ヤッカ

@sdyu

第1話

 扉が軋んだ音を鳴らしながら開く。

 夢と現実を並行するように、その扉からする音は僕の体まで入ってきた。扉の先には人影がひとつ、ひっそりと立っているようにも見える。

 

 「そんなだらしないのにひとり暮らしなんてできるわけ無いでしょ……ったく」

 

 ため息交じりの浮かない声が、まどろみから僕を現実に引き戻した。

 

 「……ごめん」

 「テレビも点けっぱなしだし……あんた仮にも受験生なんだからね!」

 

 ただ昼寝していただけなのに、何もそんなに怒らなくても……。母さんはよほど呆れたのか、ひとつ深呼吸みたいに大きくため息をついて部屋を出た。情けなく思う気持ちをいっぱいに吐き出しているように見える。


 窓いっぱいに映っているのは、すっかり深まってしまった夜空だった。

 

 『……依然消息は掴めていません。当日ガイドをしていた……』

 

 リモコンが無い……きっとどこかへ放ったまま、分からなくなったんだ。母さんの言う通り本当に僕はだらしない。

 

 『5人は国際文化を研究する目的のサークルに所属をしており、今回は……』

 「……んっと」

 

 肩が外れるくらいに手を伸ばして、コンセントを抜いた。母さんの言う通りで、テレビなんか消しておけば良かった。

 でも大丈夫だ、僕たちのことではないから。

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