自殺対策基本法を読む

https://www.mhlw.go.jp/content/000527996.pdf


 読んだ。


 特に内容をつまびらかに解説しようという気はない。


 そういえばそういうものもあったなと思い、ざっと眺めてみただけだ。


 一点。思うところがあった。


『第五条 国民は、生きることの包括的な支援としての自殺対策の重要性に関する理

解と関心を深めるよう努めるものとする。』


 悪いが、それは拒否させていただく。


 始まりのところからして、自殺に対しての構えが違う。


『第一条 (前略)自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。』


 生きがいを持って暮らすことのできる社会など求めていない。


 私が願ってやまないのは、苦しみが限りなく少ない社会だ。


 だから、


『第二条 自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのな

い個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望を持っ

て暮らすことができるよう、(後略)』


 この理念にも賛同できない。


 この法律には、否、この社会全体には、死を巧妙に隠ぺいする気配がある。


 政府は、自殺を誤った選択としたいのかもしれないが、私から言わせれば、自殺は当然の帰結だ。


 やがて死ななければならない生命を生かさなければならない。賽の河原の如き不毛な作業。うんざりして、死にたくなるのは当然である。


 そもそもの部分で、人生が不毛だという事実から目を逸らし続ける限り、自殺の“対策”は虚しいかけ声倒れに終わるだろう。


 本当に自殺を止めたければ「人間とはどういうものか」に対して、より深い考察と省察せいさつをすべきだと思う。


 生命とは何か。

 人生とは何か。

 幸福とは何か。

 不幸とは何か。

 豊かさとは。

 貧しさとは。

 生きるとは。

 死ぬとは。

 国とは。

 人とは。


 この法は、自殺対策を謳いながらすべてうわべを丁寧に撫でているだけで、痒いところに指一本すら届いていない。


 一つの行政手続法にそこまで求めてどうするというのは、分かっている。


 とある精神科医の方が、「うつ病は人間を知るためのメッセージだと思う」とおっしゃっていた。


 私は、自殺もそうだと思う。


 他の動物は知らないが、死を知り、死を求め、自ら死ねる人間とは何なのか。


 自殺を考えるとは、人間を考えることだ。


 私は、まったく無価値な存在であるという結論に達した。


 あなたはどうであろうか。

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