第10話
「よっこいしょ。フゥ〜・・・・・・宿に着いたぞ。エルエル」
俺を担いで銀色の竜亭まで運んで来てくれたアイーニャ様が下ろしてくれるが俺は余りの恥ずかしさのせいで、真っ赤な顔を覆ってその場でしゃがみ込んでしまう。
「アァ〜〜〜・・・・・・恥ずかしい〜〜〜。死にたい。今すぐに死にたいよおおおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ここに運ばれている間に一体どれだけの数の人におパンツを見られてしまったのだろうか? 注目浴びていたから百人? いや、もっとたくさんの人に見られてたかもぉ〜。
「死にたいって、なにをそんなに恥ずかしがっているんだ?」
「アンタのせいでしょうがっ!! アンタのぉっ!!」
公衆の面前であんな姿を晒されたら、普通に恥ずかしくてこうなるでしょうがっ!!
怒っている俺に対してアイーニャ様は、知らん顔をしながら膝をついて俺の顔を見つめてきた。
なので、 謝ってくれる。 と思った瞬間だった。なぜか急に下を向いてニヤついた。
「姉貴の言う様に可愛い下着を履いているな。どこで買ったのさ?」
「にゅわぁぁぁあああああああああっっっ!!!?」
悲鳴を上げると、慌ててスカートを掴んでいたアイーニャ様の手を払い除けて下ろす。
「なにをするんですか! この変態っ!!?」
「いやぁ〜、だって。姉貴がエルエルのパンツを見てるのに、アタシがエルエルのパンツを見てないのはさすがに不平等でしょ? 姉貴だけ見れてズルいと思わない?」
「意味が分かりません」
しかもそれって単にアイーニャ様が気になったから見たくなっただけじゃないの?
「絵柄がある下着が、とても可愛らしかったです。ちなみにエルエル様のパンツの描いてあるのは、ウルフのお手手ですか? それともライオンのお手手ですか?」
「・・・・・・どちらも違います。猫さんのお手手です」
猫さんの肉球下着セット。俺がやっていたゲームで課金で手に入るアイテムで、装備欄のインナーである。
これをつけて短いスカートを装備をすれば、なんとチラリズムが見られるのだっ!!
しかしTバックなどのアブノーマルな下着には、年齢制限に引っ掛かってしまう。と言う理由でその手の下着を履いてチラリズムしても、スカートの中が完全見えない様に黒いシルエットになって見えない様にパッチを当てられてしまった!!
一部のプレイヤーから悲鳴が上がったのは言うまでもない。
俺自身もその手の下着を持っているから、着たらぁ・・・・・・あ、履く勇気がないから無理っぽい。
「アタシ自身も自分で下着を買いに行くけどさ、アンタが履いている様な下着を見た事ないよ。本当にその下着をどこで買ったのさ?」
「私も欲しいので、教えて頂けると有り難いです」
「えっとぉ〜・・・・・・そのぉ〜、ですね」
ゲームの課金で手に入れました。 なんて言ったら、転生者だってバレるから言えない。俺が利用しているショッピングでも手に入るか分からないし。
「まぁ良いさ。おーいクソババァ! 生きてるかぁー!? 死んでたらお墓に行ってお参りしてやるから、場所を教えてくれなのさぁーっ!!」
ちょっ!? お婆さんに失礼ですよっ!?
「なに勝ってな事を言ってんだい!! アタシャはこの通り生きているわっ!! このクソ娘がぁっ!!?」
怒った表情でアイーニャ様の前までズガズガと歩いて行くと、その顔を睨みつけるが当の本人はヘラヘラした顔でお婆さんを見つめていた。
「クソババァとは言う様になったじゃないか、アイーニャ」
「お〜、お〜、くたばってなくて良かったのさ」
なんか、喧嘩が起きそうな雰囲気を出している気がするけどぉ〜・・・・・・止めに入らなきゃいけない状況にならないよね?
「ケッ、アタシャはアンタが思っているほどヤワな身体をしてないよ! 全く、女のケツをばっか追いかけて回していた変態冒険科で口の悪い平民だったアンタが、よくもまぁ公爵様と結婚出来たもんだ」
「えっ!?」
今、なんて言った?
「アンタなに呆けてるんだい。それにその格好はなんだい? また厄介な事に巻き込まれているんじゃないんだろうね?」
「まぁ、それはそうなんですけど・・・・・・それよりも、さっきの話し! アイーニャ様がぁ〜・・・・・・」
「女のケツばっか追いかけていた事かい? コイツ、女の子を捕まえて来てはここに連れ込んで・・・・・・」
「そこじゃないっ!!」
大体、この人がど変態だ。って事は知っているしっ! でもまぁ、百合だったのは初耳だったけどさぁ〜・・・・・・。
「公爵様と結婚した事の方かい?」
「そうそう、そっちです!」
「ああ、アタシャは詳しい事は知らないけど、アイーニャがこの街で冒険科活動している時に公爵様と結婚して、当時のアタシャ含めて街にいた連中はビックリしていたよ。
しかも、 あの女の事ばかり考えているアイーニャが結婚するなんて信じられない。なにか裏があるんじゃないか? って噂が出たぐらいにね」
「へぇ〜・・・・・・」
お婆さんの話しを聞いている限り、アイーニャ様は昔からロクな人じゃない事が今理解した。
「アタシだって婚期ぐらい考えてたさ! その時にちょうどプロポーズしてくれたのが今の旦那であるネルソンなのさ」
「バルデック 公爵様はアイーニャ様に、どんな風に告白したんですか?」
公爵だったネルソン様と平民だったアイーニャ様とは身分の差があるから、苦難を乗り越えた壮絶な物語があったんだろうなぁ〜。
「裸になって土下座をしながら、 どうか自分と結婚してください!! お願いされたのさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ?」
アイーニャ様の話しを聞いた俺は、口を開けたままポカーンとしてしまった。
聴き間違いかな? それとも難聴になってしまったのかな? 信じられない言葉を聞いた気がする様なぁ〜・・・・・・。
「なにを信じられないって顔をしているんだい? 本当に裸になって土下座をしながら、 どうか自分と結婚してください!! お願いされたのさ!」
オイイイイイイイイイイイイッッッ!!!? 俺が思い描いていた恋愛ラブストーリーをぶち壊されたぞっ!!
先ほどのパンツを見られて恥ずかしいと思っている事を忘れさせるぐらいに、アイーニャ様は衝撃的な発言をする。
しかしその本人は悪気もなく、右手を頬に手を当てて懐かしそうな顔をしながら語り出す。
「いやぁ〜、あの姿を見た時は ああ、これはもう流石に結婚してあげないと可哀想だなぁ〜。 って思ったから結婚したのさ」
同情心からの結婚って、バルデック公爵様が可哀想に思えて来たぞ。
「えぇ〜・・・・・・奥方様と旦那様の馴れ初めが、ヒドいものだったとは」
「口止めされてたからねぇ〜、執事を含めた一部に人間しか知らない事なのさ」
「旦那様と奥方様の馴れ初めがどうだったのか、何度聞いても答えてくれない理由が今分かりました」
「いつか知られてしまうんだから、今の内に言っても大丈夫なのさ!」
・・・・・・いや、バルデック公爵様の威厳を守る事を考えあげて。そのまま黙っておくのが優しさじゃないの?
「それじゃあ、アイーニャ様はバルデック 公爵様の事を好きじゃなかったのですか?」
「ああ、結婚する前まではネルソンの事を好きじゃなかったよ。アタシが言うのもなんだけど、結婚をして早々に離婚するんじゃないか? 自分自身で思うぐらいにね」
女の子好きなんだから、そう思うのも無理はないね。
「でもさ、夫婦になってからネルソンの苦労を色々見て知ってさ。アタシはこの人を支えたい。と思えてきたのさ。
だからアタシはネルソンの夫としてふさわしい女性になる為に、公爵夫人としての振る舞いと知識を覚えたのさ!」
そっか、アイーニャ様は色々と苦労をして・・・・・・。
「・・・・・・まぁさっきの話しは最初の部分以外作り話だから、気にしなくて良いのさ!」
良い表情でサムズアップをしてくるアイーニャ様がそこにいた。
「私の同情心を返せぇぇぇぇぇぇええええええええええええっっっ!!!?」
同情した俺が馬鹿だったっ!! と、そんな事を思っているとお店の奥から タタタタッ!? と床を駆ける音がして来た。
「おねえちゃぁぁぁああああああんっ!!!」
そう言いながら俺の懐に飛び込んでくる我が天使であるリマちゃんを受け止めると頭を撫でてあげる。
「ただいま、リマちゃん」
「お帰り、おねえちゃん」
可愛い顔を上げて お帰りと言ってくるリマちゃん。その笑顔プライスレス。っとそう言えば、お婆さんに言わなきゃいけない事あるのを忘れてた。
「お婆さん」
「なんだい? リマをくれ。って言うのかい? 大事な孫をやらないよ」
「違います! お家が手に入ったので、今日から先の分の宿泊はキャンセルで」
俺がそう言うと、お婆さんは目を皿にして驚いた表情をした。
「へぇ〜、まさか家を手に入れたとはねぇ〜。
まぁ良い。今日の分の宿泊日だけはキャンセル料は払い戻し出来ないけど、良いんだね?」
「はい、構いません」
「そう、じゃあ銅貨二十枚の一週間サービスつきだったね。二日前だったから銅貨十二枚のお返しだよ」
「えっ!? もうちょっとあっても良いんじゃない?」
「リマにあげるお小遣い分さ」
そう言ってしまうと俺はなにも言えなくなってしまう。なんて卑怯なババァなんだ!
「分かった分かった! 銅貨十二枚で良いから!」
「そう、物分かりの良い子はアタシャは好きだよ」
お婆さんのウザいと思える様な笑みを睨みつけながら、銅貨十二枚を受け取ろうとしたのだが・・・・・・。
「ん?」
なぜかリマちゃんが俯きながら俺のスカートを掴んでいたので、俺を含めた全員が怪訝そうな顔でリマちゃんを見つめていた。
「ど、どうしたの? リマちゃん」
なんか俺、マズい事をやっちゃった?
「・・・・・・ヤダ」
「・・・・・・え? なにがヤダなの?」
「出て行っちゃヤダァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!?」
「ええええええええええええっっっ!!?」
大声で泣き叫びながらスカートを引っ張っていた。その様子を見た俺はどうすれば良いのか分からないので、ただオロオロしながら戸惑うばかりだった。
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