よく知りもしない人間を、なぜそこまで憎めるのか
以前、書いたように、私は、
さまざまに誤解を招く表現なので、あらかじめ書いておくが、『統合失調症』ではないし、『人格障害』でもない。
ただ、そういう類の人間、人格であると、医者に言われたというだけの話だ。あまり深く考えずとも良い。私は、私だ。
さて、それについて広く浅く調べてみると、なるほどと思う文章にも多く出会う一方、これはよく分からぬという部分もある。
「よく知らない他人と親密であるという確信を持っていることがある」とある。
これが分からない。
これはむしろ、統合失調症の管轄ではないかと思うのだが、自己の空虚さを何らかで埋めようとして、そのような状態になってしまう方もおられるのだろう。
私は、どちらかといえば、自他の境界線をきっちり引く方である。
いっそ断崖といっても差し支えない。
たとえ一親等に起こった不幸であろうとも、『他人事』として処理する。
大層に不適応的な所作であるとは分かっているが、それが私なのだ。
よく、肉親を襲った事件や事故、病に大きな怒りや悲しみを表明する人物が、メディアに登場する。
私とて、共感能力が絶無ではない。
胸に、針が刺さる感触がある。
自然、眉間に力がこもる。
彼らを気の毒に思う。
しかし、「いくらなんでもオーバーだ」とも思う。
自分が殺されたわけでなし、どうしてそこまで憤っておられるのか。
ましてや、他人がされたことに怒り狂って憎しみを募らせ「奴を死刑にせよ」などと、身のすくむような言葉を放つ人々が出てくる始末だ。
私は言いたい「落ち着いてくれ」と。
関係者であれば、まだ分かる。ちょっとついていけないところはあるが、なんとか理解はできる。
しかし、会ったことも話したこともない他人を指差して、自分の身に起こったわけでもない憎しみに駆られながら、罵詈雑言を投げつける人々に関しては、本当に分からない。
理解不能な思考回路を持った、暴虐な侵略異星人に恐怖する者の心境だ。
私には、そういう人たちのほうが、よほど統合失調質で「よく知らない他人と親密であるという確信を持っている」ように見える。
ここまで書いて、私は私の欺瞞に行き至る。
理解不能な脳を持っているのは、私の方なのかもしれない。
遠い彼方の銀河系宇宙人は私の方であって、“他人”を不幸にした“他人”に呪詛を唱える所作こそが、地球人的ただしさなのだと。
偶然、頭は一つ、目は二つ、手足が二本ずつで指が五本ずつの姿かたちをしているが、実のところ、私は人間ではなかったのかもしれない。
私が「過度に共感的かつ情緒的。それ故にたいへん暴力的」と考える社会は、私以外の方々にとって、居心地が良いのだろうか。
そんな訳はなかろう。
私はどうしようもなく人間だし、貴方も貴女も、この不幸と辛苦と憎悪と殺し合いに満ちた世界に辟易としているはずだ。情緒が織りなす暴力的な言動に、恐怖心を抱いているはずだ。
と、これが「よく知らない他人と親密であるという確信」なのだろうか。謎が一つ、少しだけ解けたところで、今日の手紙を締めくくることとする。
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