第6話
この国、リードガルム王国では一部隊が五十人で構成された三つの騎士団と約千五百人の軍隊によって守られている。
その中で第一騎士団は王都どころか国内では悪い意味で有名な部隊で数週間前に牙鬼組が経営しているお店をなんと売る為に立ち退きを迫って来たけれども、そこに偶然にも居合わせた美少女の俺とムキムキ女装マンのピーチさんが二人がかりで返り討ちにしたのだ。
そして、あと一歩というところで増援を呼ばれてしまい万事休すか? と思ったところにベイガーさんが来てくれて、その場にいた第一騎士団達を取り締まってくれたのだ。
あ、そいえばベイガーさんにその時のお礼を言ってなかったなぁ〜・・・・・・いや、グエルさん達と一緒に俺の作ったすき焼きを美味しそうに食べていたからお礼はチャラでしょ!
「えっとぉ〜・・・・・・第一騎士団の名前が出てくるってことは、私に報告出来るほどに情報がまとまった。って考えてもいいんですよね?」
「そうだ。エルエルを襲ったあの一件の後に、王命で内部調査を行ったのはネルソンから聞いているよな?」
「バルデック公爵様から第一騎士団の調査はしているとまでは聞いていましたが、王命とまでは聞いていません。
ですから、王命で調査しているのは初耳ですよ」
それに人によっては今さらって言われるかもしれないけど、王命で内部を調査するほどの事なのか?
「・・・・・・おいネルソン?」
「私だって王命で調査しているのは知らなかったんですよ! エルライナに話した後に聞いた話しなんですから!」
そうだったの? タイミングが悪かっただけなんだなぁ〜・・・・・・。
「そうでしたわね。ネルソンさんがエルエルに話しに行っている時に、ちょうど第一騎士団に関わりある貴族達がアナタ様に抗議しに来たのですからね」
「そうだったかなぁ?」
王様はそう言いながら首をかしげている。もしかして忘れっぽい人なのか?
「そうですよ。会議の時に私も奥方様と居合わせていたから見ていましたけど、あれは目も当てられないぐらいヒドいものだったじゃないですか」
「・・・・・・あぁ〜、だんだん思い出して来たぞ。少し調べてみたら騎士団の支給した金の着服をしている可能性が出たし、それに新しいヤツが就任してから色々と黒い噂が絶えないからなぁ〜。もうこの際だから内部調査をしてしまおうか? って話しになったんだよなぁ〜」
まぁ、日本のことわざにも 火のないところ煙は立たぬ。 って言うのがあるしね。
「そのあとの会議に出ていた一人が反対し始めたんだ。もう聞いて分かると思うが現責任者の第一騎士団の騎士団長だ」
「第一騎士団の責任者が会議に出てるって・・・・・・おかしくないですか?」
「まぁ事情聴取側として参加させたのさ。だから聞かれた質問に対して説明をする事しか許してないから、会議の内容にまでは口出し出来ないのさ」
日本で例えるところの、悪い事をやっちゃった政治家が報道陣の前で聞かれた質問に対して懇切丁寧に回答する様な感じかな?
「誰も事情聴取の為に呼んだだけだからな、誰も第一騎士団長の聞く耳を持たかったぞ」
ただ聞かれた質問に対して回答させる事だけに呼ばれた人の意見なんて、誰がどう考えたって聞く訳がない。
「その後に問題を起こしたザンバース張本人を呼んで、東地区でやっていた犯罪の数々がすべて事実か追求したんだ」
犯罪の数々って、無銭飲食と商会と組んで土地の横領をしただけじゃないのか?
「第一騎士団が東地区でやっていた犯罪って、具体的に教えてくれますか?」
「ああ、いいぞ。全部容疑が固まったら公表するつもりだったけど、裏はちゃんと取れているから大丈夫か。
でも、あの時の事を思い出すだけでため息が出て来そうだぁ」
などと言っている側から、ウンザリした顔をしながらため息を ハァ〜・・・・・・。 と深く吐いていた。
そのようすを見ていたアイーニャ様が王様の代わりに説明をし出した。
「エルエル知っている土地の違法売買に無銭飲食に一般市民への暴行、さらには窃盗に強盗に軍規違反まで来たのさ」
「せ、窃盗と強盗って。なぜ騎士団が盗賊みたいな事をしているんですか?」
「具体的な事は分からんけどさ、第一騎士団と組んでた商会が、あの土地が欲しいって言ったら、その家に押し入って強制的に出て行かせるような事をしていたのさ。しかも無一文で」
「うわぁ〜、それはヒドい」
「あとは想像出来る通り、家の中の物全て引っくるめて商会に売るのさ。それにその商会の従業員が犯罪を犯したら、あのバカ騎士団が率先して隠蔽していたらしい。
コネクションを断たない為にね」
まさに外道。堕ちるところまで堕ちている。
「まぁ、なんだかんだで事実を認めてくれたから有り難いけどさ・・・・・・あれはさすがにアタシもイラッ! って来たね」
アイーニャ様がムスッとした顔をしながら頬杖を着いしまった。 一体なにがあったんだろう? と思っているとバルデック公爵様が話し始めてくれる。
「問題はその後の話しだったんだよ。ハァ〜・・・・・・」
バルデック公爵様まで呆れた顔でため息を吐くなんて・・・・・・なにがあったのか気になって来たぞ。
「一体なにがあったんですか?」
「ああ、 オッド・ザンバース に学園時代の事件。不正があった決闘の件について追求したんだ」
アグスさんが卑怯者扱いされる様になってしまった原因の事か。その事件がなかったら、あのバケモノをもっと楽に倒せていたかもしれなかったしれない。
でも過ぎてしまった事を気にしても仕方がないから、今はバルデック公爵様の話しをちゃんと聞こう。
「その時だけザンバースが不審な動きをしたんだ」
「不審な動き?」
「ああ、ザンバースは私達が追求する度に騎士団長を見つめていたんだ。しかもその動きに合わせるかの様に、彼もザンバースの視線から逃げる様に目を逸らしていたんだ。
私達は これはなにかあるなぁ〜。 と思ったので騎士団長に追求する事にしたんだ」
まぁ分かりやすいぐらいに不審な動きをしていたら、誰だって気づくよなぁ〜。てか、普通はバレない様にするだろうがっ!!
「王である俺が騎士団長に向かって、その事件と騎士団長はなにか関わっているのか? と聞いてみたら、 なにも関わっていません。あの決闘の不正ねつ造については全てザンバース副団長がやりました。 って言ったんだ。
そしたら、ザンバースのヤツが急にブチ切れて全部告白しやがったんだ」
「そうそう、 ふざけてんじゃねぇぞボケェッ!? テメェがあの時にアグスのヤツに冤罪を被せてやれば、お前が勝利した事なる。とか言ってたじゃねぇかっ!!? なにがねつ造とか任せておけ、成功したらお前のポストはちゃんと用意しているから安心しろ。 だっっっ!!!?
とか言い出して事実を全部自分から話してくれたよ」
悪い事している人達の協力関係が崩れたら、そうなるんだ。恐ろしいね。
「ザンバースが語る度にあの団長の顔色がだんだん青ざめていって、最終的には もう止めろぉぉぉおおおおおおっっっ!!!? って叫びながらザンバースに殴りかかっていたのさ」
殴るって、その騎士団長は騎士のクセして剣を持ってなかったのか?
「そのようすを見ていた国王様が激怒しながら、 この二人を牢にブチ込んでおけっ!! その不正の事については後で洗いざらい問い詰めてやるっっっ!!!? って兵士様達に命令したのですよ。
彼の方も抵抗はしたのですが、肝心の剣を所持していなかったので、あっさりと捕まったみたいですね?」
あっさりと捕まった。って騎士団長を務めてるのにあっさりと捕まってるじゃあ、実力不足って言ってもいいんじゃないの?
「ああ、アリーファの言う通りあっさり捕まったよ。変な気を起こしても対処出来る様に、武器の類の所持を許可しなかったのが幸いだったよ」
バルデック公爵様は呆れた顔をしてながら、そう語る。
一蓮托生と言うのは、まさにこの事だろう。しかし、ザンバースの名前を聞くと気掛かりになってしまう人がいる。
「あの、ザンバースの被害者であるアグスさんの処遇はどうなるんですか?」
アグス・デノール 。迷宮でさまよっている化け物を地上に呼び込む様な事をした上に俺が化け物にトドメを刺そうとしたところを邪魔した張本人であり、さっき話していたザンバースの決闘の相手で濡れ衣を着せれた人だ。
現在は化け物に受けた傷を癒すと言う名目言い渡されているが、実際のところは自宅謹慎を命じられているのだ。
「ああ、ザンバースが自白したからアグス・デノールにかけられた濡れ衣は晴らせそうだよ。しかしぃ〜・・・・・・ねぇ?」
バルデック公爵様はそう言いながら国王様と王妃様を交互に見つめる。顔を見る限りあまり良い様な話が聞けそうにないのが分かる。
「この前あった化け物の騒動で部下の大量死に化け物を地上に誘導してしまった件。それに加えてお前がトドメを刺そうとしたところを、妨害をしてしまった軍人としてのあるまじき行為をしてしまったからな。
その失態についての軍事裁判を近々行う予定だ」
たしかにアグスさんがあの時は悪かったけれども、軍事裁判をやるほどなのか?
・・・・・・いや、アグスさんがあんな事をしなければ被害を小さく出来たはずだ。
「死刑まではないが降格は決定的だと思う」
「そう、ですかぁ・・・・・・」
自身にかけられていた濡れ衣をやっと晴らせる。でも、これは居た堪れない。
「まぁなんにせよだ。我が国の軍の問題だから、お前が気にかける事はない」
「まぁ、そうですよね・・・・・・はい」
自分に言い聞かせる様につぶやいて納得するが、腑に落ちない気がしていまい自然と俯いてしまう。
そんな中、バルデック公爵様が話しかけてくる。
「それともう一つ、キミに頼みたい依頼があるんだ」
「私に依頼ですか? 内容次第ではお断りしますよ」
ラミュールさんの時の様に孤児院の掃除を押し付けられたくない。
「依頼内容次第かぁ・・・・・・なら、彼女達をここに呼んで説明して貰った方が早いな。呼んでも構わないかい?」
彼女達をここに呼んで。 って事はこの家にその人達がいるのか?
「私がお呼びに行きますね」
「ああ、お願いするよ。アリーファ」
バルデック公爵様の返事を聞くと、軽く会釈をしてから部屋を出て行く。
「あの、その人達ってぇ〜・・・・・・もしかして近くにいらっしゃるのですか?」
「ああ、いるぞ。別室で待機して貰ってるからな」
別室って、人の家に赤の他人を入れないで下さいよ。あっ!? でも契約書とかの書類を書いてないから、まだ俺の家になってないのかなぁ?
「それにお前に会いたい。って言っていたからな。会う予定があったから、ちょうど良いと思って連れて来たんだ」
「はぁ・・・・・・でも会いに来たのなら、ここにいても良いと思うのですが?」
「いや、あまり聞かれたくない話しがあったからな」
聞かれたくない話し? 第一騎士団の事かな?
そう思っていると、ドアをコンコン叩く音がしたので振り向いてドアに視線を向ける。
「お連れしましたよ」
「入って来てくれ」
王様がそう言うとドアが開き、アリーファさんが入ってくる。その後ろを着物姿の女性がついて行く様にして入ってくると、アリーファさんの横に並んだ。
「はじめまして、エルライナさん。ウチの名前は オウカ。 オウカ・カザカミ 見ての通りの魔族でございます。よろしくね」
笑顔であいさつをしてくれるけど、なんだか引っかかるものを感じてしまうのであった。
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