第7話

 昨日とは打って変わって雲ひとつ無い空で、梅雨のど真ん中とはとても思えない。

 

 「あっ」

 「おー。あっきー!なにしてんの?」

 

 次の講義に向かっている途中、偶然にも芽衣に遭遇した。服のチョイスを間違えたのか、長袖を羽織った服装には似合わず、額からは汗が噴き出ているのが気になる。

 

 「何って休み時間でしょ今」

 「はは。じゃあまたね」

 

 芽衣もこれから講義なのだろう。偶然会ったにも拘らず、足を止めることなく僕の横を通り過ぎていく。

 

 「あ……芽衣!」

 「なに?」

 「咲子は?来てない?」

 「今日は必修も無いし会ってないよ。どした?」

 

 芽衣は何も思わなかったのだろうか。芽衣から感じ取れるこの雰囲気からして、少なくとも僕と同じ気持ちであることは期待できない。

 

 「やっぱなんでもない。じゃあね」

 「なーに?ちゃんと言って」

 

 言葉を言い終えるのを待たずに足を運ばせようとしたが、芽衣はそれを許さなかった。いたずらっぽく笑ったその顔は、僕から出てくる言葉に何か期待をしているように見える。

 

 「……芽衣はあれで良かったと思う?」

 「合宿のこと?」

 

 なんだ、分かってるじゃないか。意外にも、芽衣は「待ってました」と言わんばかりで簡単に口を開いた。

 

 「そうそう。咲子マジだったからさ、俺なんか悪いことしたかなーって」

 「それ、みつるが言わないとだよね」

 

 お前だって一切フォローしなかったじゃないか、と言いたくなったが腹の底に沈める。

 

 「でもあたしラインしたよ?そしたらいいんだって。みんなが楽しめるところに行けたらいいだって」

 「……意地っぱり?」

 「素直じゃない……とは思う」

 

 咲子が本心では無いのが、人から聞いた話ですらくっきりと分かる。案外、思っていたよりも咲子は不器用なのかもしれない。

 

 「ねえねえ、あっきーはどう思う?」

 「……聞こうかなって。咲子の宿題」

 「だよね」

 

 講義はもう遅刻だろう。

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ヤッカ @sdyu

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