第1話

「おはようございます!」


俺は今日も朝早くに総合ギルドに来て、職員の人に挨拶をする。


「おはようございます!エルライナさん!」


「おはよう!今日も来たんだね!」


グルベルト事件から二週間が経ち、俺もこの世界の事をある程度学んだ。後、女神メルティナ様の指導のおかげで髪と体の洗い方と下着の付け方、さらに女の子の作法にマナーを覚えた。まぁ作法についてはあまり気にしていないけどね。


それとゴーゼスの領主の座はラングットの親戚に決まった。


何故ラングットの親戚に決まったか? と言うと。ゴーゼスの領主候補は他にも三人いたのだけれども、その人達には問題があった。

借金を抱えている。金遣いが荒い。人望が乏しい。そもそもこいつらに国の重要な交流地点の一つでもあるゴーゼス任せて大丈夫なのか? と言う悪い噂が目立つために領主候補争いから外された。


本人達はもちろん抗議したがくつがえる事はなく、むしろ悪い噂を耳にした王様はその三人の自宅捜査を兵士に命じて、三人中二人が逮捕され残りの一人が爵位を引き下げられてしまうなど、なんともとも言えない結果になってしまった。


そして・・・・・・今現在俺が問題視しているのはこれ。


「おはよう! エルライナ! おーいみんなっ! 今日も、我らが恩人のエルライナが来たぞぉーっ!!」


「エルライナさん! おはようございますっ!! 今日も美しいですねっ!!」


「エルライナさんっ!! 僕とお茶でもしませんか? 良いお店を知っているんですっ!!」


「お前何を言っているんだ! 俺とデートに行きましょう! ね? ね?」


「キャァァァアアアアアアアッッッ!!? エルライナお姉様が私の目の前にいるわっ!!」


「お姉様! 私とクエストに行きましょう! 私はお姉様が頼りなんですぅ〜〜〜っ!!」


「あ、あの・・・・・・ボ、ボク・・・・エ、エルライナさんのぉ・・・・・・ファ、ファンですぅ・・・・・・」


「エルライナさん! 僕と握手して下さいっ!!」


「エルライナちゃん! 私の取っている宿に来て頂戴! サービスしてあげるわっ!!」


「好きです! 俺と結婚して下さい!!」


「お姉様、私、夜が恋しいのです! 一緒にベッドインしてくれますか?」


「貴方様のその綺麗な足で私を踏みつけて下さいっ!! ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」


「僕を この卑しいブタめっ!! と罵って下さいっ!!」


最後らへんに変なのが混じっているが俺のファンが出来たのだ。どうしてこうなったか? と言うと、グルベルト事件の後に俺は街を救った英雄として総合ギルドと市民から讃えられた上に、現場にいた人がファンクラブを勝手に設立した為、俺のファンが出来た・・・・・・まぁ少数だけどね。


神様にどうしたら良いか相談した所、キミはキミのままでいた方が良いよ。みんなは有りのままのキミが好きなんだから。と言ったので、 いい事言うなぁ〜。 思っていたら続けざまにこうも言ってきた。それに、あんな事すればキミのファンが増えるに決まっているでしょ?


そう五日前に何処かの商人が俺の武器に目を付けてしまい。 その武器を売ってくれ。金はいくらでも払う! と言われたので俺は売れない理由も話して断ったが商人は納得が出来なかったのか、バカで理解力がなかったのか、どちらがあっているのか分からないが額に青筋をたてながら あの女を捕まえて武器を奪え! と商人が三人の護衛に命じたのだが俺は得意の格闘で返り討ちにした。その後すぐに兵士さんが来てくれて、彼らを詰め所まで連れて行ってくれた。

ここまでは普通の話なのだが神様が言うには 三人を格闘で倒した後に、 こんな事をやる奴に売る物は何一つないっ!! って決め台詞を街のみんなが見ている前で言っちゃったからこうなるんだよ。その一言がなければ、ここまではならなかったんだよ! だそうです。それとこれは昨日聞いた話だが、その商人は他でも同様の事をして人の物を奪っていたみたいので窃盗罪の罪で逮捕されました。


ハァ〜・・・・・・一応、この人達に挨拶した方が良いよね?


「み、みなさん・・・・・・おはようございます」


いつの間にか口喧嘩を始めていたファンのみなさんはその動きをピタリと止めてから整列をした後にこっちを見て頭を下げてくる。


「「「「「「「「「「「「「おはようございます! エルライナさん!!」」」」」」」」」」」」」


さっきまでケンカしてたのに・・・・・・仲が良いのか悪いのか、なんだか分からなくなって来た。


「うるせぇなお前らっ!! 毎日毎日ギルド内で騒ぎやかって、追い出されたいのか?」


あ、バーボスさんだ! ちょうど良い所に来てくれた。


「おはようございます。バーボスさん!」


「あぁ、おはよう・・・・・・じゃねぇっ!! エルライナ、頼むからアイツらをなんとかしてくれ。周りの人達から騒がしいだの、迷惑だの、今日もコントをやってる。見に行こう! だの、今日も総合ギルドは平和ですねぇ。だの言われてるんだぞ」


バーボスさん最後のは言われて良いんじゃないかな? それよりも言わなきゃいけない事があるんだ。


「それよりもバーボスさんお話があるんですけどぉ・・・・・・今、大丈夫ですか?」


「こんな朝早くに話があるか・・・・・・まぁ予想つくが言ってみろ」


さっきまで顔をしかめながら頭を掻いていたバーボスさんが姿勢を正して俺を見てる。多分これから話す内容を予想出来ているんだと思う。


「はい! これから王都に向かうのでお別れを言いに来ましたっ!!」


ピシッッッ!!?


ん? なんか変な音がした気がするけど・・・・・・気のせいだよね。


「そうか、もう王都に行くのか。それじゃあ昇格試験は王都でやるんだな?」


この二週間でDランクへの昇格試験を受けられるまでクエストをこなしてクエストポイントを貯めた。総合ギルド職員の人達によると貯まるのがとても早いと言われた。


「はい、そうするつもりです。それとバルデック公爵様に会いに行こうと思っています」


「よし分かった。とりあえず昇格試験の事は王都の総合ギルドに手紙で伝えておく。それと連絡なしにバルデック会長に会いに行くのは失礼だから俺から手紙を出しておく。後、王都に行く前にお礼を言いたい」


「え、お礼ですか? バーボスさんにお礼を言われるような事をしましたっけ?」


キョトンとしている俺に、バーボスは真剣な顔つきをしながら答え始める。


「あぁした。お前のおかげでバルデック総合ギルド会長が助かった事、うちのギルド職員を助けてくれた事、そして俺の友人のミドベルトが望んでいた親戚にこのゴーゼスを継がせられる事だ」


「バーボスさん、最後のは私のおかげじゃないと思いますが?」


「いいや、お前のおかげだ。実際お前がいなかったら、今の領主は田舎の方に飛ばされているか、王都の管理職に就いていたかもしれなかった。あの世でアイツも喜んでいると思う」


バーボスさんは俺に向かって頭を下げる。


「心から感謝する。ありがとう、エルライナ」


「か、きゃおを上げてくだしゃい・・・・・・バーボしゅしゃんっ! あの、その、えっと・・・・・・あぅぅ・・・・・・」


ヤバいよ! 自分の顔が熱くなるのを感じる。


「ハハハッ、まぁいつまでもここで喋ると時間がもったいなから王都に行きな」


「はい、総合ギルトの皆さんお世話になりました!」


「エルライナさんありがとう!」


「エルライナさんも元気でね!」


「照れてる姿も可愛いね」


総合ギルド職員の人達が俺にお礼を言って来たよぉ~~!?


「はぅ、あぅ・・・・・・うにゅぅ~っ!!」


「・・・・・・照れてないで、もう行け」


「そ、そうしゃせていただきましゅぅぅぅ・・・・・・」


俺はそう言いながらクラクラする頭に手を当てながら、総合ギルトを後にした。





  ~~バーボス side~~


「全くアイツは照れ屋だな。何とかならないのか?」


覚束ない足取りで総合ギルトを出て行くエルライナを思い出すと笑いたくなり、頬がつり上がってしまうが俺は威厳の為に堪える。


「ギルド長、それは彼女次第ですよ。それにあのギャップが人気の理由の一つなんですよ」


「ガーリーか、どうした?」


いつのまにかいたガーリーに体向いて要件を聞く。


「この書類に目を通して貰えないでしょうか?」


「あぁ、わかった。後で読んでおく」


俺はガーリーが差し出して来る書類を受け取る。


「それとお前に頼みたい事がある」


「はい、何でしょうか?」


「エルライナが今から王都に行くから、あっちの総合ギルトに昇格試験の事を手紙で伝えておいてくれ。バルデック会長にも会うみたいだから、そっちの方は俺が手紙を書く。俺とお前で分担した方が早いだろう」


「分かりました。それと問題が一つ起きそうです」


はぁ? 起きそう?


「お前は一体何を言ってるんだ?」


「ギルド長、あれを見て下さい」


俺はガーリーが指をさす方向を見ると、なんと放心状態ままで突っ立っているエルライナのファンがいた。


「あぁ〜・・・・・・多分あれだろう。アイツの王都に行くって言う言葉を聞いてショックを受けたんだろうな」


「ギルト長・・・・・・彼らを起こした方が良いでしょうか?」


「ほっとけ、そっちの方が静かになるからな。さぁ、仕事に戻るぞ」


「分かりました」


俺はガーリーにそう言った後に自分の職場に戻ったのだが、十五分後にエルライナ名前を呼びながらファンが騒ぎ出してしまい、総合ギルド職員全員で止めるハメになってしまった。


「あー、クソッ!? ・・・・・・これも全員アイツエルライナのせいだっ!! 今度来たら覚えてろよっ!!」


ガーリーはバーボスの言葉聞き、苦笑いをするのであった。

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