武器商人からの刺客
Act.30 帝国皇子 サイザー・ラステーリ
港町へ
敵対者であり、監視対象であった白黒少女——元
しかしなんと彼女は、その本人を切り離した武器商人本体から依頼を受けた
そこで白黒少女救出依頼を急遽請け負うバスターズ一行——
敵対者も意表を突かれた奇想天外な策は、見事
画して本当の家族からも捨てられた哀れな少女は、引き換えとし——頼もしくも騒がしい、新たな家族の元へ身を寄せる事と相成ったのだ。
『ほほぅ……なるほど、大体の経緯は理解したけど——まさかそんな決断を下すとは……。この旅も中々ためになってるんじゃないか?ミシャリア。』
「……ははっ……まあためにもなってはいますが、むしろ気苦労の方が尋常ではない事になってます。それではサイザー殿下——期日にはアーレスの西の街〈港町フェルデロンド〉に着けると思います。詳細はそこで——」
『ああ、了解した……二人にもよろしく頼む。新しい家族に期待しているよ?』
バスターズ一行は、停泊するお宿〈
その主要人物である帝国第二皇子、サイザー・ラステーリ殿下への報告を行っていた。
魔導通信術式解除と共に機能の停止する通信端末——その沈黙を確認した桃色髪の賢者は、大きく伸びをし嘆息した。
「ふぁぁ~~っ……全く、さっきの通信じゃないけれど——気苦労が絶えないね。……いるんだろ?しーちゃん。」
嘆息もそこそこに気付く気配は、人の物ではない霊的な感覚。
呼ばれた精霊も「流石やな~~」と零しながら、小さな羽をひらひらはためかせて現れる。
「本当に君は相変わらずだね。以前のように、すぐ何処かへ飛び去らないだけマシだけど……そう当たり前の様に、精霊が実体化するのはどうなんだい?」
「いやぁ~~せやかてミーシャはん?ウチら術式で呼び出されん限りは、ずっと精霊界で時を過ごすんや……そんなん刺激が足らん言うもんやろ?」
「それこそどうなんだい(汗)?しかし実際それで、戦闘時には助けられてるんだ……文句も言えない所ではあるね。」
精霊としてはまさに残念極まりない言動の残念精霊――が、その精霊でさえ気に掛かる件についての話題を桃色髪の賢者へと振って来た。
「それはそうと、ミーシャはん……あのオリアナはんのぶっ放した奴なぁ――あれ、
「……ふぅ、流石はしーちゃん。伊達に残念と言われては――」
「それ褒めとらんからな!?その残念はええねん!――まじめに答えてんか。」
めずらしくノリの悪い残念精霊を一瞥し、桃色髪の賢者は口にする。
その精霊が察した通りの点についてを――
「――確かに調整が効かないと言う点では、間違いではないね。て言うか、アレには風の精霊エネルギーその物がマッチしてないと感じたよ?」
「せやろな~~。実際アレは風には向いてへん……いや、違うな――もう一種の
「火の精霊エネルギー……辺りが、必須と考えるで?ウチは。」
「……しーちゃん。最近テンパロット並に感が鋭くなってないかい?精霊云々はともかくとして、アレは魔導兵器の一端――確実に精霊界の事象とかけ離れてるんだよ?」
そして精霊の語る解に賢者の少女が嘆息を洩らす。
賢者少女が口にした様に……魔導機械より生まれた兵器に属する白黒少女の
しかしこの残念精霊、人間一行に長く寄り添うあまり――積み重なった知識が下手な一般の民草を超える物へと昇華し――
その知識量から来る考察の鋭さは、賢者の少女が指し示す通りのレベルへ達していた。
「ウチもミーシャはんや、テンパロットはんらとの付き合いも長いからな~。何や三人の策士的な思考が移ってもうたわ。」
「それもそうだね……。まあその話は置いておくとしても――」
ずれ始めた話を元に戻し、本題の考察に移る賢者の少女。
すでに窓を照らす連星太陽の光も、高さが増し始めた頃――新たな仲間を加えた事に合わせて発生した、重要点への対策思考に耽る。
「オリアナには今後の戦力増強として……火の精霊の加護が必要となるのは間違いない――と言う事か……。」
そして少女の
∫∫∫∫∫∫
そこは帝国首都アグザレスタ……帝国の中央に位置する巨大な城が、城下を見下ろす。
石造りの壁面へ、其処彼処にあしらわれた機械的な装飾が
――アーレス帝国首都の居城 〈
十数代前の皇帝までは、
「殿下、通信はミシャリア様からで?」
「うん?ああ、そうだよ。けど暫く見ない内に彼女……成長した感じが覗えたな。オレもうかうかしてられないか?」
「そこは精進下さい(汗)それよりも――ウチの間の抜けた精鋭はどうでしたか!?賢者さまたるミシャリア様へご迷惑などは――」
魔導式通信を行った王宮の一室から歩み出た影。
年恰好は十代も後半に差し掛かり、
深い蒼の御髪が眩く
燃える様な赤髪を後頭部でポニーに纏める、青年と似た背格好の少女が歩み寄った。
赤き少女は機械式の軽プロテクターに身を包み、一般的に言う
「気苦労と言ってたから――掛けてるだろうな、相当……。」
「……ですよね……(涙)ったくあの子は。――ヒュレイカには、今度会うときにしかと叩き込んで置きます!必ずや――」
「ああ~……ジェシカ?そこは程ほどにな?」
蒼髪と蒼眼が高貴さを漂わせる青年こそ――
そして赤髪赤眼の凛々しき騎士は、
サイザー直下の親衛隊を拝命された少女騎士――ジェシカ・ジークフリードである。
皇子直属親衛隊は現在実験段階の組織であり、後々に拡張性を持たせるも……現状は親衛隊を臨時の呼称としていた。
「ミシャリアがこの冒険を終えた頃には、オレの方でも親衛隊の後発に当たる組織を計画したい……。しかしその組織の形も、ミシャリアの成長次第になるな。」
「親衛隊の後発組織――ですか。陛下は……ゼィーク皇帝陛下は許可下さるでしょうか。」
「それも含めて――ミシャリアには期待しているんだ。オレは彼女の類稀なる研鑽に――」
「そこから生み出される揺るがぬ研鑽に裏打ちされた実力にな。何より父上がオレにそうあれと言葉にしたんだ――それを、オレへ配される臣下へも浸透させたい。」
王宮内通路を足早に行く
「その先駆けとなるのがミシャリアだ。そして彼女が冒険と同時にこなした任務……世界のあらゆる弱者へと、手を差し伸べる
「オレが目指す部隊はその先にある……。そして帝国は世界を統べる国ではない――世界を支え、世界の国々と手を取り合い未来へ進む……そんな国に、オレはしたいんだ。」
「――帝制国ではなく……民主国として。そして支配属国ではなく、連合国として……ですね?」
遠き彼方の夢物語を語る皇子――しかしその双眸へ宿すは、揺るぎなき決意。
それを知る赤き騎士も同じ先を見つめていた。
「ま、今はまだ始まってもいないからな。――まずはその、先駆けとなる少女の手助けが最優先……オレは先んじて西のフェルデロントへ向かう。護衛――頼めるか?ジェシカ。」
蒼き皇子の羨望宿す瞳は、今は蕾の少女へ向けたものであろう――その皇子が期待する少女へ、同じく望みを懸ける赤き騎士は凛々しき敬礼を送って後――
支度も早々に整えた蒼き皇子と供に、早馬を飛ばして一路西へ。
桃色髪の賢者が連れる新たなる仲間の面談のため、
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