第30話

テント設営に食事。それにみんなと共に会話とかもした。


「・・・・・・日が沈んで来たし、もうそろそろテントに入ろう」


赤くなっている空を見つめた後、テントの中へと入って行き、本を読んでいるネネちゃんの側に横になる。


「お姉様。もうお休みになられるのですか?」


「うん。明日は早いから、早めに寝た方が良いでしょ」


「そうですね!」


ネネちゃんはそう返事をすると持っている本を仕舞い、俺に抱きついて来た。


「あの、ネネちゃん? どうして私に抱きついてるのかなぁ?」


「お姉様に抱きついていると、安心出来るのです!」


安心って、なんか嬉しそうな顔をしている様に見えるのは気のせいか?


「まぁ、ネネちゃんがそうなら、抱きついててもいいよ」


「ありがとうございます! お姉様!!」


ネネちゃんはそう言うと俺の胸に顔を埋めたので、頭を撫でてあげる。


こう見ると可愛い子だよなぁ〜・・・・・・って、あれ? 寝息が聴こえて来たな。


ネネちゃんの様子を見てみると、どうやら寝てしまったみたいで、すぐに俺の身体から離れてしまった。


「寝るの早いなぁ〜」


そう言った後、目を閉じて眠りに着くのであった。


「ん・・・・・・んん」


設定していたアラームの音に反応して、身体を起こすと大きく欠伸を掻いた。


もう朝かぁ〜・・・・・・って、あれ? ネネちゃんがいない。もしかして、俺よりも先に起きたのか?


そう思っているとテントの出入り口が開く音がしたので、そっちに顔を向けるとネネちゃんがいた。


「おはようございます! お姉様!!」


「ああ、ネネちゃんおはよう。昨日はよく眠れた?」


「はい! お姉様のフカフカなお胸のお陰で、よく眠れました!」


お胸って、これは喜んで良いのか、それとも怒らなきゃいけない事なのか悩むなぁ〜。


「もしかして、私を起こそうとしていた?」


「はい! 食事の用意が出来たので、お呼びする様にお承りました!」


食事の用意?


「誰か朝ご飯を作ってくれているの?」


「はい! 私達影の者が昨日のお礼にと丹精込めて作りました!」


ほうほう、それは有難いなぁ。


「どんな料理が出来ているのか、楽しみだね」


そう言った後、戦闘用の服に着替え始めるが、ネネちゃんが熱い視線で見つめてくるので、ちょっと気になってしまう。


「・・・・・・ネネちゃん。先に行ってて良いよ」


「私はお姉様を連れて来る様に言われているので、そういう訳にはいきません!」


「あ、そうなんだ。でも、私の身体をじっと見つめるのは、何の為なの?」


俺がネネちゃんにそう聞いたら、視線を逸らされてしまった。


あ、黙ってやり過ごそうとしている。出て行って欲しいって伝えても動きそうにないからなぁ〜。このまま着替えるか。


その後、テキパキとマルチカモ迷彩服に着替える終えると、ネネちゃんと共にテントの外へと出た瞬間だった。


「お待ちしておりました。エルライナ様!」


朝とは思えないほどの元気な声でお出迎えされた。なので、俺は思わずビックリして目を見開いてしまった。


「お、おはようございます・・・・・・皆さん元気良いですね」


「はい! エルライナ様が起きる一時間前から起きていたので」


えっ!? 俺が起きる一時間前に起きていただって!


「体調の方は大丈夫ですか? 行く前まで寝ていても構いませんよ」


「お気遣いして頂き、ありがとうございます。ですが私達からしてみれば当たり前の事なので、体調に影響は出ませんよ」


「そ、そうなんですかぁ〜」


なんか、色々やって貰って悪いと思ってしまうよ。


「ささっ、どうぞこちらのイスに腰掛けてください」


「あ、はい」


影の者達に言われるがまま、イスに座ると料理を次々にテーブルの上に出してくれる。


「こちらが昨日取れた鹿のベーコン風ステーキです。それでこちらは食べれる野草をお吸い物しました。そして最後に白米です。どうぞ、お召し上がりください」


「ありがとうございます! 頂きます!」


影の者達にそう言うと、ベーコンを箸で摘み口へと運ぶ。


俺が仕留めた鹿肉を薄く切ってベーコンみたくしたのかぁ〜。鹿肉だから脂が軽くて食べやすいな。しかも塩と胡椒を軽く降って味つけしてある。


「美味しいですね!」


「エルライナ様が上手く下処理をしてくださったお陰です」


野草の方は一度湯通しをしているのか、しんなりしている。


野草の味がそのままの味がする。醤油かなにかを付けて食べたいけど、塩分が多くなりそうだから止めておこう。

それに向こうも野草の味を知っているのか、感想を求めないし。


そう思ってから、今度はお吸い物に手をつける。


「・・・・・・あ、これはこれで好みの味かも」


出し汁を口の中に入れれば、ほのかな甘み広がっていく不思議な感覚。豪華な料理にそっと添えるのには良い味かもしれない。


「本当ですか!」


「はい。ご飯の方は、もしかして私の炊爨すいさんを使いました?」


「えっとぉ〜・・・・・・もしかして、エルライナさんが米を炊く時に使っていた道具の事ですか?」


「はい!」


炊爨とは飯盒はんごうとも呼ばれており、現代では米を炊くだけの物を表している。


「申しわけありません。便利だと思い、使わせて頂きました」


「ああ〜、壊したとか別に使っても構いませんよ。盗んだとか言う話になると、怒りますけどね」


それか壊したとか言う話ね。


「エルライナ様の物を盗むだなんて、絶対にそんな事を致しませんよ!」


「例え話なので気にしないでください。因みにお聞き致しますが、使った炊爨は私の方で洗った方が良いでしょうか?」


「あ、我々の方で洗うので、ゆっくり食べていてください」


影の者はそう言うと、どこかへ行ってしまった。多分炊爨を洗いに行ったんだと思われる。

朝食を済ませた後はアサルトライフルACE32とJERICHO941PSLの動作確認をしてから、軍からの指示をネネちゃんと共に待つ。


「お姉様! 伝令が来ました!」


ネネちゃんが指をさす方向に顔を向けると、一匹の鷹がこっちに向かって来ていた。

その鷹を影の者が腕に乗せると、脚に括りつけている手紙を取って開く。


「伝書鳩ならぬ伝書鷹だね」


「私達が飼っている鷹は優秀なので、狩りの手助けもしてくれますよ」


ほうほう、それは便利な事ですね。


「私もペットを飼ってみようかなぁ?」


前世じゃ、祖父母に任せっきりななってしまう気がしたので、飼いたいと言わなかった。


「お姉様。私達はペットとして鷹を飼っているわけではないですよ」


「それは分かってるよ。私の場合だとさ、一人暮らしだから寂しさを紛らわせる為にね」


「ああ〜、なるほど。それなら、我々の里で生まれた子犬とかは、どうでしょうか? 両親はとても賢いので、きっとその子も賢い犬になると思いますよ」


「それは育てた人の力量の結果だと思いますよ」


俺みたいな素人が育てようとしたら、ワガママな性格で家に客が来たら吠える様な子になってしまう気がする。


「そんな事はありませんよ。現に小さな子供達の遊び相手にもなってくれますし、それに我々の仕事も手伝ってくれますよ!」


「その子って、本当に犬なんですか?」


「はい、歴とした犬ですよ!」


もしかして、俺と同じ転生者だったりする? イヤイヤ、そんな事はないか。


「ま、まぁ・・・・・・その辺りの事は、余裕が出て来てから考えるとしますよ。伝令の内容を教えてください」


「伝令の内容は、今から我々に先行して貰って様子を見に行って欲しい。という内容でした。エルライナさん。準備の方はよろしいですか?」


「私の方は準備が整っています。なので今すぐに行けますよ」


「分かりました。出発致しましょう」


こうしてネネちゃん含めて影の者達と共に、魔族の根城に向かうのであった。

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