだろ!?ペンネロッタ!」
謎の問答に、呆けた表情でドワーフ令嬢へ視線を集中させた
「致し方ない感じね……。」とぼやくドワーフ令嬢が、嘆息とともに口を開く。
そこにいた
「分かったわ、パパ。ペネもドワーフ扱いは嫌いだけれど、別にその伝統を
「なに、心配は無用な感じね!この法規隊に着いて行けば商売にも困らなそうだし、その稼ぎから返していける感じだからっ!!」
「「「「……はあっ!?」」」」
「――とまあ、赦免となる借金はともかく……そのドワーフ嬢が肩代わりする分は上乗せする事になる。心して置いてくれよ?皆。」
「「「「はあぁぁーーーーーーーーーっっっ!!?」」」」
そして晴れてドワーフが運営する店舗全壊の建て直し費用一部が……まさかの一行へ加わるとのたまったドワーフ令嬢の行動により――
食堂バスターズが抱える借金へと上乗せされる事となったのであった。
討伐後……借金が爆乗せされたドラゴンスレイヤー――
――借金スレイヤーと――
∽∽∽∽∽∽ アーレス帝国 その1 ∽∽∽∽∽∽
被害 : 火山間辺境の村ドワーフ経営店舗〈火山のオソバ〉
————暴竜襲撃により建物全壊
借金主一名追加 :
――――ペンネロッタ・リバンダ
食堂バスターズ――〈借金スレイヤー〉と噂される!!
帝国持ちにより借金一部赦免の後、ペンネロッタの肩代わり分上乗せ!?
∽∽減っても上がるこの理不尽さ! 大丈夫か!? ∽∽
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