第14話
色々あったが、お皿の片付けが済んだ。しかし、リズリナさんが俺の胸で泣いていたせいで服に滲みが出来ていた。
「ゴメン、エルちゃん」
「いや・・・・・・気にしなくても良いよ」
洗えば落ちるし。
「夕食も済んだんですから、明日の準備に取り掛かりましょうか」
「そうね。明日から贅沢な生活が出来ないからねぇ〜」
まぁ確かにそれは言えるなぁ。でもショッピングがあるし、テントもあるからそうでもないか。
「遠征の準備は出来ているけど、荷物の確認だけしておきましょうか」
「そうね。そうしましょう」
エイミーさんとミュリーナさんはそう言うと、リビングから出て行く。
「ねぇ、エルちゃん」
「ん? なんですか、リズリナさん?」
「もしも・・・・・・もしもだよ。魔人を全員倒したら、この先エルちゃんはどうするの?」
「この先? つまり、将来どうしていくの? って聞きたいんですか?」
「うん」
将来の事かぁ〜・・・・・・目の前の事で一杯一杯になっていたから、そんな事を考えてなかったなぁ〜。
「私自身は、この生活を続けていくつもりだよ」
「結婚とか考えてないの?」
「えっ!? 結婚!」
驚いていると、リズリナさんが俺に顔を近づけてくる。
「エルちゃんもしかして、良い相手がいないの?」
「まぁ、私には彼氏がいませんからね」
てか、言い寄られたりされたけど、元ノーマルな男だから嫌な感じして断り続けた。
「ふ〜ん・・・・・・お目にかかる人がいなかったんだねぇ」
「そう言う事だよ」
俺がそう言うと、リズリナさんはつまらなそうな顔でテーブルに上半身を乗っけた。
「あ〜あ、エルちゃんの恋はいつになるんだろうかぁ〜・・・・・・」
「多分、しばらくの間はないと思うよ」
つーか、なんで俺の恋バナをしているんだ? 女子会か? 女子会の定番なのか、これ?
「そういうリズリナさんは、好きな人がいるんですか?」
「好きな人? それはエルちゃんだよ」
「いやいやいやっ!? 異性でお願いしますよ!」
そう言うと俺の彼女が、ニッコリとした顔で俺の元へやって来た。
「えっとぉ〜・・・・・・どうしたんですか?」
「エルちゃんなら、こんな事が出来るんだよ」
そう言って顔を近づけて来た。
えっ!? なに? これってまさかキスですかぁ!
そんな事を思っていたら、ガッチリと抱き締められてしまった。
「エルちゃん大好きだよぉおおおおおおおおおおおおっ!!?」
リズリナさんはそう言うと、顔を擦りつけて来た。
「ちょっ!? なにをやってるんですか、リズリナさんっ!? 服汚れてるから、汚いですよ!」
「私自身がつけた汚れだから、汚いと思ってないもん!」
確かにリズリナさんがつけ・・・・・・って、そんなの理由にならんわぁ!
「離れて下さいぃ〜!」
「ヤダッ! 私はエルちゃんと結婚して悠々自適な生活を送るのぉ!!」
「私が好きなのではなく、このお家に住みいたから、言ってるんですよね?」
「その通り!」
リズリナさんがゲスな事を言ったよぉ!
「リズリナ。その辺にしてあげたら?」
「そうよぉ。私も堪能したいから、代わりなさい!」
自分が俺の胸に埋めたいからかよっ!
「ええ〜、ミュリーナに代わるとエルちゃんを取られる気がするから、ヤダァ〜!」
いや、取られるって・・・・・・いつから俺はリズリナさんのものになったんだ?
「エルライナは私達の共有財産だから、独り占めにしないって」
「いつから私はアナタ達の共有財産になったんですかぁ!?」
そこに驚きだよ!
「それはもちろん、だいぶ前から?」
「そうねぇ〜、エルライナが王都に来てからだったわよね?」
「あれ? スキヤキって食べ物を食べてから、決定したんじゃなかったっけ?」
おい、話の内容が滅茶苦茶だぞ。
「なにはともあれ、私達はエルライナの事を慕ってるって事よ」
「なんでしょう。無理矢理締めくくった感じがします」
「とにかく! 私達の方は遠征の準備が出来たわよ。エルライナの方はどうなの?」
「私の方は、心配要りません。いつでもここを出られます」
そして、無理矢理話題を変えられた気がする。ここを指摘したら、十倍になって帰って来そうだから、止めておこう。
「お風呂も準備してあるし、お風呂に入って眠りましょう!」
「賛成! 誰が一番最初に入る?」
ミュリーナさんがそう言って俺の方を見つめてくる。
なに? 俺に一番最初に入れ。って言いたいのか? だが断る!
「私は後の方で良いですよ」
「そう? なら私が一番最初に入らせて貰うね!」
お、なんだ? この展開は予想外だぞ。もしかして、お風呂場で待ち伏せでもする気なのか?
俺がそう思っている中、ミュリーナさんは機嫌良さそうな顔で脱衣所へと向かう。
「ミュリーナさん。機嫌良さそうでしたね」
「そうねぇ。ところでエルライナ。明日はどうするつもりなの?」
「どうするって・・・・・・合流地点に向かった後に、その場所の安全確保して、味方がくるまで待機する。
その間にエイミーさん達に定期連絡をして貰うんですが、大丈夫ですかね?」
「それなら平気よ」
良かった。もっと他にやる事があるでしょう! って怒られるかと思ったよ。
「私達も戦闘をするのだから、なんでもかんでも自分一人でやろうとしないでね」
「あ、はい」
つまり、エイミーさん達は俺一人に負担をかけない様に配慮してくれるみたいだ。
「とまぁ、真面目な話はこれぐらいにしておきましょう」
エイミーさんはそう言うとソファーの方に座り、読書を始めた。
「エルちゃん。やっぱり私もついて行って良い?」
リズリナさんがそう言って来たので首を横に振った。
「ダメだよ。リズリナさんにはリズリナさんの仕事があるんだから、その仕事を全うしないと」
それに無断で俺達について行っちゃったら、グエルさん達が困るに決まっている。
「それはそうだけどぉ・・・・・・三人だけで行くのは危険だし、なによりもエルちゃんが狙われてるに決まってるし」
「リズリナさん・・・・・・」
俺の事を心配してくれているんだ! 持つべき者は友だよっ!!
「それにエルちゃんの美味しい手料理が食べられるし、なによりもエルちゃんと一緒に遠征した方が快適に過ごせそうな気がする」
「へ?」
この子今、なんて言ったの?
「ああ〜確かに、それはありそうよねぇ〜!」
「でしょ? エイミーさんもそう思わない?」
「そうねぇ〜。キャンプをする為に、いちいちテントを張ったりして、食事の用意も並行してやらなきゃいけないし・・・・・・」
「食料は現地調達が多いから、狩りに行かなきゃいけないもん! それに眠る時だって、虫に集られる心配しなきゃいけないし!」
「火の番もしなくちゃいけないし、見張りもやらなきゃいけないから、身体に負担がかかるのよねぇ〜」
イヤイヤイヤイヤ! 軍の遠征なんだから、それぐらいの事は当たり前じゃないの?
「先に言っておきますけど、テントの設営はしなきゃダメですよ。食料の方はグエルさん達がくるまでは持ち堪えられるほどには、持って行きますから」
まさかこの人達、車中泊をする気だったのか?
「う〜ん・・・・・・やっぱそうなっちゃうのかぁ」
やっぱぁ? やっぱって言ったよこの人!
「私に頼る気満々じゃないですかぁ!?」
「それは頼るわよ。でも助ける時は助けるし、なによりも戦いになったら私達が力になるわよ!」
いや、任せなさい! って言いたそうな顔をしなくても良いから。
「とにかく、明日からは頑張ってくださいよ。出ないと私、怒りますからねっ!」
「そうね。頑張りましょう」
エイミーさんはそう言うと、開いている本に目を向ける。
本当に大丈夫かなぁ?
そう思いながらも、ミュリーナさんがお風呂から出てくるのを待つのであった。
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