第31話

食事を取った俺とネネちゃんは部屋に戻って、ババ抜きを楽しんでいる。


「・・・・・・あの、お姉様」


「ん、どうしたのネネちゃん?」


ネネちゃんが、ちょっと気まずそうな顔をさせながら俺に聞いてくる。


「国王に会いに行かないんですか? それとも行かない気ですか?」


「もちろん行くつもりだよ」


そう言いながらネネちゃんの手に持つカード内の1枚を引き抜き、同じ数字のカードをテーブルに置く。


「もう行ける状態なのに行かないのは、なぜですか?」


ネネちゃんはそう言ってからカード引き抜き、揃ったようなので手札の中にあるカードと一緒にテーブルに置いた。


「約束の時間は午後からなのだから、ほっといても良いと思うよ」


そう言ってカードを引いたらまた揃ったので、カードをテーブルに置く。


「でも不敬ではありませんか? 彼の方達は外で待っているのに対して、こうしてトランプをやっているのは?」


またまたネネちゃんがカードを引くが、今度は引きつった顔をさせて手札の中へ入れてシャッフルさせる。


ババがそっちに行って良かった。


「普通ならね。でも私は名目上他国の貴族の娘だから、あっちも慎重になっていると思うよ」


自国の人間だったら、 いつまで待たせているんだぁ!? と言って押し入れられるけれども、俺にそんな事をしたら国の低能国と言われるか、最悪の場合戦争問題に発展しかねない。なので、ああして俺がくるのを待っているのだろう。


「そもそも論的に失礼な事をしたのは向こうなのだから、下手に出ない方がおかしいでしょう。って、うわぁ」


適当に引いたらババを抜いてしまった。その様子を見たネネちゃんは、良い笑顔をさせていた。


「なるほど。このまま出てしまったら、相手はお姉様にお願いすれば聞いてくれるかもしれない。という考えを断つつもりですね」


そう言いながら、俺の手札から一枚引いてカードをテーブルに置いた。


「そういう事」


そう、一つ思い通りになれば、このお願いも聞いてくれるかな? と思う人が多い。なので、こうして予定時間までネネちゃんと遊んで時間を潰そうとしている。


そう返事をした後にネネちゃんの手札からカードを一枚引き抜いた後に、揃ったカードをテーブルへと置いた。


「ネネちゃん。ここからが勝負だよ」


俺の手札には三枚のカード。その内の一枚がジョーカーである。なので、ジョーカーを引く確率は1/3の真剣勝負である。


「う〜んとぉ・・・・・・これで!」


ネネちゃんがそう言って引いたのはババで、とても悔しそうな顔をさせた。


「負けませんよ。お姉様ぁ!」


彼女はそう言ってからカードをシャッフルさせると、三枚を揃えて俺の前に突き出した。


「ん〜、これかな?」


俺が引いたカードなんと、ババだった! ネネちゃんは してやったり! 顔をさせて俺を見つめてくる。


「やるねぇ!」


そう言ってからカードをシャッフルさせてから、ネネちゃんにカードを突き出した。


「じゃあ・・・・・・これで!」


ネネちゃんが引いたのはなんと当たりのカード。なのでそのまま手札のカードと共にテーブルへと置いた。


「なっ!?」


「さぁ、お姉様の番ですよ」


「・・・・・・クッ!?」


悔しそうな顔をさせて、残り一枚のカードを引いた。そう、これは俺の敗北を意味していた。


「負けた」


「お姉様に勝ったぁ!!」


まさかババ抜きで負けるとは思ってもみなかった。


「あのぉ、エルライナはん。楽しそうに遊んどるとこ申し訳ないんやけど、外にいる国王の使いが エルライナ様はまだこないのか? と言い出しているんですけどぉ。どうしやしょう?」


「予定より早く来たのは向こうだから、放っておいても大丈夫です」


「そうでやしたか。エルライナ殿がそういうのでやしたら、彼らを放っておきやすね」


マルコさんはそう言うと、そそくさとカウンターの方へ戻って行く。


ついに痺れを切らせ始めたか。


「お姉様、本当に大丈夫ですかね?」


「大丈夫だから、そんなに心配そうな顔をさせないで。次は神経衰弱でもやろうか?」


「は、はい」


不安そうなネネちゃんを余所に神経衰弱する為にシャッフルしたカードをテーブルに並べていると、またマルコさんが申し訳なさそうな顔で今度は話かけて来た。


「あの、度々すいやせん。エルライナはん」


「どうしたんですか、ガルマさん?」


「兵士さん、というよりも騎士達がエルライナはんの部屋に入れて欲しいと言ってやして・・・・・・」


「え?」


オイオイオイオイ、どういうつもりなんだ? ・・・・・・って。


「その様子を察するに、騎士達が私の部屋の前にいるんですね?」


「はい、しかも部屋に入れて欲しいと仰っておりやす」


「ハァ〜・・・・・・この国騎士団はプライバシーってのがないのかなぁ?」


ドアの向こうから、ヒソヒソと何かを言い始める。


「まぁ良いでしょう。入って来ても良いですが、2人までですよ」


「っと仰っておりやすが、誰と誰が行きやすか?」


ドアの向こうで会議らしき話し合いがされた後に、シーンとした多分この部屋に入る人が決まったんだろう。


「エルライナ様、入ってもよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


「失礼します!」


そう言って部屋に入って来たのは、剣を腰に携えた気の強そうなスレンダー人族の女性と杖を持った気の弱そうな猫族の女性が入って来た。


「お初にお目にかかります。ウォント王国騎士団の副団長 リッカ・ウェルス です」


「お、おなじく。ウォント王国騎士団に所属している モナ・イルコナ です」


「ご丁寧にどうもありがとうございます。私の名は エルライナ・ディア ・バルデック。リードガルム王国の公爵家の娘です。

それで、私の部屋に押しかけて来てなんの用なのですか? くだらない事でしたら怒りますよ」


威圧感たっぷりにそう言うと、猫族の子が ヒィッ!? と怯えた様子を見せた。


「ご、ご無礼を承知で申し上げます。エルライナ殿に勇者達と共に戦って貰いたく・・・・・・」


「却下します」


「どうしてですか?」


「理由は言わなくても分かるはずです」


俺がそう言うと下を向いて黙り込んでしまった。


「面会の時に発言するべき言葉をここでするとは、この国の騎士の程度が知れますね」


「なっ!? 我々を侮辱してるのですかぁ!?」


「なにを仰っているのですか。先に無礼を働いたのはそっちですよ。面会は午後のはずなのに朝早くに迎えに来て、外で私がまだこないのか? と言っている上に、あろう事か部屋に押しかけて来て私にお願いするとは・・・・・・これを侮辱と言わずなんと言えば良いのですか?」


「お姉様の仰る通りです」


ぐうの音も出ないのか、悔しそうな顔で俺を見つめていた。


「一応言いますが、これが理由で謁見に行く気をなくした。って言われてもおかしくないのですよ。分かってますか?」


そこまで言うと二人は自分達がとんでもない事を俺にやったのを理解したのか、顔を青ざめさせて頭を下げて来た。


「も、申し訳ありませんでした!」


「ご無礼を致しまして申し訳ありませんでした!」


「まぁ、今回の事は許しましょう。ですが次はないと思っていてください」


「「はい!」」


しかし、気になるのはあれだよなぁ。


「私に頭を下げてお願いするほどって事は、それほど切羽詰まっているのですね?」


「えっとぉ、そのぉ・・・・・・」


「正直に言ってください」


「は、はい!」


そう返事をした後にリッカさんが正直に話始めた。


「四人以外の勇者達が指示に従わなくなってしまってから、色々な方面で危機を抱えているのです」


「まぁ、クーデターが起きそうなほど王国に対しての反感が大きいって言ってましたしね」


「な、なんでその情報を知っているのですか?」


「総合ギルドで情報を得たんです」


俺の言葉に二人は ここまで情報が回っていたとはぁ・・・・・・。 と頭を抱えていたのだ。

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