第15話

ピピピピッ!? と言うようなアラーム音が耳に届く。俺はそのアラーム音を消すために、右手を伸ばしてOFFボタンを押す。


懐かしい過去を見たな。


そう思いながら状態を起こした後に右手で髪をかき上げながら天井を見つめるが、その表情は悲しげである。


もう吹っ切れた事だから、今の今まで気にしていなかったけど、胸が苦しいのはなぜなんだ? アイツと血が繋がっているからか? ・・・・・・まさか?


「・・・・・・父親を思っているのか?」


訣別したヤツの事を思っているのなら、それはそれで違うはずだ。だって、俺との縁を切るのがアイツの望みであり俺の望みでもあった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、考えるのを止めよう」


今更アイツの事を思ったって意味がない。だってアイツは・・・・・・。


「ん・・・・・・おねえちゃん、おはよう」


そんな事を思っていたら、リマちゃんが身体が起こしてあいさつをしてきた。


「おっ!? おはようリマちゃん」


いつもなら俺が起こすか、お婆さんに怒られながら起きるかの二つだったのだが、起きてくるとはビックリだ。


「リマちゃん一人で起きれて、えらいえらい!」


そう言って頭を撫でてあげると嬉しいのかニコニコするけれども、まだ眠たいのか顔がトロ〜ンとしている。


「みゅ〜〜〜・・・・・・」


そう言うと再びベッドへと身体を横たわらせて眠ろうとしている。


「ちょっ!? リマちゃん! せっかく一人で起きられたんだから、また寝ちゃったらダメよ!」


「むぅ〜〜〜、眠いよぉ〜〜〜・・・・・・」


か、可愛いいっ!!? このまま寝かして。イヤイヤイヤイヤイヤッ!? リマちゃんの教育状よろしくない!

ここは心を鬼にして起こすべきだ! あ、でも無理矢理起こしたのが原因で嫌われるのは避けたいなぁ〜。


「どうしたものかぁ〜・・・・・・そうだ!」


自分が思いついた方法でリマちゃんを起こす様子を頭の想像しただけで、面白そうな事になりそう感じになりそうだ。なので、ウキウキした気持ちで寝ているリマちゃんの肩に手を置いて身体優しく揺する。


「リマちゃん、起きて。二度寝はダメだよ」


「ムゥ〜・・・・・・」


起きたくないよ。 と言わんばかりに、うつむせなって枕に顔を埋めてしまった。その行動を見た俺は思わず、 アラヤダ、可愛い! と思ってしまう。


「リマちゃん、起きないとお婆さんに怒られちゃうよ」


「・・・・・・」


ダメだ。もうこの子は夢の世界へ旅立ってしまった様だ。ならば仕方がない。許せよリマちゃん!!


「寝坊助な悪い子にはお仕置き!」


そう言いながら俺の手をリマちゃん両脇へ侵入させる。そして!


「秘技! 実力行使!!」


脇腹侵入させた手の指で身体を撫で始める! そう、これは誰もがやった事のある技。くすぐり、否! コチョコチョ攻撃だ!


「ッ!? キャハッ!? キャハハハハハハッ!!?」


擽りを始めてすぐに埋めていた顔を上げた笑い始めた。効果抜群だああああああッッッ!!!?


「お、おねえちゃん! ヒッ、ひきょうだよ! アハハハハハハハハハハハハッッッ!!?」


身をよじりながら抗議してくるが、俺は御構いなしにコチョコチョ攻撃を続ける。


「起きるなら止めるけど」


「お、おきる! リマちゃんとおきるからぁ!」


「ならばよし」


そう言うと脇腹に突っ込んでた両手をどかしてあげる。するとリマちゃんが上半身を起こして、こっちを見つめてくるが笑って疲れたのか息が荒い。しかも、なにか物申したい感じの顔をしていた。


「おはようリマちゃん」


「おねえちゃんのえっち」


えっち? エッチだと! どこにエロい表現があったんだ? しかもどこで覚えたの、その言葉は? その幼さでその言葉を知っているのは教育上よろしくないと思いますよっ!!


「エッチって・・・・・・まぁいいや。顔洗ってあげるからこっちにおいで」


「はぁ〜い」


リマちゃんは素直にそう言うと、洗面台まで来てくれた。そこで顔を洗ってあげてから、顔についている水滴をタオルで拭いてあげる。


「キレイなったね」


「うん!」


「じゃあ次は」


「クシでかみをとかす!」


「そうそう! じゃあイスに座ってね」


「はぁ〜い!」


元気な声で返事をするとイスに座る姿を見た俺は、 やっぱりこの子はいい子だなぁ〜。 と思いながらヘアーブラシを取り出して髪を梳かしてあげる。


「・・・・・・ねぇ、おねえちゃん」


「ん? どうしたの」


「今日でおねえちゃんが、いなくなるんだよね?」


「あ、うん。そうだよ」


「リマ、さびしいよぉ〜」


分かる。その気持ち分かるよ! でもね。お姉ちゃんだって寂しいけど、やりたい事がたくさんあるから・・・・・・なんて言ったら引き止められるから、言えないなぁ〜。


「えっとぉ〜、リマちゃんは自分のお母さん達が帰ってくるって話しを聞いてる?」


「えっ!?」


振り返ってこっちを見つめてくる様子を見た俺は、 あのお婆さんは、やっぱり話してなかったんだな。 と思う。


「リマ、きいてない!」


「明日や明後日の帰ってくるって訳じゃないけど、お母さん達がお家に帰ってくるみたいだよ」


「そうなの! うわぁ〜い!!」


リマちゃんが両手を上げて嬉しそうにしている。


本当にご両親が大好きなんだなぁ〜。


「だからね。お父さん達が帰ってくる日まで良い子で待っていようね」


「うん!」


「ブラッシングが終わったから、もう行ってもいいよ」


「はぁ〜い!」


そう元気に返事をすると、お婆さんのところへ行くのか部屋を出て行く。その姿を見送ると自分の方の準備に取り掛かる。


あれ? トレーニングをする俺と同じ時間に起きてよかったのかなぁ? てかリマちゃんが起きている時間を知らないじゃん!

あっ! あと荷物をまとめておこう。もうここに宿泊しないから。


そう思いながら自分の荷物をまとめてストレージに入れてから忘れ物がないか部屋の中を見て回る。

確認が終わるとトレーニングに出掛けようと、部屋から出たのだがぁ〜・・・・・・。


「ゴメンなさぁ〜〜〜い! うわぁ〜〜〜〜〜〜んっ!!」


「アイツはお客様なんだから部屋に入って寝るんじゃないって、いつも言ってるでしょうがぁっ!! 全く懲りない子ねぇ!」


・・・・・・うん。いつも通りの状況だ。気にしなくていいな。


そう思いながらお婆さんとリマちゃんがいるカウンターに近づくと、カギを置く。


「はい、お婆さん。カギを渡しますよ」


「はいよ。もうここを利用しないのかい?」


「もう荷物もまとめたので、戻ってくる事はないです。今までお世話になりました」


そう言いながらお婆さんに頭を下げると、 フンッ!? と言う言葉が聴こえて来た。


「そうかい。アンタがいなくなれば厄介ごとがこなくなるから、清々するわいっ!!」


相変わらずヒドい事を言うお婆さんだなぁ〜。厄介ごとなんて持ち込んだ事なんて一回もないんだけどなぁ〜。


「でもまぁ、これからも冒険科を続けて行くんだろう? 身体に気をつけるんだね」


「あ、はい!」


なんだかんだ言っても、俺の事を心配してくれてるんだなぁ〜。


「・・・・・・おねえちゃぁ〜ん」


隣のリマちゃんを見てみると、うるうると瞳を揺らして、今にも泣きそうな顔のリマちゃんがこちらを見つめていた。


「リマちゃん。もう会えなくなる訳じゃないからね」


そう言って頭を撫でてあげるが、逆効果だったのかボロボロと大粒の涙を流し出す。その様子を見た俺は胸を締め付けられる様な気持ちになるが、そこは大人としての対応を取る事を優先した。


「それに昨日言ったでしょ。 今日だけ。 って」


「・・・・・・うん」


「だから、また会おうね。リマちゃん」


「おねえちゃん・・・・・・バイバイ」


後ろめたさを感じながら宿屋を出ていつものトレーニングに行く。そしてトレーニングを終えて念願のマイホームに帰宅したのだが、なぜか誰もいないはずの家の中から話し声が聞こえてくる。


あれ? 誰かいるのか? ってアイーニャ様達しかいないか。また家に上がり込んでいるんだなぁ〜。


そう思いながら掛かっているカギを解除してからドアを開いて入ると、なんと意外な人が玄関に現れた。


「おかえりなさい。エルライナ!」


「ミュリーナさん!?」


なんで家に上がり込んでるの、この人は?


「エルちゃん! おかえり!」


「リズリナさんも!?」


一体全体これはどうなってるんだ?


二人のにこやかな顔を交互に見つめながら、そう思うのだった。

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