Act.64 古代竜種、恐竜レックシア
一行が食事を堪能する、まさに同時刻——
民はなんとか逃げ果せるも、逃げ遅れた家畜たちが無残に餌食となり——その巨大な影は訪れた。
しかしその体躯……
大きな顎は、他の竜種の様な蜥蜴を巨大にした体からは
何より……巨大にして隆々たる両脚が大地を踏み締めると、早馬の様な速度で次の獲物を狙い定める。
まさに異端……それは
遠目に確認した暴れ狂う猛威を目にし……ドンブリを持つみなが同時にそれを地に落とした。
「お……オイオイ(汗)こいつぁ——マズイぞ!てっきり翼竜系を想像して戦術を思考してたんだが——」
「……ね~~ヤバイわよね~~(汗)つか、これ……早く皆を避難させないと取り返しがつかなくなるわよ!?」
「同感だね!一先ず三方に分かれよう……私が囮になるから、辺境の地理に詳しいリド卿はサリュアナ……そしてシェンを率いて民を誘導して——」
一行も想定が遥か斜めを通り越す、大地を揺らす暴君。
二脚の強靭な足は一足で一行を追い立てる事も叶い——巨大なる顎は小さな異獣など一撃で絶命する牙を並べ立てる。
——陸上生物最強の竜種、
「待てい、ミーシャ!お主が囮になど……後衛主体の賢者がその様な危険に飛び込む作戦など、今まで聞いた事もないぞっ!?」
「まあ、そう言うと思ったけどね!?でもこの場合は——」
「呼ばれて飛び出て何とやらやでーーっ!」
「……だから、私に精霊召喚の鍛錬を積ませてくれと言ってるだろう!?何で術式も展開してないのに現れるのさしーちゃん!空気読め!あとまだ呼んでないからね!?」
「っ!?お嬢、今はそれを論議している場合ではないぞっ!」
それを視認した
「ああもういいよ!とにかくしーちゃんとジーンさんは、私を風の障壁で守りつつ……村の中心部まで誘導する!」
「ばっ……!?村に呼び込んでどうする——」
「黒ジイさん!あなたは民を避難させたら、二人の精霊を連れてあの北の高台へ!」
「黒ジイでは……何じゃと!?高台に!?」
「相手は
「獣の浅知恵ごときでは、この私に勝る事など叶わぬと思い知らせてやるさ!――オリアナっ!」
「ええっ!こいつの出番ね!」
したり顔で言い放つと
湿気を防ぐ様に堅い布でしまわれたそれ……荷物として肩に掛けていた〈ガルダスレーヤ〉が、曇天の中の僅かな灯りで黒光る。
そして——
「サラディンはオリアナについて、リド卿と反対の丘へ!んでもって、テンパロットとヒュレイカは私から先行して前を走るんだ!」
「さらにフレード君!奴を空中で威嚇し、民から目を逸らさせて!行けるかい!?」
「オレはいいぜ!じゃ、先に行くぞっ!」
「こっちもOK!ミーシャ、あとでね!」
「ボクも、了解——なの!ボクの得物……霊銀製メイスの出番、なの!」
「……っ!俺はオリアナ嬢とか――だがそこへ何か考えがあるんだな!?賢者ミーシャ!」
護衛となる
あの泣き虫弱虫の
「そうさ!これはあくまで、あの暴竜を村から追い出すための策――今は討伐策に目処が立っていないからね!せめてもの威嚇だ――」
「いつまでも弱者と言う餌が、逃げ惑うばかりではないと言う事を――あの暴竜の生命本能へ叩き込んでやるのさっ!」
賢者少女の回り続ける頭脳へと、すでに何度思考したか分からぬ中さらなる感嘆を贈る。
そして懐かしささえ浮かべる火蜥蜴親父は、賢者少女の指示に従い白黒少女の後に続いた。
「(へっ……これじゃまるで、あのアーレスのボンに言い様に振り回されてた時と同じじゃねぇか――ファッキン。)」
思考に浮かべたのは、かつて
弛まぬ研鑽の生んだ化け物は――徐々にではあるが、火蜥蜴親父の心を虜にしつつあったのだ。
∫∫∫∫∫∫
流石に暴竜からの襲撃には度肝を抜かれたけど、見境なく贄を貪る危険性……そこにこそ皇子殿下が見出した危惧が籠められていると判断した私。
まさかの討伐策が煮詰まらぬタイミング——まあ……異獣プラスアルファの知能ではそれを狙ってできるものでもないから、これは偶然の産物とでも言っておこう。
そして私がもし思考の袋小路に陥ったままでは、見るも
けど今——
「何とも恐るべき脚力だね、あの
「お嬢!風の風障壁でも奴の攻撃を受け止められん可能性がある!ましてやあの速度——追いつかれるのは一瞬ぞっ!」
ジーンさんの言う通り……私はお世辞にも足が速い方では無いけれど——建物との間を縫う様に逃走する事で、暴竜の視界から消えつつ移動します。
けれどあのバカ竜さんと来たら、そこいらの建物まとめて踏み潰すので私の逃げ方では逆に危険な状況にも陥る所——
それを上空から視認するフレード君の援護が、逃走を可能とするのです。
「ミシャリアお姉ちゃんは——やらせない、の!」
霊銀製のメイスへの優雅な斜め座りで、暴竜の視線スレスレを挑発する様に滑空するフレード君——相も変わらず、男の子なのに乙女の様な可憐さをぶっ込んでくる辺りはまさに男の娘。
けどその彼を視界に止めても、攻撃手段が限られる程を晒す暴竜に……取り敢えず奴を村から追い出す算段を導きます。
「フレード君、グッジョブ!しかしどうやらあの暴竜……まだ噛み付きや尻尾ブンブンの類しか攻撃手段が無いと見えるね!ならば——」
ジーンさんの生む風の障壁を盾とし、走りながらの簡易術式を組み上げます。
私が持てる現状最大級の
そしてこの術式は、信を置ける仲間達がいるからこその秘術とも言えるもの。
その前段階となるキッカケである風の精霊術式を……展開する事としましょう。
『
この手に生まれた小型の
「さあいいかい、皆!私が誇る最大級の純物理魔法の洗礼を……あの暴れ竜へとお見舞いしてやるよっ!」
チートと呼ばれる者へ
それは信を置く仲間が揃った時——何処までも強力に……そしてより多くの弱き者を守る事叶うものへと昇華するのです。
眼前の暴君が、生命にあだ名す存在であれば容赦などしません。
私の生んだ最強をお見舞いしてやるとしましょう!
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