第14話

街の中に入ったのは良いけど・・・・・・。


「総合ギルドの場所を聞くの忘れてた!」


どうしよう、誰かに聞こうかな? でもそうしたらネネちゃんに失望されそうな気がする。いや待てよ。マップを開いて確認すれば済む話か。


「お姉様、総合ギルドは向こうです」


「へ?」


そう言って袖口を引っ張ってくるネネちゃんを、ポカンとした顔で見つめる。


「ネネちゃんはもしかして、この街に来た事あるの?」


「いいえ、来た事はありません。でもそこに案内の看板が飾ってありましたから」


「え?」


ネネちゃんが指をさす方向を見つめてみると、なんと 総合は二つ目の角を曲がったらあります。 って看板が飾ってあった。


「・・・・・・親切だね」


「そうですね。早速総合ギルドに向かいましょう!」


「そうだね。あ、リンゴジュースいる?」


「リンゴジュース欲しいです!」


ペットボトルに入っている冷えたリンゴジュースを二人で飲みながら、総合ギルド支部へと向かった。


「ここが総合ギルドの支部かぁ〜・・・・・・」


建物がちょっと古ぼけて感じが否めないが、今にも壊れそうという感じじゃないので気にしなくても良さそう。


「それじゃあ入ろうか」


「はい!」


仲良く総合ギルドの中に入って行き、受け付けに最後尾といっても3人しかいなかったので、すぐに俺達の番が来た。


「次の方どうぞぉ!」


「あ、はい!」


そう返事をしてからカウンターに向かうと、受付けのお姉さんは一瞬だけ驚いた顔をさせた。


「本日はどの様なご用件でしょうか?」


「この街にくる前に村を襲っていたオークとゴブリンの群れを倒して、村人達をここまで避難して来た事を報告をしに来ました」


俺がそう言った瞬間、受付けのお姉さん疑いの目を俺に向けて来た。


「・・・・・・そうですか。確認をしたいのでギルドカードをこちらに渡してください」


「はい、分かりました」


そう返事をして総合ギルドカードを渡すと、受付けのお姉さんは うんうん。 と頷いた後にまるで石像の様に身体の動きが止まってしまった。


「お姉さん、大丈夫ですか?」


そう声をかけるが、返事どころか微動だにしない。


「お姉さん? もしもぉ〜し! 大丈夫ですかぁ〜?」


今度は大きめの声でそう言うが、全くと言って良いほど反応がない。


「どうしよう。他の職員を呼んで対応して貰おうかなぁ?」


「そうした方が早そうですね、お姉様」


「ネネちゃんがそう言うのなら、そうしようか」


他の職員はどこにいるのかなぁ? と思いながら辺りを見渡している時だった。


「・・・・・・だ」


「お?」


やっと再起動したか?


「本物のエルライナ様がやって来ましたぁぁぁああああああああああああっっっ!!?」


いきなり大声を出すものだから、ビックリしてしまった。


「お会い出来て光栄です! エルライナ・ディア・バルデック様!」


受付けのお姉さんがそう言って頭を下げるので、周りがざわついた。


「エルライナ? あの隣の大陸で有名な?」


「本物? 偽物じゃなくて?」


「受付け嬢が頭を下げるって事は、マジもんなんだろうな」


「まさか、本当に本物? この間みたいな偽物じゃなくて?」


ん? 今気になるワードが聞こえたな。


「コホンッ!? 後ろが詰まっているので、報告を済ませましょうか」


「あ、はい! 先ほど申し上げた内容が嘘か本当かたしかめるので、この真理の水晶に触れてください」


「あ、はい」


返事をした後に真理の水晶に手を置くが、お姉さんが震えているのが個人的に気になる。


「アナタは村を襲っていた魔物達を倒しましたか?」


「はい、私とこの子で倒しました」


水晶は青いままなので、受付けのお姉さんを含めた周りの人達は驚いていた。


「アナタ様が村人達をこの街まで連れて来たのですか?」


「うんと、ちょっと違いますね」


「と、言いますと?」


「村に来てくれたライボルト伯爵様達と共に、ここまで来ました」


以前として水晶は青いままなので、周りから オオ〜ッ!? と言う声が聞こえて来た。


「さ、最後に聞きますが・・・・・・アナタ様は本物のエルライナ様ですか?」


「あの、本物ですけどぉ・・・・・・どうしてそんなに疑うのですか?」


受付けのお姉さんにそう言ったが、お姉さんは目を見開いたまま青い水晶を見つめていた。


「また固まっちゃったよ。どうしようネネちゃん?」


「本物のエルライナ様だぁぁぁああああああああああああっっっ!!?」


今度は涙を流しながら俺の手取った。


「お会い出来て光栄でずぅ〜〜〜! エルライナ様ぁ〜〜〜〜〜〜っ!?」


も、もしかして、この人も俺のファンなのか? ってそんな事よりも!


「ほら、これで涙を拭いて」


「ありがとうございまずぅ〜〜〜!!?」


ポケットから取り出したハンカチを受け取ると、それで涙を拭くが全く止まる気配がない。


「あの、一応ゴブリンとオークの死体を持って来たので解体して頂きたいのですが、どこに出せば良いですか?」


「解体場があるのでぇ、ぞぢらに持ってって頂げれば職員がやりまずぅ〜!! わだじが、あんな・・・・・・・うわああああああんっ!?」


彼女はそう言いながら泣き崩れてしまった。


「大丈夫ですか?」


「ずみばぜん、ズズッ。私、エルライナに本物の会えて、感動しているんです」


「そ、そうなんだ」


もしかして、この人も俺のファンなのか?


「あ〜、うん。私達で解体場に行くから、お姉さんは裏で休んでいた方が良いよ」


「はい、ぞうざぜで頂きまずぅ〜! 解体場はあっちでずぅ〜」


「わかった。ありがとうね」


「はい。ごぢらごぞ、ありがどうございまじたぁ〜!」


そう返事をしてから解体場へと向かう。


「すみません。モンスターを買い取って貰いのですが、大丈夫ですか?」


「ん? ええ、はい。大丈夫ですよ。種類と数を教えてください」


「ゴブリン十四体にオーク十七体。計三十一体です。どこに置けば良いでしょうか?」


「そんなにいるのですかぁ!?」


驚いた顔でそう言ってくるおじさんに対して、俺は はい。 と笑顔で答えた。


「ここに全部置いてください」


「分かりました」


指定された場所に魔物を山積みに置いたら、おじさんが近づいて魔物を種類ごとにせん別していく。


「エルライナ様ぁ〜!」


後ろから声をかけられたので振り返って見てみると、なんと先ほどの受付けのお姉さんがこちらに向かって走って来ているではないか!


「お忘れ物です!」


「あっ!?」


そういえばギルドカードを返して貰うの忘れていたな。


「わざわざありがとうございます」


「いいえ、返して忘れた私の責任です! すみませんでした!」


彼女はそう言うと深々と頭を下げてギルドカードを差し出して来たので、俺はギルドカードを返して貰った。


「とりあえずこれが終わってから言おうと思っていたのですが言いますね。今回の件に関しては支払い金額をライボルト伯爵様とご相談をしてください。

料金の方はリードガルム王国の王都と、魔国クシュウのオウカ様の元に半々に送ってください」


「はぁ、どうして半分づつお金を別の国に送るのですか?」


「私と彼女で分け前を分けているんです」


「えっ!?」


ネネちゃんが信じられない。と言いたそうな顔で俺を見つめて来た。


「私はお姉様の様に活躍していないので、報酬を受け取る権利はありません!」


「ネネちゃんは充分戦ったし、あの村の為に治療やなんかをしていたよ。だからお金を受け取る権利はあるよ」


「ですが、私はその・・・・・・ですね」


ネネちゃんはそう言いながら身体をモジモジさせるので、その身体を抱きしめてあげる。


「お、お姉様!?」


「私がネネちゃんにそうしたいと思ったからそうしてるだけ。だからそんなに気にしなくても良いよ」


「お姉様・・・・・・はい! 有り難く受け取らせて頂きます!」


彼女もそう言うと、ギューッと俺の身体を抱きしめたのだった。


「・・・・・・羨ましい」


それと、羨ましそうに見つめている受付け嬢に気づかぬフリをしておこうか。

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