第21話

大使の護衛任務の為に、待ち合わせ場所にいるのだけれども・・・・・・。


「ツラい。マジでツラい」


ゲッソリした顔で入り口前にいた。なぜかって?

昨日家に帰ったらレンカさん家の前で待っていて、そのまま家に連れ込むとファッションモデルを”無料タダで夜遅くまでやらされた“。


「ハァ〜〜〜・・・・・・もうヤダァ」


一日泊まり込みなら良いけれども、レンカさんは アナタの留守の間は任せて! と言って来たのだ。

もちろん断ったけど、 ヤダヤダァ〜! エルライナはんのお家にいるぅ〜!? 子供の様に駄々こね始めた。待ち合わせの時間も迫っていたので、結局俺が根負けする事になった。

なので、俺が持っていたカギをレンカさんに預けてここに来た。ちなみに、装備はいつもの通りだ。


「おはよう、エルライナさん」


「おはようございます。オウカさん」


「あら、どうしたの? 疲れた顔をしてるけど、大丈夫?」


「アハハハハハハ。大丈夫ですよ・・・・・・ハイ」


念の為にエナジードリンクを飲んでブーストしてるんでね。超元気ですよ、身体の方はだけど!


「そう? まぁ無理だったら私の護衛が、なんとかするから言って頂戴」


「護衛?」


俺の他に誰かを雇ったのか?


「紹介するわ。二人共、来て」


「「ハッ」」


返事をした後に、刀と薙刀を帯刀した二人の魔族の男性がオウカさんの隣に並んだ。


「ウチを護衛してくれている ユウゼン と トウガ よ」


「 ユウゼン です。武器は見ての通り刀です。よろしくお願いします」


「我が名は トウガ 薙刀を使いし者だ。よろしく」


二人はそう言って頭を下げて挨拶するので、俺も同じ様に挨拶をする。


「あ、エルライナです。今日はよろしくお願いします」


「良いエルライナさん。彼らも“私と同じ存在よ”」


「え? 同じって、どっからどう見ても魔ぞ・・・・・・あ!」


魔族じゃないですか。 と言おうとしたところで、オウカさんが言った意味を理解した。


「まぁ、募る話は馬車の中でしましょう」


「えっ!? 私は護衛ですから、外にいた方が良いんじゃないのでは?」


「良いから良いから、二人に任せておけば大丈夫よ」


ここで 乗る。 乗らないの。 の抗議して止まっていると時間がもったいないので、オウカさんの指示に従い、馬車に乗る事にした。


「乗ったわ。出して」


オウカさんがそう言った途端、ガクンッ と揺れた後に馬車が走りだした。


「さて、どこから話しましょうか?」


「一応神様から使者になる条件だけは聞いたので、そこは省いて大丈夫です」


「あらそうなの? なら、改めて自己紹介するわ。

私の名前は オウカ・コノエ 日本風に直せば 近衛 桜花 になるわ」


まぁ魔族の人達の名前を聞いてて、苗字と名前が逆じゃないかと察していたよ。


「転生する前は 宮口みやぐち めぐみ って言う名前でね。銀行員をやっていたのよ」


えっ、銀行員って!?


「結構良い立場にいたんですね」


銀行員なら安定したお給料が貰えるし、それに変なヘマさえしなければクビを切られる職場じゃない。


「そうね。一般的に見れば、 良いところへ就職出来たね。 って思われる職場だけど、実際にはツラい現場よ」


「どうしてですか?」


「入社してからすぐに色んな資格を取る様に言われるし、仕事にノルマがあって、それをこなさないと肩身の狭い思いをするし、融資の相談をする時は相手が経済的に払えるのかどうかとか、持ち逃げされないか念入りに調べなきゃいけないし、あとは・・・・・・」


とても暗い表情でブツブツ言う姿に怖さを感じたので、無意識に顔を引きつらせて仰け反らせてしまう。


「あのクソ上、ハッ!? まぁそれはともかくとして、私は過労死で死んじゃったのよ」


「過労死!?」


過労死。それは、長時間の残業や職場の人からのパワーハラスメントなどにより、死んでしまうケースの事と思われるが、死ななくても過労死認定される場合があるらしい。

例えば、上司からのパワハラにより、仕事に復帰出来なくなるほどの精神障害になってしまうケースなどだ。


「・・・・・そういえば、そんなニュースが二年前にやっていた気がするなぁ」


たしかニュースの内容は、勤務中に女性が急に倒れてしまい、救急車に緊急搬送されたが病院で死亡が確認された。けれども、不思議なのがその後の話。


「銀行員の女性が亡くなって数日後に、記者会見していた代表と数名、それに女性の上司が突然行方不明になった。

メディアによると責任逃れの為に海外へ逃亡したか、どこかで身を潜めているのかもしれない。って語ってましたね」


で、ヒドい憶測だと富士の樹海で仲良く自殺した。である。


「あら、察しが良いわね。その死んだ銀行員の女性が、前世の私なの」


「あ、そうなんですか」


「あの上司達はパワハラ、セクハラ、ライバルを蹴落とす為にその同僚にモラハラをさせる。のオンパレードのクズどもだったからねぇ」


パワハラの一つだけならあるあるだが、セクハラと、同僚にモラハラをさせるのはヤバくないか?


「私もね。上司からのパワハラとセクハラに加えて、 そんな事を言うんなら、お前をクビにする。 って上司と同僚に脅されて残業も夜遅くまでさせられていたから、毎日が怖かったわ」


うん、それは厚生労働省に相談ものでしょ。


「で、仕事の途中でバッタリ倒れちゃったの。死んだ後に私に 使者になって欲しい。 って言って来たのが魔族が崇める女神、シキオリ様なの」


「へぇ〜、ちなみに聞きますが、シキオリ様からどんな事をお願いされたのですか?」


「魔国の経理がメチャクチャな状態だから、銀行員をやっていたアナタになんとかして貰いたい。 って頼まれたの」


「へぇ〜、そうなんですか」


経理がメチャクチャってぇ〜・・・・・・どんな人が経理に就ていたの?


「それで、私はOKする代わりにある条件を出したのよ」


「条件、ですか?」


なんだろう、聞いていて嫌な予感がする。


「私に嫌がらせをして来た上司達を、どこかのブラック企業に飛ばして私と同じ目に合わせてください!! しかも一生っ!! って」


「それはそれで問題あるんじゃない、ん? 待てよ・・・・・・あっ! 銀行の代表取り締まり達が失踪したのは、アンタのせいだったんですか?」


「そうよ」


キッパリと言うな。しかもしてやったぜ! って顔をしてるぞ、この人。


「ちゃんとOKの二文字を貰えたわ」


「なんでっ!?」


「アイツらがこのまま居座っていたら、色んな人に悪影響を及ぼしちゃうから消さないとダメそう。 って理由らしいわ」


「そ、そうなんですか」


黒さ孕んだ笑顔を見て、これ以上は聞いちゃいけないな。 と思ってしまった。


「・・・・・・あ」


「どうしたの、エルライナさん?」


「前方に敵がいます」


数は四匹でこの辺りは草原だから、ウルフかゴブリンのどちらかだろう。それに、真っ正面からこっちに向かって来ているので、素通りするのも無理だろう。


「まぁ先ずは、馬車を止めて貰えますか。私がるので」


IWI ACE32 のコッキングハンドルの引っ張りながら言う。


「ええ、分かったわ。止めてちょうだい」


オウカさんがそう言うと、馬車はゆっくりと止まる。それと同時にドアを開けて馬車から出る。


「さてと、やりますか」


そう言ってからニーリングなり、セレクターをセミオートに合わせて遠くにいるウルフ達に向けて ACE32 を構える。


200m。遠いからもう少し引きつけよう。


「本当に魔物がいる!」


護衛の言葉を気にせず、ウルフ達が射程までくるのを待つ。


もう少し・・・・・・あともう少し。


そしてウルフが100mぐらいに近づいたところで、トリガーを引いて弾頭を放つ。すると、先頭を走っていたウルフがすっ転んで倒れた。


「一匹め!」


そのまま斜め後ろにいたヤツを狙って三発撃ち込み倒すと、そのすぐ後ろにいたウルフを巻き込んで倒れた。


ラッキー!


そう思いながら、最後の一匹を二発撃ち倒す。


「終わっ、ん?」


二体目のウルフに巻き込まれて転んだウルフが、立ち上がろうとしてした。


させるか。


そう思いながらそのウルフに頭を狙い、そして撃ち抜く。地面に沈む姿を見つめる。他に敵がいないか念の為に周囲を警戒する。


「・・・・・・クリア。今度こそ終わった」


そう言うと立ち上がり、膝についた土をはたき落とす。


「あのウルフを回収しに行きましょうか」


「そうだね。しかし、未来の銃はスゴいなぁ〜」


未来の銃?


「あのね、この人は前世でははね 沖田 総司 って名前だったの」


「へ?」


沖田 総司 って、新撰組の 沖田 総司 の事だよね?


「それと、もう一人の方は三国志で有名な 関羽 なの」


「エエエエエエエエエエエエッ!!?」


驚きのあまり大声で叫んでしまった。

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